7: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:32:10.94 ID:zJUkddjZ0
※ ※ ※
「――――殺して」
目こぼししてもらえるかもしれない。少し考えればそんな希望、通るはずがないものだった。
内心こんな“奴”にと歯噛みしながら、機嫌を(そんなモノがこの男にあるのか疑わしいが)損ねないように丁寧に姉妹のもとへと案内する。
“奴”が大男のバルザが気合いを入れて動かした岩をあっさりとどかすと、俺が視界の隅で記憶した通り姉妹の姿があった。
さあ、ここからが重要だ。何とかして俺の命だけは勘弁してもらうようにしなければと思っていた矢先の事だ。
猿ぐつわと手枷を外された妹の方が、俺を睨みつけながらぞっとするほど冷たい声で敵意を吐露した。
「全部――全部ソイツのせいよ。怪しいところはあったけど、それは私のよそ者への偏見にすぎないって思っていたのに……オマエが、手引きしたんでしょ」
小さな囁き声だった。その小さな音色に、どれだけの怨念が込められているのか。木々のざわめきに遮られてもなお、一言一句も聞き漏らせない。
そうだ。街に潜入している間は目立たないように注意していたが、どうしてもこの姉妹に目がいってしまった。そしてあわよくばと考え、あの日あの男を――
「姉さんは、幸せだった。ずっと好きだった人と結婚できて――まだ、結婚したばかりだったのに、オマエは義兄さんを殺した。姉さんの、目の前で」
ここでようやっと、妹が目を離してくれた。
だが次の目線の先にいたのは“奴”だった。
「……ありがとう、助けに来てくれて。けどね、姉さんはこんなにされちゃったの」
妹の後ろにいた姉は、猿ぐつわと手枷を外されても、身じろぎもしない。
体を拘束されていたことも、それから解放されたことにも気づけていないのだ。
「義兄さんを目の前で殺されて、泣き叫ぶ姉さんをコイツは引きずった。街から離れたら……離れてから、コイツ等は!! まだ姉さんは泣いていたのに!!」
「ヒィッ……!」
静かだった口調から一転。ついに込めらていた激情が爆発を起こした。
妹は近くにあった石を掴むと、力いっぱい俺へと投げつける。石は俺の顔のすぐ真横をかすめ、女の腕から投じられたとは思えないその威力に身をすくめる。
「コイツを殺して!! 姉さんは殺された!! 最愛の人と、そして心も!! こんな奴らに生きてる資格なんかない!! 早く殺してよ!!」
「――だ、そうだ」
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