37: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:26:12.45 ID:iX/HvtXE0
「……はい。あとは大丈夫?」
「え、ええ……たぶん、大丈夫だと思います」
私は改めて鏡の前に立ち、平静を装いながら答えた。
「こうやって二人並んでみるとなんだか姉妹みたい。ね?」
紗枝ちゃんがおもむろに私に寄りかかるように立ち、耳元で囁いた。
鏡が一人分の幅しかないために、そうやって二人の姿を重ねようとしていたのだった。
彼女は抱きしめるようにして私の体を縛り、そして肩にその小さな頭をもたれさせた。
密着する彼女の熱と甘い匂いに私は返事もできず、紗枝ちゃんが鏡越しに見つめてくるのをぼうっと見つめ返す他は何もできなかった。
そこに映る私と紗枝ちゃんの姿は確かに、姉妹らしいと言えなくもない一種の法則が……つまり、同じ衣装を着ているがためによりはっきりと区別されるはずの差異が、かえってお互いの関係性を強く印象付けるというような感じがあった。
そうして私は次第にその合わせ鏡のような観念に飲み込まれていった。
――ああ、また、と思った。
鏡の中にいる私の身体が私のものでなくなっていく感覚。
身体がそれぞれの部品に分解され、意味を失い、それから無秩序に集積されていく。
この肉体はもはや私の意志によってではなく、別の何者かの大きな力によって決定されている。
私にはそれをどうすることもできない、というような錯覚――
「緊張してる?」
耳元に紗枝ちゃんの呟きが聞こえた。
「……少しだけ」
私は言葉少なに、けれど精一杯の返事をした。
そうして声を発してみるともう、次の瞬間には鏡に私の姿が復活しているのだった。
私は紗枝ちゃんに寄りかかられて呆けたほうに突っ立っていた。
私の中にはただ、不可解な、奇妙な感覚が残っているだけで、嫌悪感や疲労感といった不安の種も特に認められなかった。
が、それでも私は安堵のために深く息を吐いた。
紗枝ちゃんもまた気分を落ち着かせるように深呼吸し、そしてもったいぶるように私から離れた。
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