515: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/10/21(月) 23:31:33.37 ID:YuTUMZY30
黒森峰学園都市 ライヒ病院
学園の施設の集中する中心部、フリードリヒ地区にある、都市のみならず県内でもトップを争う総合病院である。だがこの病院といえど、どうも出来ない患者もいる
その病室の一番奥、若干隔離されているのかとも思える位置に、その人の病室はある
「それでは、そろそろ出発します」
席を立ち、靴の踵同士を当てて鳴らし、右手をまっすぐ掲げる。誰もが同等の仕草を返すべき敬礼だ
しかしベッドの上の者から返事は無い。ただ点滴の管によって生かされたものとなっており、その目には一切の光が差し込まない
西住まほ、黒森峰と提携する西住流の家元後継者にして、『本当の』黒森峰女学園選抜戦車隊隊長。私なんて……到底かなわない方
「プラウダに奪われた優勝杯、必ず取り戻して参ります」
最後に一礼して、病室の外に出る。外には緊張の面持ちで一列に隊員が並んでいる。ドアは空気圧が抜ける音をさせて閉じた
「逸見隊長代行。西住隊長の容態は……」
そう、私は代行。その呼び名が、懐旧の情にかられていることをひしひしと伝えてくる。先頭にいる者が尋ねてくるが、表情からもう読まれているだろう
「ダメだ、完全に昏睡状態だ。話すこともできない。出場は無理だ。残念だが選手登録は抹消しよう」
奥歯を噛み締める。周りの者の表情は変わらず緊張の面持ちだ
隊長はただ隊長であるだけではない。西住の正嫡、それはあいつに対抗するに余りある名声であった
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