63: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:18:11.18 ID:iX/HvtXE0
八
これらの夏の一切が私たちをすっかり新しい生き物へと変えてしまった。
64: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:19:07.18 ID:iX/HvtXE0
この頃、確かに私たちはお互いに夢中になっていた。
しかしそれは必ずしも自堕落で無制限な生活に落ち込んでいたことを意味しているのではない。
むしろ私たちは、この愛を成熟させるためにますます賢明であろうとした。
65: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:19:49.17 ID:iX/HvtXE0
ただひとつ、不安があったとすれば、私たちの秘密を誰かに悟られはしまいかということだった。
私たちは表向きにはいつもと変わらず、気の合う友人同士を演じていた。
あるいは勘の鋭い人ならもしかしたら、私たちの間に時折交わされるさりげない目配せや意識的な距離感から何らかの気配を感じ取ったかもしれない。
66: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:20:29.17 ID:iX/HvtXE0
そして実際、そのアンモラルな冒険はひどく私を興奮させた。
彼女はまるで手品か魔法のように私たちの秘密を神秘のベールに包み、どんなに危険な賭けに出ても肝心の証拠が人々の目に留まることはなかった。
67: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:21:02.73 ID:iX/HvtXE0
特に顕著だったのは、彼女が不機嫌になった時である。
仕事か、お稽古事か、あるいは勉強か、いずれにせよ何か嫌なことがあると彼女は静かに怒りを溜め込み、さりげなく私にその不満をぶつけることがあった。
それは愚痴で済む場合もあれば、時には暴力めいた行為となって襲い掛かる場合もあった。
68: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:21:56.53 ID:iX/HvtXE0
「うちが死んだら、ゆかりはんも一緒に死んでくれる?」
ある夜、ベッドの中で突然、紗枝ちゃんが言い出した。
蒸し暑い夜で、私たちは少しばかり汗をかいた後だった。
69: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:22:32.83 ID:iX/HvtXE0
が、どちらにせよ泣いている彼女に対して私がしてあげられることと言ったら、物言わぬ人形のようにじっとし、彼女の欲しがるままにこの肉体を差し出すくらいなものだった。
けれど私にはそれだけで十分だったのだ。
70: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:23:06.59 ID:iX/HvtXE0
九
学校からの帰り、紗枝ちゃんと駅で落ち合う約束をしていた。
71: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:23:34.65 ID:iX/HvtXE0
外に出ると、街は今にも雨が降り出しそうな気配だった。
私はふと往来の中に手をかざして空を見上げた。
そして何気なく、
72: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:25:31.71 ID:iX/HvtXE0
「ゆかりはん、肩が……ちょっと、こっち向いて」
エントランスで立ち止まり、紗枝ちゃんが鞄からハンドタオルを取り出して拭いてくれた。
73: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 11:26:25.25 ID:iX/HvtXE0
「……やっぱり、その……少し、恥ずかしいですね」
「ふふ、いまさら照れんでもええのに」
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