9: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:33:34.91 ID:zJUkddjZ0
「そうか。じゃあ最後の確認だ」
それはまるで、今日の天気を確認するかのような軽い口調だった。
「オマエの利き腕は、右だな?」
「――――え?」
え? という言葉が漏れたのと、地面をゴツゴツしたモノが転がったのは、果たしてどちらが先だっただろうか。
それは見慣れたようで、見慣れていないモノだった。
それはそうだ。
だってそれは幾度となく目にしたことあるけど、この距離で見たことは一度も無いんだから。
俺の手の届かないところに、俺の右手が転がっていった。
「ギ――――ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
熱い。熱い熱い熱い熱い熱い熱いアツイアツイアツイあああぁあああああア!!
傷口が燃える。俺の命がこぼれる。これ以上はこぼれないようにと、必死になって左手で腕を絞める。
それでも熱い。気が狂わんばかりの熱さ。吐き気がこみ上げ、ぐにゃりと力が抜ける。右手が無く、左手は血を止めるのに精一杯で、左肩から地面に着く。
「命だけは、だったな。もう行っていいぞ」
そんな俺の様を笑うでもなく、心底興味なさげな声が上からかけられた。
チクショウと喉元まで出かかった言葉をなんとか飲み込む。
行っていいと言われたんだ。一刻も早く去らせてもらおう。
右手があったところに奔る灼熱感にふらつく体を必死になって舵をとり、女のヒステリックな声を背中に転ぶように足を運ぶ。
「あ……」
ここでようやく気づけた。あの男の正体についてだ。
あの強さ。その強さ以上に際立つ異常性。盗賊に身をやつす俺ですら見下してしまう、異様な在り方。
噂に聞いたことがあった。“奴”こそがそれに違いない。
――“何も無い”ロレンシア。
83Res/189.22 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20