水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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27: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:14:38.18 ID:iX/HvtXE0
が、それは私の思い違いだった。
紗枝ちゃんは何やらずっと私に向かって話しかけ、私は無意識に相槌を打っていたらしかった。
そのことに気付いた時にはもう、紗枝ちゃんは話したい事をほとんど話し終えてしまっていた。
28: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:15:19.43 ID:iX/HvtXE0
私たちは夜遅くまでおしゃべりしたあと名残惜しく「おやすみ」を言い合って別れた。
突然、私はひとりになった。
29: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:19:21.40 ID:iX/HvtXE0
四
紗枝ちゃんとはそれからも頻繁に遊びに行くようになった。
30: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:19:56.74 ID:iX/HvtXE0
私たちが夏休みの短い間にこれほど親密になれたのは理由がある。
確かに紗枝ちゃんはプライベートでも何かと世話を焼いてくれたし、私自身も彼女を好いていたけれど、それだけではない。
というのも、例のドラマのお仕事があったので私たちは必然的に顔を合わせる機会が多かったのだ。
31: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:20:34.47 ID:iX/HvtXE0
「ゆかりはんの演技、堂々としてて雰囲気出てはるもんなぁ」
リハを終えて二人で帰る道すがら、紗枝ちゃんが言った。
私はそれとなく満足げに答えた。
32: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:21:19.28 ID:iX/HvtXE0
それにしても、愛、だなんて、私たち高校生には難しすぎるテーマではないだろうか。
台本には『愛』という言葉はたくさん出てくるけれど、それが主人公である私の役にとってどんな意味を持つ言葉なのか、いまいち理解していないのが正直なところだった。
私もまだまだ勉強不足なのだろう。
33: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:22:14.85 ID:iX/HvtXE0
ドラマの話題はそこで打ち切られた。
コンビニの前を通りがけに紗枝ちゃんがちょうど用事を思い出したと言って、それで私も一緒に寄っていくことにした。
どうやらお金を引き落とすらしかった。
ATMはすでに年配の方が一人、先に使っていたので紗枝ちゃんはその後ろでしばらく待つことになった。
34: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:23:20.96 ID:iX/HvtXE0
五
早朝、私と紗枝ちゃんはスタッフの方が運転するバスに乗ってロケ地へ赴いた。
35: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:24:26.50 ID:iX/HvtXE0
監督と一緒に管理人さんに挨拶に伺ったあと、さっそく機材が運ばれ、準備が始まった。
私たちキャストはまず演出家さんと話し合い、全体の進行から細かい位置取りなどを確認して、それから各々の準備に取り掛かった。
準備と言っても、衣装に着替えてメイクを終えてしまえば、あとは待機するだけだった。
36: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 09:25:05.88 ID:iX/HvtXE0
「ゆかりちゃんも、すごく似合ってる。清楚で、キリッとしてて……本当に、素敵ね」
標準語で……というよりも、演じる役の言葉遣いで話す紗枝ちゃんの声に、私の心は不意にかき乱され、そしてあからさまに動揺してしまう。
別に今日が初めてというわけでもないのに。
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