何も無いロレンシア
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61: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:24:17.12 ID:zJUkddjZ0
「ひっ……」

 逃げようにも恐怖で体が固まってしまって動けずにいた住民の一人が、再開する戦いの前兆として膨れ上がる殺気と狂気に引きつった声をあげてしまう。 

 そして、その声にア―ソンが反応してしまった。

「アア……ソウイエバ……腹ガ減ッタ」

 瓦礫の上を、あるいは下を、水中で泳ぐ魚のような軌道で素早く蛇たちが住民に群がる。

「ぁぁらああいぎやああああぁっっ――――あ」

 絶叫は、脈絡も無く終わった。蛇たちに噛まれその体はあっという間に緑色に膨れ上がり、目と口であっただろう場所から涙と涎らしきものを垂らしながら立ち尽くし、蛇たちに貪られる。

 そのこの世のものとは思えない惨状に別の住人が今度は奇声をあげるが、それもすぐに止むことになる。

「五月蠅いぞ」

 フィアンマの一振りで、顔があった場所が無くなってしまったから。

 異様な捕食者と、理不尽の強制に逃げ場を求めた住民たちは、自然とその二人と対峙していると思われるロレンシアへと、すがるように視線を送る。

「……さっさと行け」

 ロレンシアが顎で後ろをさしたことで、弾かれたように住民たちはロレンシアの横から逃げだし始める。その中の一人が、フィアンマとロレンシアの射線上に入った時だった。

「シッ!!」

 住民がロレンシアと重なった瞬間を狙い、フィアンマが瞬刺殺を放った。瞬刺殺の威力は人体を貫いてなお凶悪な威力を誇る。視線を遮られた状態でこれを受け流すのは不可能。これで決着とはいかずとも、さらなる手傷は負わせる腹積もりだった。

「……オオッ!?」

 瞬刺殺を受け流す。それ以上に不可能であったことが起こり、フィアンマが驚きに目を剥く。あろうことかロレンシアは住民を突き飛ばして助けながら、残る片手で剣を手放し皆殺朱の柄をつかみ取って見せた。

 フィアンマの狙いを読んでいたロレンシアは、住民がフィアンマとの射線上に重なる寸前に動き出していた。瞬刺殺をつかむなど、タイミングと狙う場所がわかっていなければ不可能な芸当だが、タイミングは住民と重なる瞬間に決まっていた。残るは狙う場所だが、こんな手を利用できるのは一度限りであるうえ、人体越しに相手を狙えば瞬刺殺といえどもわずかに軌道がずれる可能性がある以上、確実を期すために避けづらく的も大きい胴体だと狙いを絞り、それが的中した。

「フッ!」

 フィアンマの驚きが覚めぬうちにと、ロレンシアは三段式となっている皆殺朱の一段目と二段目の部分を両手で握り、渾身の力で膝に叩きつけてつなぎの部分を破壊しようとしたその時。破壊するまでもなく一段目と二段目が勝手に折れ曲がり、力の行き場を無くしてつんのめる。

(希代の名工、アレッサンドロ……ッ!?)

 何が起きたのか、皆殺朱を作りあげた者の名を想起しながらロレンシアは悟った。アレッサンドロは武器破壊に備えて、皆殺朱が自ら崩れる仕掛けを組み込んでいたのだ。

 前のめりの姿勢を即座に立て直したロレンシアだが、今の隙はあまりに致命的だった。


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