62: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:17:18.76 ID:iX/HvtXE0
「……はい。昨日、本番の撮影でした」
帰りがけ、先生と雑談した際に、例のドラマの話題になった。
そこで私は昨日のロケについてお話した。
素敵な洋館で撮影したこと、避暑地でも暑くて大変だったこと、色々と粗相をして監督方を困らせてしまったこと……
そうやって昨日の出来事を思い返しながら喋っていると、ふいに、自分が今はそれほど落ち込んでいないことに気が付いた。
先生は、それならそうと言ってくれれば少しくらいの遅刻は大目に見てあげたのに、と仰って(とはいえ、実際に私が遅刻の言い訳をしたとしても、先生がすぐに許してくださるとは思えなかった)、私の疲労を気遣ってくださった。
しかし私は、そんな風に労いの言葉をかけてくださった先生に対しても、ただ一言「次は気をつけます」とだけ答えて、素っ気ない挨拶と共にスタジオをあとにした。
私は、そんな私自身の失礼な態度を省みることもせず、一刻も早く家に帰りたい、そんなことばかり頭の中に思い浮かべていた。
それからの帰り道のことはよく覚えていない。
寮に着いて、私は自分の部屋へ帰るよりも先に、彼女の元を訪れていた。
息を弾ませ、扉をノックしながら私は、外を歩いているあいだ自分がすっかり汗だくになっていることに気が付いた。
もう一度シャワーを浴びなければ、そう考えていたら、ふと今朝のことを思い出して、身体が疼いた。
やがて静かに扉が開き、紗枝ちゃんが私を迎えた。
私は汗の粒を首元に垂らし、薄いブラウスの下に肌着を透かせて彼女の目の前に突っ立っていた。
紗枝ちゃんが薄く微笑みかけるように言った。
「おかえりやす」
「……ただいま」
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