貴方「僕がヒロインを攻略するまどか☆マギカ…オカルト?」マミ「それは終わったわ」

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426 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 21:19:12.97 ID:aani6tff0


 ……暁美さんはワルプルギスの夜に殺された鹿目さんたちを守る為に契約して、過去に戻ってきた。

 鹿目さんに執着していたのも、キュゥべえが契約した覚えがないのもそのせいだ。


 俺らから見れば暁美さんは変わってしまったが、思い出した過去に納得しているようだった。

 聞いた話にたしかに矛盾はない。



貴方(…………じゃあ、気のせいか)



 暁美さんは魔法少女ではなくなってしまったが、俺たちは全ての魔女を倒すことを目標に戦い続ける。

 そして……――――――――不思議なことに、それは遠くない未来に達成できた。

 少し前から調べていた魔女の自然発生……それも勘違いでしかなかったんだろうか?

 それに、記憶が戻ったことのインパクトですっかり忘れていたが、暁美さんがそれに関わってるんじゃないかという疑いも。



 この世界からは魔女がいなくなり、魔法少女も魔法少年もいなくなった。

 真の平和が訪れたのだ!


 ただ……キュゥべえの姿もあのお茶会の日以来見ることがなかった。それだけが気がかりだった。

 一体何処に行ってしまったんだろうか? 短い間だったが一緒に過ごした友が消えたことには寂しさを感じていた。



 これからも俺たちの未来は――――



 ――――世界は突如、全てが真っ黒に潰されて終わった。

 意識が終わるその寸前、目の前には暁美さんの部屋と、そこでこちらに微笑む彼女の姿が見えた気がした。



END.? 強制終了
427 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 21:47:17.98 ID:aani6tff0
――――
――――


「……さすがにこの結末はあんまりだ?」

「この話に飽きた人もいるんじゃないの? ……私は飽きたわ。だってもうクリアしたゲームなのよ」

「蛇足でしかないのに、これ以上何を望むの?」



1ハッピーエンド
2謎の解明
3???の救済


「別に答えなくていいわよ」


「ハッピーエンド? 幸せなままで終わったのだからこれはハッピーエンドじゃない」

「謎の解明? 真実を知ったせいで絶望して魔女になった魔法少女を知ってるわよね。真実なんて知らないほうがいいものよ。
 この世界ではソウルジェムはただの魔力の源だって? ……ええ、そうだったわね」

「3は意味が分からないわ。もう名前を隠す必要もないほど察しはついていると思うけれど……」



「……『攻略』がしたいのね。ギャルゲーだから」



>>423を2でやり直します。???が攻略できるようになりました。


――――
――――
428 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 21:57:10.65 ID:aani6tff0


 ……暁美さんはワルプルギスの夜に殺された鹿目さんたちを守る為に契約して、過去に戻ってきた。

 鹿目さんに執着していたのも、キュゥべえが契約した覚えがないのもそのせいだ。


 俺らから見れば暁美さんは変わってしまったが、思い出した過去に納得しているようだった。

 聞いた話にたしかに矛盾はない。


貴方(でも、巴さんが疑い始めたのはあの話を聞いてからだ。それって……)



※矛盾に関係するセリフを選んでね

1マミ「そんなことが……。暁美さんは魔法少女を続けたいと思ってるのかしら?」
2マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
3マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」

 下1レス
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 22:11:30.52 ID:hvMAMh+A0
1
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/06(土) 22:12:52.77 ID:SSxLXnjO0
さっぱりわからん
431 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 22:17:06.57 ID:aani6tff0


貴方(暁美さんが魔法少女を続けたいと思ってるかどうか……前までは魔法少女であることだけがアイデンティティだったけれど今は違うはず……)

貴方(正直、記憶を取り戻した後の暁美さんがどう思ってるかよくわからないんだよな……)



※これじゃないようです…

1マミ「暁美さんの話は急だったけど…………暁美さんがどう思ってるにせよ、なくなったのが本当なら当分はお休みになるわね」
2マミ「魔女との戦いはいつでも命懸けだけど、彼女の強さを考えたら半信半疑にもなるわよ」

 下1レス
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/06(土) 22:19:11.40 ID:oYBcWX71o
1
433 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 22:47:20.34 ID:aani6tff0


貴方(ソウルジェムがなくても魔法が使えないか、試してみたけど無理だったな)

貴方(このままじゃやっぱりお休みになるだろうな……)



※これじゃないようです…



貴方(って、それじゃなくて…………『暁美さんの強さ』)

貴方(たしかに暁美さんの魔法――時間停止は強いけれど、暁美さんの強さはそれだけじゃなくて銃の腕や身のこなしもベテランじみてた)

貴方(暁美さんの話だと戦い慣れしてるわけもない病弱な少女だったはずだし、みんなと会ったのは契約してすぐってことになる)

貴方(魔法少女としてベテランの巴さんだから、真っ先にそこが気にかかったんだろう)


 暁美さんが嘘をついてるようには見えなかったけど……。

 もしあるとすれば、まだ思い出していない過去がある――――とか?


貴方(……そもそも、なんで暁美さんは“眼鏡”で思い出したんだ?)

貴方(眼鏡なんて、視力が悪い人にとっちゃ身体の一部みたいなものだろ。とくにそこにきっかけになるような何かがあるとも思えないのに)

貴方(見つけたのも部屋を整理しはじめてからってのも気になるし、まるであえてそこに記憶を封じ込めてたみたいな……)


 そういえば、記憶が戻ったことのインパクトですっかり忘れていたが、

 暁美さんが魔女の自然発生に関わってるんじゃないかって疑われてた件もあったっけ。あれはどうなったんだろう? さやかの勘違い?


貴方(あれは……)


 考え事をしながら歩いていると、街中に暁美さんの姿を見つけた。

 朝からしてた三つ編みはほどいていて、見慣れた姿の暁美さんだ。

434 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 23:12:17.52 ID:aani6tff0


貴方「暁美さん? 帰ったんじゃ……?」


 声をかけてみるとこちらを向く。やはり眼鏡もなかった。

 これは直感だが、彼女は今まで見てきた暁美さんではないと思った。

 もしかして、さやかが見たのは――――。


ほむら「……【貴方】くん。人をその人たらしめる要素って、何だと思う? 記憶? 性格? あるいは――――行動、かしら」

ほむら「それはきっと、本人と他者で違うと思うの」

ほむら「人の性格は必ずしも生まれ持ったものだけで決まらない。『記憶』。積み上げてきた経験、年月によって変わっていくものだわ」

ほむら「他者から見たその人らしさはその積み上げによって出来た性格による『結果だけ』……つまり、『行動』」

ほむら「たとえば、『この人ならこういう振る舞いをするだろう』――――といったものだと思うのよ」

ほむら「けど、本人にとって、経験を失い結果のみが残ったとしたら、それを自分らしいと思えるのかしら?」


ほむら「私。『暁美ほむら』の『らしさ』は、まどかを救うという意思にあるのでしょう」

ほむら「でも、私はそれを受け入れなかった」


ほむら「――――偽物とはいえ、気に入らなかったわ」


 偽物――。

 目の前の暁美さんが偽物と言い切ったのは、今まで見てきた暁美さんのことだ。

 俺の知ってる暁美さんは、記憶を取り戻す前も後もこんなに薄気味悪く笑わない。

 どういうことだかはわからないが、俺からすれば目の前にいる彼女のほうが――――


ほむら「……怒ったの? 偽物という言葉が悪かったかしら。分身と言い換えてもいいわ」

貴方「……もしかして、君が魔女を発生させてるのか?」


 だとすれば、目の前のこいつがすべての黒幕だ。

 暁美さんの分身、というのが本当なら心が揺らがないでもないが、こいつを倒せば真の平和が訪れるんじゃ……――!


ほむら「神様……じゃなかったわ。悪魔を相手に戦いを挑むなんて無謀なことはよしなさい」

貴方「……は!?」

ほむら「貴方、余計なことを考えたでしょう? そのまま気づかないままでいればよかったのに」

ほむら「私からすればこのまま終わらせてもよかったのだけど……少し興味が沸いたから話してあげる」

435 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/06(土) 23:45:51.19 ID:aani6tff0


ほむら「私が魔女を発生させているというのは、まあ正解といっていいわ」

ほむら「本来『無い』ものをわざわざ作り出しているのだから、そうなるわよね」

ほむら「魔女がいなければ魔法少女の日常は成り立たないから。ただそれだけ。パトロールが外ればかりじゃつまらないでしょう?」

貴方「何を言ってるんだ……? 魔女なんかいなければ命懸けで戦う必要もなくなるんだ! ずっとそれを目標にしてきた!」

貴方「それとも、まさか俺たちにただ魔法少年少女ごっこをさせたかったって理由だけで魔女を作ったのか!?」

ほむら「ええ、そのまさかよ」


 目の前の暁美さんは当たり前のようにあっさりと言ってのけた。

 その拍子抜けするような態度を見ると、もはや怒りをぶつける気すら沸かなくなる。

 ただ何か、とてつもなく危険で大きな力を目の前にしているということを感じた。


ほむら「でもあなたたちは重要なことを知らない。本来の魔女は、魔法少女のソウルジェムから生まれるものなのよ」

貴方「……本来のって何だよ? じゃあ俺たちが戦ってたのはなんだって言うんだ?」

ほむら「さっきの言葉と合せると、偽物の魔女ね。この世界には本来『魔女はいるはずがない』のだから」


 暁美さんはそう言うと、後ろに隠していた手を胸の前に持ってきた。

 手に何かを掴んでいる。それは―――。


貴方「キュゥべえ!?」


 乱暴に耳を持たれて掴まれているのにも関わらず、キュゥべえは未だに寝息を立てている。


ほむら「インキュベーター。本来は私達を騙し、人の感情と魂を弄ぶ敵」

ほむら「でもこの世界では“あえて”造り替えたわ。この世界のキュゥべえの本当の役割を知っている?」

貴方「俺たちの心身のサポート……とか言ってたけど」

ほむら「本当の答えは、『ゲームのサポート』よ。ゲームが終わって役割がなくなったからいらなくなったの」


 ゲームが何かはわからないが、まさか――それがキュゥべえが寝てばかりになってしまった理由に関係あるのか?

 そんなことを考えていると、暁美さんはどこからか拳銃を出して……キュゥべえの頭に突きつけた。

436 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 00:14:42.48 ID:GsSMg3i50


貴方「ちょ、ちょっと! 何してるんだよ!」

QB「きゅ……? ん……?」


 銃口を押し付けられて、キュゥべえはやっと目を覚ます。

 そして、自分の置かれている状況を理解した。


QB「ほ、ほむら……? これは…………――!?」

ほむら「最後の憂さ晴らしに、私がお前を殺す」

QB「なんで……? た、助けて……………っ!」

貴方「や、やめろって!!」


 咄嗟に変身して目の前の暁美さんに飛びかかったが、まるで霞のようにすり抜けてしまう。

 さっき神だとか悪魔だとか言ってたが、本当に『この世界』の存在ではないということを物語っているようだった。


ほむら「インキュベーターは本来、感情を持たない異星人だった。こんなふうに怯えることもない生き物だったのよ」

ほむら「本来のソウルジェムはこいつに造り替えられた魂そのもの。そして、濁り切れば魔女を生み出す卵」

ほむら「壊れたり身体から離れすぎることがあれば魔法少女は生きていられない。……そんなことも教えてくれずに私たちは利用された」

ほむら「そして、殺しても殺しても代わりが沸いてくる倒せない敵……それが本来のキュゥべえよ」

ほむら「杏子とかは、自分の知る記憶との態度の違いに違和感を持ったかも」

ほむら「この世界のキュゥべえには感情を与えた。苦しんでもらうためにね」

QB「…………! …………!」


 キュゥべえは声にならない声を上げていた。

 だが、逃げられないことを悟ると、最期の瞬間――――俺に向けて言葉を遺して、逝った。


QB「……【貴方】……仲良くしてくれて、サンキュー……ベリー…マッチ――――――」


 銃声が響く。周りに人はいるはずなのに、誰もこちらに関心を向ける人はいなかった。


貴方「な、なんでその言葉をよりによって、今……全然似合わねぇよ……! こんなことなら適当に言葉教えるんじゃなかった!」

貴方「……暁美さん、こいつは人とズレてるし鈍感だけど悪い奴じゃないし俺はそこそこしゃべってたんだ。君の分身……もな」

貴方「俺からしたら本物だし一人だけだろ! 大体、本来とか偽物だとか、さっきからなんなんだよ!」

ほむら「【貴方】くんが今挙げた特徴は本来の名残ね。『外』を見てみなさい」
437 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 00:29:44.00 ID:GsSMg3i50


貴方「外…………? ここはもう外だろ?」

ほむら「意識すればもう見えるはずよ」


 ここは帰路の途中……もちろん屋外だ。

 でも、そういうことではなく。


 『外』に意識を向けると、そこは――――見覚えのある部屋。

 時計のように並んだ椅子の特徴的なこの部屋は……暁美さんの部屋だった。


 そして、そこには暁美さんがいた。『外』の暁美さんがこちらに向けて語りかける。


ほむら「……こっちが見えたわね」


 暁美さんの部屋の壁から見ているような視点だ。そして、『こちら』はまるで壁の一部のような――。

 本来だとか偽物だとか言ってたけど、これじゃあ……今まで現実だと思っていた世界は?


貴方「それが……外の世界?」

ほむら「これも本当の空間じゃない。ここは『どこでもない空間』なのよ」

ほむら「もうすぐ宇宙は造り替えられる。今度は私が造り替える。ここはそれまでのほんの一瞬」

ほむら「私が……造り替える前の世界を懐かしむための場所」


 外の世界の暁美さんは……そう言いながら、切なそうに笑っていた。

438 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 22:11:42.13 ID:GsSMg3i50


ほむら「『ソレ』は私と貴方のための世界」

ほむら「ワルプルギスの夜なんて無縁で、ソウルジェムはただの魔力の源。季節が流れ、年を越し、進級する――そんな平和な世界」

ほむら「ついでにみんな仲良く――――というのは、今回は『私』のせいで壊れてしまってたけれど」

貴方「……なんで俺のため?」

ほむら「決まってるじゃない。貴方がこのゲームの主人公だからよ」


 ゲーム……そういえばさっきも言っていた。

 何がゲーム? 特別なことをしてた覚えはなかった。


ほむら「私はまどかを救うために契約した。でも何回過去に戻っても救えなかった。最初は他のみんなも救いたかったけど、諦めた」

ほむら「真実を知っては絶望する。ワルプルギスの夜には勝てない。まどかは繰り返すたびに素質を増して、契約して……魔女になる」

ほむら「これが本当の私の『経験』。まどか以外に自分にすら興味を持つこともできない、こんな性格にもなるわよね」

貴方「…………」

ほむら「……いえ、そこからまたさらに変わってしまったわね」

ほむら「貴方のいる世界は、本来の世界から邪魔な『絶望』だけを取り除いて再現させた世界。いわば魔法で作られたシミュレーションのようなものよ」

ほむら「前提設定が違っても、目標は同じ。みんなと向き合って、各自の抱える問題が解決できれば攻略完了……つまりゲームクリア」


ほむら「さやかには正義の魔法少女としての在り方の自信と、失恋を乗り越える力を与えた」

ほむら「マミには孤独と奥底に抱える戦いへの恐怖の克服を」

ほむら「まどかには自分への自信を与え、自己犠牲が最善とは限らないことを教えた」

ほむら「杏子には未来への希望を与えた」


 ……暁美さんはみんなの名前を挙げたが、自分の名は口にしなかった。
439 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 22:13:41.63 ID:GsSMg3i50


ほむら「世界を繰り返した末、貴方は見事にクリアした。でもこれは現実じゃないからもうお別れしないといけないの」

ほむら「いくらまどかから奪った力でも現実は仮想の世界ほど都合よく造り替えられない」

ほむら「特に私自身はね。自分の記憶までいじるとろくなことにならないのは決まってるし、思い知ったばかりだもの」

貴方「じゃあ……俺はなんだったんだ? なんで俺が主人公なんだよ」

ほむら「貴方、自分の過去をどこまで思い出せる?」

貴方「自分の過去?」


 今から遡っていって、契約した時のこと……今学期のはじめ……みんなとの出会い……家族との思い出。

 今まで気づかなかったのが不思議なくらい、近くの記憶ですらぼんやりとしていた。幼少期なんて完全に思い出せないことに気づく。


ほむら「その世界には『矛盾』を気づかせないために多くのことに制限がかかっている。貴方が自分を考えることも、その一つよ」

ほむら「与えられた設定と、普通の人間であること……それ以外に貴方の個性はないわ」

ほむら「貴方は本来『誰でもない』、けれど私たちの近くにいた『誰か』である存在。つまり、本来私たちとは深く関わることはない人だったのよ」

貴方「……」


 ずっと自分を普通の人だと思ってた。語ることがないくらいには平凡な家庭、過去……。

 でも違う。なにも無いから語れないだけだったんだ。


ほむら「もう言葉も出ない?」

ほむら「貴方にもお仲間にもこれ以上出来ることはないわ。その世界でいくら足掻いたところでゲームは現実に干渉できないもの」

ほむら「じゃあ……名残惜しいけれど、さようなら。世界」

440 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:01:46.04 ID:GsSMg3i50


 この世界のことを理解したからだろうか……。

 リセットでなくなったはずのみんなとの思い出……、この世界であったことを全部思い出した。


 暁美さんと作るはずの未来――さやかと考えた未来――巴さんと支え合う未来――

 ――仁美と約束した未来――鹿目さんと進級する未来――佐倉さんと誓い合った未来――


 それらは全部叶わないのか。やっと希望を持てたって人もいるのに。


 暁美さんとは険悪になったこともあった。でも、最後は仲良くなれた。

 最初に会った暁美さん。まだ気の弱い少女だった頃の彼女とだって仲良くなれた。

 そしてそれは…………



 紛れもなく目の前の暁美さんの『一部』でもあるはずだった。



貴方「暁美さん。暁美さんにも俺が与えられたものはあるはずだよ」

貴方「最初の『攻略』では何に頼らなくとも堂々と振舞える自信を……」

貴方「最後の攻略の時は、色んなものを失いすぎてて何をというのも難しいけど……心の支えにはなれたと思う」

ほむら「……ゲームの話だわ。本当の私じゃない」

貴方「でも、分身なんでしょ。そっちからしたら所詮現実じゃないのかもしれないけど……」


 俺の知る世界にいた暁美さんは分身なのだから。記憶と経験の差があれど、内面は同じはずだ。


貴方「暁美さんはみんなの救われるところが見たかったんだよな。その中には暁美さん自身も本当は含まれてたんじゃない?」

貴方「じゃなかったら、俺みたいなどこの誰かもわからないヤツじゃなくて自分の分身を主人公にすればよかったんだ」

ほむら「何を今更……私には無理よ。私には誰かを救うことなんてできない。できなかったからこうなったの!」

貴方「それは、この世界にはなかった『絶望』に邪魔されたからじゃなかった? 俺だってそんな事情があったらこうはいかないよ」

ほむら「それがなくたって……。私を見てきたならわかるでしょう」

貴方「なら、暁美さんはずっと誰かに助けてもらうことを望んでたんだよ。……本当に辛い時、助けてあげられなくてごめんな」

ほむら「何故謝るの……?」

貴方「だって、俺は『誰でもないけど近くにいた誰か』……なんだろ?」

貴方「きっと現実でも今までも近くにはいたし、これからも近くにいるはずなんだ。今度こそ、きっと、現実でも助けるから」

ほむら「…………」

441 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:17:03.13 ID:GsSMg3i50


貴方「……この世界を終わらせる前に、こっちの暁美さんに会う時間だけくれないか」

貴方「他の記憶も思い出したけど、やっぱ今の俺にとっては暁美さんが一番なんだ」

ほむら「な、なんなのよ……。世界が終わるということは死ぬのと同じなのよ? 貴方も、貴方の友達も、す……好きな人も全部ッ!」

ほむら「どうしてそんなに落ち着いていられるの? 私を倒すんでしょう? ……自分と友達を殺す私が憎いでしょう?」

貴方「足掻いたって無理なんだろ。神様か悪魔か知らないけど……俺が今まで倒してきたのは『この世界の魔女』で、別次元の存在の倒し方なんて知らないし」

貴方「そっちには手を伸ばすことも叶わない」

ほむら「……」


 手を伸ばすが、ただ往来の中にいる自分の前に自分の手があるだけだ。『画面の向こう』へは届きそうにもなかった。


貴方「じゃあ、またそっちの世界で会ったらよろしくな」




 伸ばした手を戻して、帰路の途中で進む道を変える。

 『外』にはもう意識を向けなかった。俺の世界はここだ。たとえ世界が終わるとしても、最後の瞬間までここでいい。




ほむら「…………私だって、会いたかったわよ。もっと昔に……こうなる前に……」

ほむら「いいえ……どうせ、あれは…………」

ほむら「本当はもっと、深く関わらなかったクラスメイトもいっぱいいたのよね……。でも私には関わる勇気も余裕もなかった」

ほむら「話していたら何かが変わったのかしら……?」

442 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:31:08.29 ID:GsSMg3i50

貴方「暁美さん」


 ただ、これだけ。……こっちの暁美さんには手を伸ばすことができるから。

 白すぎる手に、そっと手を触れた。


ほむら「……え、ええと?」


 暁美さんは記憶を取り戻してからいきなり変わってしまったようにしか見えなかったけど、今ならわかる。

 これも暁美さんだって。今まで何もなかったところに、契約するまでの『経験』が戻ったんだ。

 今はこっちのが素なんだろう。経験を伴わずに現在の暁美さんを模していた頃も、中身はむしろこっちに近かったはずだ。

 ……見かけにはそう見えなくなってたけど。


ほむら「ふ、ふふ……?」

貴方「無理に笑ってごまかさなくても……」

ほむら「ご、ごめんなさい。こういう時、どうしたらいいかわからなくて」

貴方「別に何かしてほしいわけじゃないよ?」

ほむら「そうですね……。テンパりすぎてますね私……。恋人、とか言うから」

ほむら「……まだ今は私、みんなとの関係に悩んでるんです。自分のことは話したけど受け入れてもらえるかなとか、キツい態度取っちゃったしな……とか」

ほむら「どっちの私でいこうかしら、とか」

貴方「持ちネタになってる? その眼鏡外したりつけたりするやつ……」

ほむら「も、持ちネタ、です!」


 一言分だけ眼鏡を取ったかと思うと、再び戻して喋った。

 ……見てるぶんには面白いけど、本人は割と真剣に悩んでそうだ。


貴方「『恋人同士になるのなら、もう少しくらいは優先しなさい』――って、言ってたのに」

ほむら「ま、マネですか……? こっちの時に言われると結構恥ずかしくて……一度切り替えちゃえば平気なんですけどね……」

ほむら「あの時は……やっとできた友達を取られたくないって気持ちも大きかったんです」

ほむら「私なんて誰とも友達になれないし、誰も構ってくれないと思ってたから……」

ほむら「……その上、【貴方】くんが友達になってくれたらもうそれだけでいいやって。でも今は、やっぱり他の人とも友達になりたい」

ほむら「本当はもう一回くらい出会いをやりなおしたいけど、それも寂しいなあ……」

貴方「俺もなかったことにはされたくないな。でも、きっとまた別の世界で出会っても、友達になれるよ」

貴方「絶対、なりに行くから」


 自分で言っててなんだけど、これじゃまるで友達止まりみたいじゃないか!?

 なんてツッコミは暁美さんには伝わるはずもなく。


ほむら「えっと、も、戻りませんよ!? 過去には……。もう魔法も使えないし。というか私の魔法は時間を止めるだけだし……また記憶失いたくはないです」

貴方「そ、そうだな。はは……」

443 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:35:03.63 ID:GsSMg3i50

ほむら「実際のところ、私は恋とかまだわかってないのかもしれません」

ほむら「恋とは何かと聞かれたら、難しすぎるので……」

貴方「そんな哲学的なことは答えられない人多いんじゃないかな……?」

ほむら「でも【貴方】くんのことは好きですよ。最初に友達になった鹿目さんと同じくらい」

貴方「…………同じくらい!?」

ほむら「そういう感じじゃ駄目ですかね……」

貴方「は、はは…………まあ、いいと思う」


 若干振られたみたいな感じになってるのは気にくわないが……。

 思えば俺も最初は美人だとかミステリアスだとか、そんな表面的なところしか見てなかったのかもしれない。

 ……もちろん今はそんなことはない。

 彼女のことについては、多分今目の前にいる彼女自身以上に色々知ってしまったけれど……それとは別にして、今の暁美さんは好きだ。


貴方「……そろそろ、かな」

ほむら「そろそろ? あ、あまり遅くなったら心配されちゃいますね。……あっ、またお水用意し忘れてました」

貴方「いや、いいよ。そんな気を遣わなくて。……じゃあ」

ほむら「はい。また」



――――
――――

444 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/07(日) 23:39:01.36 ID:GsSMg3i50



 朝、一日がはじまる。


 どこにでもあるような至って平常な朝だ。退屈なほど平凡で。

 ワルプルギスの夜だとか、そんなうっすら噂で聞いたことがあるようなないような災害の予兆も当然無縁で。



 見滝原中に通う貴方は何の力も持たない生徒。でも――――今日から新しい友達ができた。





END


▼???→悪魔を『攻略』できた
445 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/08(月) 00:25:15.83 ID:WEIlczcE0
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あと500レス近く残ってるけど次回からなにをやろうか

1スレ目も残り30レス分残ってるのでおまけをやるのは決まってるんですが、
やる内容と何を優先するかを決めます


1容赦なく攻撃が飛び交う全員嫉妬Lv3モード開始
2個別END後のちょっとした後日談とか見たい(キャラ指定)
3新しいのやりたい/別の話の続編やりたい


 ここから5レス分くらい流れ見て決めます
446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 01:34:33.77 ID:F9sPmba4o
3
447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 01:45:30.10 ID:5JAkUteE0
1
448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 01:50:41.43 ID:Zl5PWhKR0

しかしできれば主人公の設定詰めたい
安直に魔法使いにはしたくなくない?
449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 07:11:59.44 ID:PX9qU19c0
3
450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 09:11:30.14 ID:yM+g/jNTO
1のち3
451 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/08(月) 12:04:07.22 ID:WEIlczcE0
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よし、まずはおまけ優先でいきます
次回はできれば今夜に。

あと>>442の前に1レス抜けてるの発見したんでこれだけ貼っときます
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452 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/08(月) 12:04:39.90 ID:WEIlczcE0
――――――


 暁美さんの家に着いてインターホンを鳴らすと、出てきてくれた。

 今は別れ際に見たままの三つ編みに眼鏡の姿だ。


貴方「暁美さん」

ほむら「あ、【貴方】くん……どうした、の?」

貴方「……いや、ちょっと話したくて」


 さすがに世界がもうすぐ終わるなんてことは言えない。

 さっき見てた部屋と同じようだけど、違いがあるとすれば壁に『何もない』ことだ。


ほむら「いい、ですよ。座って」

貴方「ありがとう」

ほむら「相変わらずなにもないけど……」

貴方「何か物を増やす予定はあるの?」

ほむら「え、まあ少しずつは。しまってたものも少しはありますし……でも今すぐにはちょっと。家具をセットするのも重たそうだし」

貴方「……その時は手伝うよ」

ほむら「本当ですか。助かります」

貴方「そういうのは遠慮しないで頼ってくれていいよ。……ほら、恋人なんだしさ」


 約束してしまったけど、守れる日が来るのかはわからない。

 ……そういえば、結局、恋人らしいことって何にもできなかったな。

 そう思うと少し後悔しかけたけど、そういうのはあまりこっちから急いで求めてもよくないんだろう。

453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 12:07:43.95 ID:S7nZhQ4I0
30レスかあ・・・
メガほむと写真部のその後とかかな
2メガほむ
454 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/08(月) 12:09:21.04 ID:WEIlczcE0
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以上!
次回は前前スレの余りから!
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1569759132/)
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455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/08(月) 19:49:52.20 ID:r6rH8rkG0
久しぶりにキリカと巴ちゃんのイチャラブも見たいし、番外編?の伊集院君の続きも見たいなぁ
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 23:31:05.23 ID:UNXV8xx40
おまけ、終わったでよ
457 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/10(水) 23:38:09.37 ID:lHaKgmXP0
おまけ編、駆け足になりましたがエンディング回収は7個でした。
杏子がずっと待機でした…。

もう一回初めからやる?


下5レス中多数決・やらない場合はこの話は終了として次を決めます
458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 23:56:35.29 ID:UNXV8xx40
別にいいかな
次を決める
459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/10(水) 23:57:17.25 ID:aEGyP+6Y0
やらない
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/11(木) 00:12:58.15 ID:oA+gt4AK0
やらない
461 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/11(木) 00:26:22.12 ID:3G++iMbi0
---------------------------
貴方のヒロイン攻略シリーズ 完!


次から新しいこと決めるよ
13日(土)18時くらいからの予定です
462 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/13(土) 18:36:39.80 ID:1Hp1tyQE0
===================================================

そろそろ昔すぎて続編書けないほど忘れてたり、
原作情報不足の頃に書いた捏造過多な話(主におりマギ絡むやつ)は過去作紹介や続編選択からも削ります。
もう需要もあまりないと思うけど、やるなら同主人公で新しく話書いたほうが楽しめると思います。


【供養】
メガほむ編 :[9]>>181〜[12]>>666
・・・非情になれないほむらの4ループ目、織莉子たちとの戦い。
・After『夜明け後の一週間』[12]>>93
アマネ編  :[7]>>807>>963,[8]>>5>>130(GiveUp)
・・・抗争に破れて見滝原に来た最弱主人公の野望の話。  ※オリ主※
キリカ編  :[7]>>309>>704,[8]>>475〜[9]>>151
・・・本編時間軸で織莉子が既にいない世界のキリカの話。話はほぼまどマギ本編寄り。
QB編   :[2]>>198〜[4]>>502
・・・感情の芽生えたQBの話。
中沢編   :[練習]>>164〜[2]>>150
・・・まだ試運転。中沢が安価の導きにより魔法少女たちと関わっていく話。
さやか編   :[練習]>>8>>154
・・・マミの死後、さやかが魔法少女になって張り切ったり悩んだりする話
・・・試験作。かなりあっさりしてます。

===================================================


*これから*

1新しい話
2続編とか


○今までのおはなし


【続編開始/指定場所からロード】
・なぎさ編【続編:あすみ編後から再開。あすなろ編】
・杏子編【続編:あすなろか安価】
・キリカ編2【続編:小話・ワルプル後新展開】
・あすみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
 ・+かずみ編【続編:小話・ワルプル後新展開】
・桐野編【キリカルート続編:小話】


○新しい話

★まどマギのほかに、おりマギ本編・かずマギ・漫画版まどマギ・TDS・PSP・劇場版のネタを含みます。
 それ以外からのネタは出さないか考慮しませんが、知ってるとより楽しめるネタはあるかもしれません。

★主人公は作品中のモブやオリキャラも可。

★同キャラでも前提設定やルートによって大分話が変わるので2回以上選択も可能。
 ただし同キャラで未完結が増えすぎても困るので前の話が完結している場合のみとします。

☆誰が何をする話、とかざっくりでもOK

☆マギカシリーズ外の作品の設定や世界観借りるみたいのもOK(作者が知ってるネタだけになるけど)
※もしかしたらキャラの設定とか個性が原作から崩壊するかもしれないけど、根底にある性質を大幅に変えてしまうことはしません
 あくまで持ち味を活かせる形で!


↓5レス程度来たらなんかかんがえる
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2021/03/13(土) 18:53:53.68 ID:idQXZh4z0
1
初心に帰ってほむらの話を新しく
ただしアニメ本編に負けないくらいのハードモードで
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/13(土) 18:55:03.66 ID:idQXZh4z0
sage忘れたゴメン…
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 18:56:39.48 ID:ttJDvRef0
供養されたお話たちに合掌・・・

スレ主さん、W主人公はありですか?
ありでしたらなぎさ編のなぎさとあすみ編のあすみが出会って、コンビを組んで活躍する話を希望
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:02:39.27 ID:ttJDvRef0
>>465は神様に助けられたなぎさが再び活動し始める頃にあすみが見滝原に流れてくる、と言った感じでお願いします
467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:18:32.71 ID:eseD7RZhO
ありなら465
ダメなら1で小巻
468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 19:42:31.52 ID:dqw2gO3r0
1で小巻
469 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/13(土) 21:28:29.61 ID:1Hp1tyQE0
ID別だと4レス分だけど5レスくらいで多数決とも書いてないので、
今でてるとこから多数決とっちゃいます


1ほむら主人公(アニメ本編ベース)
2なぎさとあすみのW主人公もの(過去作なぎさ編ベース?)
3小巻主人公

 下3レス中多数決
470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 21:40:40.27 ID:ttJDvRef0
2
ベースはなぎさ編とあすみ編のMIXでも他の話がベースでも構いませんよ
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 21:42:44.89 ID:eseD7RZhO
ありみたいだから2
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 23:16:19.48 ID:G/F+DGqI0
2
473 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/13(土) 23:45:39.97 ID:1Hp1tyQE0
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二つの編そのままは合わせられないので設定は練り直します
神様出すならなぎさ編ベースになると思うけど、出ないかも

・詳細が判明してない(あすみに至っては嘘キャラ)から時系列とかは気にしなくていいはず
・今後原作できっちり描写されたら供養入りになる可能性
・今度こそ多分短め

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「――――……こうやって毎日来て、いつも手を握っていてくれる」

「これだけで、お母さん本当に元気になれる気がするわ」


なぎさ「……うん。早く元気になってね」


 隠し持った薄紫の宝石が光る。

 なぎさの魔法少女としてのあかし。ソレに秘められた魔法の力を母に流し込みながら祈るのは、なぎさの日課でした。



 病院の廊下を歩く。病室から出たらひとりぼっちの帰り道。


なぎさ(魔女と戦って怪我をしちゃったときの自分のケガはすぐ治せるのに……)


 悪くはなってないから、たぶんぜんぜん効いていないわけじゃない。でもぜんぜん良くならない。


 それはきっとなぎさの魔法がまだ弱いから。もっと強い魔法少女になれば、治せるかも。

 そうと決まれば今日も魔女をやっつけにいこう!

 ……どうせおうちに帰ったって一人。一人は寂しい。


なぎさ(続けていれば、きっとまたおうちにも帰れるようになるはず!)


 なぎさの願いが違ったら、すぐに治すこともできてたのかな?


――――――
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/13(土) 23:53:43.58 ID:eseD7RZhO
そういやあすみとなぎさは母親を亡くしたって共通点があるのか
475 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 00:29:00.43 ID:cW32b/rq0



 ――――私の願いは復讐だった。

 幸せすら奪われた私を更に不幸にした人への、『当然の報い』であった。


 ――――そして、願い<呪い>は叶ったのだ。

 男たちもクラスメイトも、同業の魔法少女でさえも全て腐ってた。私はあの街の全てが嫌いだった。


あすみ(……本日の魔女発見か。ま、悪くはないわね? この街も)


 この街は狙った通り魔女が居つきやすく、育ちやすい。魔法少女としてはそれだけで十分。

 ここが私の新天地。この世界に綺麗な場所があるなんて期待してないけど、同業が少なくて腐ってなければもっと良い。



あすみ「キュゥべえからは一人だけしか聞いてないけど……」



 結界の中、聞こえてきた“声”に振り向いた。そこに悪意はない。



なぎさ「あれっ! 巻き込まれちゃったひと――――じゃないのです?」

あすみ「なーんだ、こんな子供だなんて。警戒して損した」

なぎさ「いきなりなんなのです!? 初対面のひとにする挨拶じゃないと思うのです!」

あすみ「……ねえ、お嬢ちゃん。譲ってくれる気はある? この魔女と、これからこの縄張りに出る魔女の一部」


 一応、向こうから来るならすぐに武器を振るえるくらいには警戒はしていた。

 断られたからって激昂はしないさ。この魔女を取引道具として扱うならそれもやり方としては間違ってない。


あすみ「……」


 この返答で相手を見定めていた。

 見た目で侮って殺されるなんて愚の骨頂。そんな相手をたくさん見てきたから、その一員にだけはなりたくなかった。

476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/14(日) 00:33:16.31 ID:Ze6v5qPu0
2人とも子供なんだよなぁ
477 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 00:55:01.90 ID:cW32b/rq0

なぎさ「いいのですよ! おねーさんが先に見つけたならおねーさんのものなのです」

あすみ「……あっ そう」


 ……拍子抜けするような返事だった。

 今まで見てきた魔法少女は腐ったような奴ばかりだった。新人いびりも縄張り争いも経験したことがある。


なぎさ「でも、いっしょに戦ったほうがはやくたおせると思うのですよ?」

あすみ「そんなこと言ってグリーフシード横取りするつもりだったりしない?」

なぎさ「しませんよっ! 疑り深すぎなのです!」


 見た目で侮ることの危険性はさっきも考えた。

 小柄な姿はナメられるのは癪だが騙しやすいのだ。無条件に人を信じることなんて出来ない。


 ……だから、聞こえてくる【悪意】がないことが信じる根拠。現時点では――だけど。


なぎさ「べつに魔力に困ってないです。魔法はたくさん練習したいですが……」

あすみ「……?」

なぎさ「なぎさ一人じゃ魔女を倒しきれないと思ってたところなのですよ」

なぎさ「魔法少女の仲間なんてはじめてなのです! これからよろしくなのですよ!」

あすみ「……はあ。私は一人で戦うほうがいいけど」

なぎさ「あっ、『やくわりぶんたん』って方法もありますね? たしかにいっしょだと一人のときと同じにしか回れないから……」

なぎさ「――――じゃあ、なぎさは他のところを回ってくるのです! ごぶうんをーです! 次も会ったらよろしくなのです!」


 そう言うと、なぎさは駆けて行った。

 なんだかやたらと嬉しそうな様子だった。


あすみ(……同業者が見つかったことがそんなに嬉しかったのか?)


 ……私にはわからない。


――――――
478 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 00:55:29.43 ID:cW32b/rq0
------------------
ここまで
次回は14日(日)18時くらいから
479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/14(日) 00:58:27.79 ID:Ze6v5qPu0
乙です
あすみは4〜6?でなぎさは3〜5?といったイメージですね
あすみの方がちょい年上かな?
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 11:49:46.88 ID:74m3U2j7O
なぎさもあすみもまだ原作開始前だからベテランではないのか
確か一年ぐらい間があるんだっけ?
マミと杏子もこれからか
481 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 19:22:18.52 ID:cW32b/rq0
――――――


 街を駆け回って魔女をたおして、あくる日もお見舞いと魔女の退治。

 おうちに帰っても一人。お父さんは忙しい。

 魔女退治も一人だけど、前よりも気にならない。このまちにはなぎさの他にも魔法少女がいるって知ったから。


 今日も病院から出て魔女退治にいこうとしてたら、この前のひとに会った。


なぎさ「あっ、この前のひと!」

あすみ「……この前の子供」

なぎさ「こども――で言ったらなぎさたちどっちも子供じゃないのです?」

あすみ「私はあんたほど子供じゃない。アッチのほうの知識も…………なんてね」

なぎさ「アッチ? それはおねーさんのほうがおねーさんですけど……こどもって呼ばれ続けるのもイヤなのです!」

なぎさ「同じ街にいる魔法少女仲間同士、名前くらい知っておくべきなのですよ!」

あすみ「なぎさ」

なぎさ「なんで知ってるのですか!?」

あすみ「自分で言ってんじゃん。あすみ、それも聞いてないほど耳遠くないよ」

なぎさ「あすみ!」

あすみ「はいはい」

482 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 19:56:54.37 ID:cW32b/rq0


 ちょっとふしぎな自己紹介が終わると、あすみはどこかへ行こうとする。


なぎさ「あすみは魔女退治中なのです?」

あすみ「いんや。今日は早めに切り上げて休みにいこー思ってたとこ。大体、魔女狩りは昼からやってたし」

なぎさ「お昼から……ですか?」

あすみ「そうだけど? 悪いー?」

なぎさ「あすみはどこの学校に通ってるのです?」


 疑問に思ったのは、お昼にはまだ学校があるってこと。

 でもそれを聞くとあすみは少しの間押し黙った。


あすみ「……言わなきゃいけない?」

なぎさ「べつに答えたくないならいいのですよ。『こじんじょーほー』ってやつですし」

あすみ「そう。学校に通ってないヤツなんて別に珍しくもないんじゃない? 特にこの業界は」

あすみ「それと、魔法少女同士が仲間だとか思わないほうがいいから。そんなんだとナメられて酷い目に遭うよ?」

あすみ「アンタみたいな子供はただでさえ相手を調子づかせやすいんだ。賢く生きるには、逆手にとって騙せるほど強かにならなくちゃ」

なぎさ「……舐められるですか? くさそうです」

あすみ「そう、小さな子をペロペロしたいロリコンはいっぱいいるってこと」

なぎさ「??」


 あすみは最後に茶化したように言った。

 それが冗談だってことはわかったけど、それ以外はよくわからなかった。


なぎさ「よくわからないけど、忠告してくれたのですね!」

あすみ「アンタ見てると色々言いたくなる。子守なんてガラじゃないし子供なんて好きじゃない」


 あすみはつっけんどんに去っていった。

 せっかくお互い名前を知ってるのに全然呼んでくれないなぁ。


――――――
483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/14(日) 20:11:59.55 ID:Ze6v5qPu0
現時点であすみは杏子みたいにホテル暮らしかな?
484 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 21:17:00.61 ID:cW32b/rq0
――――――



 『なぎさ』とかいう子供と知り合ってから二週間くらいが経った。

 それはこの街に来てからの期間ともちょうど同じだ。

 やることはほとんど変わらないけど、同業者もあの子供一人しかいない分、ここでの活動は幾分穏やかだった。


 思い切ってあの家を出たけどやっていけてる。やっぱりこの世は強い者が勝つように出来てる。



あすみ「……こんなとこで何してんの」


 街を散策していると、その外れに魔力の気配を感じた。

 魔女はいないが魔法少女の魔力だけがあった。


なぎさ「魔法の練習……です」

あすみ「ご苦労なことね。練習に使う魔力があるなんて」


 私が来るまで独占できてたのだから、余裕はあるのだろう。

 そういえば、魔法をたくさん練習したいとか言ってたっけ。


なぎさ「……あすみっていつから魔法少女やってるのです? なぎさが見かけたのは最近ですが」

あすみ「ここに来る前は別の街に居た。数ヶ月くらいってとこ」

あすみ「でも契約したての頃から自分よりも経験長いヤツ伸してるよ。経験で全部が決まるわけじゃないから」

なぎさ「そうだったのですね。なぎさもそのくらいか……もうちょっと長いかもです」

あすみ「へー、その間ずっと一人でいたの? 随分と平和な街なのね」


 正直、経験で全部が決まらないとはいえ、こいつより短いとは思ってなかった。

 私も表社会で平穏に暮らしながら魔女を狩ってる奴らよりは実戦経験は多い自信がある。

 魔女だけ狩って平和に過ごしてきた奴よりは私のが戦いを知ってる。しかしなんでこんなこと聞いて来たんだろう。雑談の一種?

485 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 22:04:29.15 ID:cW32b/rq0

あすみ「アンタ、強くなりたいの?」

なぎさ「はい。なぎさはもっともっと強くならないといけないのです」

あすみ「そうだね。強さは大事だよ。強ければ痛い思いしなくて済む」

なぎさ「……それもそうかもしれませんが、なぎさがもっと強ければ痛くさせないで済むんです」

あすみ「……?」


 返ってきた答えが予想外で、意味が分からない。


なぎさ「あすみは『回復の魔法』って得意ですか?」

あすみ「……いや。むしろ苦手。そんなのいらないし」

なぎさ「そうですか……。なぎさにはまだできなくても、頼めないかと思ったのですが」

なぎさ「なぎさのお母さん、病気なんです。なぎさが魔法で治そうとしても治らなくて。それどころか……」

なぎさ「―――――悪化したって、お医者さんが言ってたのです」

あすみ「……あのさ、練習って」


 よく見てみるとなぎさの手には切ったような傷がついていて、手には血がついたするどい石が握られていた。


なぎさ「病気とこんなケガじゃ違うのはわかってます! でも少しでも治さないと練習にはならないのです!」

あすみ「自ら傷なんて作ってどうするのさ。自傷行為なんて馬鹿のやることだよ!」

なぎさ「なぎさはこのくらい痛くてもいいんです! それに消えます! お母さんのほうがもっとずっと痛いはずです!」

なぎさ「お母さん、少し前まではまだ大丈夫だったんです。ずっと良くも悪くもならないままでした」

なぎさ「余命って言われてたのはもう過ぎてて、でも良くならなくて、今治せないときっと……!」

あすみ「…………」


 誰かを助けるために何かしたいなんて、そんな気持ちはもう長い事忘れ去っていた。

 ……まだ『痛い』んだ、その感覚すら忘れた――忘れようとしてる私と違って、自ら痛みを感じたいと思ってる。


 でもきっとどうにもならないだろう。魔法少女の魔法でも治せないのなら。

 現に手についた傷は魔法で消せている。経験だけで決まらないと言った通り、契約した時から得意不得意は分かれてる。

 なぎさの魔法ではそれ以上治せないんだ。もちろん、私の魔法でも。


 少し練習したくらいでその限界を超えられるものか。



*現実を…
1つきつける
2何も言わない

 下2レス
486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 22:07:22.43 ID:qDut2qsU0
1
487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/14(日) 22:10:36.04 ID:Ze6v5qPu0
あすみなら1かな?
488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/14(日) 22:15:43.30 ID:74m3U2j7O
無関心なら選択肢でないでスルーしてただろうな
489 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 22:48:50.75 ID:cW32b/rq0


あすみ「……無理だよ。魔力の無駄だ」

なぎさ「そんなことないです……! 強くなれば……! 諦めなければ……!」

あすみ「諦めなければ報われる? 現実はなるようにしかならない。奇跡なんて起きないよ。アンタも新人じゃないんだ、薄々気づいてるんじゃないの?」

あすみ「奇跡は……もう『使っちゃった』でしょう?」

なぎさ「――! で、でも! そんなこと、やってみなければわからないです! キュゥべえに頼らないでも奇跡が起こせるって!」


 ……ああ、こいつ。魔女になるな。

 無駄な練習のおかげで魔力を使い切って、トドメに母親が死んで、絶望するんだろうな。


 現実を見ればそんな未来が容易に予想できた。


あすみ「あぁもう、頑固だな……。こんなとこで自分を傷つけてるの知ったらお母さんどう思うよ?」

あすみ「奇跡を祈るなら時間が許す限り隣に居てやれよ。……じゃないと多分、後悔するよ」

なぎさ「ううぅぅぅ…………!」


 なぎさは傷を治した拳を握って、かたくかたく握りしめて、それから走り出していった。

 ……その背中を眺めてため息をつく。


 あいつが魔女になればグリーフシードが1つ増えて、この縄張りは私だけのものになる。

 考えてみればこの状況は悪くないはずなのに、今回ばかりはそんな冷めた思考をする自分が嫌に思えた。


あすみ「何やってんだろうなー……」


 まだ奇跡を信じてた頃の自分と被るから、か。


――――
――――
490 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 23:21:08.62 ID:cW32b/rq0

――――


 ……あれからめっきりなぎさの姿を見かけなくなった。

 あれだけ言ってやったのに、その辺で野垂れ死んでないだろうな。

 所詮は他人が何を言おうと本人次第。どうにもならないことがあるのを知っていた。


あすみ「ねえ、キュゥべえ。あいつってまだ生きてんの?」

QB「あいつ?」

あすみ「……なぎさ」

QB「ああ、なぎさか。さっき見た時は街外れのほうにいたと思うけど」

あすみ「そう」


 生きているらしい。『まだ』、かもしれない。

 でも少しだけ安心してしまった。


QB「あすみはなぎさが魔女になると踏んでいたのかい?」

あすみ「まあ、そうだね。条件は揃ってたでしょ。……契約した時から」

QB「なぎさの願いは病気そのものを治す願いではなかった。身近な人の死というのは人間の心理に大きな影響を与えるからね」

QB「病を魔力で治そうとしてたみたいだけど、それも条件の一つだ。希望を抱いてからのほうが絶望は大きくなる」

あすみ「やっぱり、アンタもアレは無駄な努力って思ってたんだ?」

QB「他人のための祈りではあるとはいえ、癒しの祈りで契約しなかったなぎさが病気を治せるとは思ってなかったよ」


 無駄だとわかっていて何も言わなかったのもこいつらしい。

 こいつに至っては、現実を突きつけるのは可哀想だから――とかそんな理由もありえない。

 ただその時が来るのを待っていたんだ。


あすみ「そうね」


 だから適当に相槌を打って、それ以上は何も言うことはなかった。こんなのに振り回されていても仕方ない。

491 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/14(日) 23:47:24.85 ID:cW32b/rq0


 なぎさはあの時と同じ場所に居た。

 なにもせず、ただぽつんとそこに居るだけだった。


あすみ「……こんなとこで何してんの」

なぎさ「…………」


 返事は返ってこなかった。

 心がどっか行ってしまったような目でどこかを見つめている。


なぎさ「……お母さんが死にました」

あすみ「……そうか」

なぎさ「ホントははじめから覚悟してたはずだったのです。どうにもならないってわかってたから、願ったのです」

なぎさ「もう長く生きられないから、せめて元気があるうちに食べたいものをプレゼントしたい――って」

なぎさ「それだけを考えていました」


 最初は、契約した時にはまだ病気が発覚してなかったのかもしれないと思ってた。

 さっきキュゥべえと話してからずっと、なぎさが病気を治すことを願わなかった理由がわからなかった。

 でもやっとその理由が分かった。


あすみ「後悔してんの?」

なぎさ「キュゥべえに会ったときは願いで病気が治せるなんて考えてなくて……」

なぎさ「でも、魔力で人のケガを治せるって知って、お母さんの病気もなぎさが治せるんじゃないかって思ったのです」

なぎさ「無理、でしたね。こんなことならはじめから病気を治すことを願っていればよかった……!」

492 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/15(月) 00:23:59.49 ID:MS4P1Dr90

あすみ「私もお母さんが死ぬ前に願えたなら、どんな願いをしてただろうな」

あすみ「そしたら今も生きてるか、自分がどうなってるのかってのはわからないけど、今よりも後悔してないかもな」

なぎさ「あすみも、お母さんが……」

あすみ「でもその時私のところにキュゥべえは来なかった」

あすみ「文字通りアイツとの契約は『奇跡』で、しかも気まぐれなんだよ。その時願ってることしか叶わない。……考える時間でもあれば別だがな」


 キュゥべえは素質のあるヤツをマークするだけでなく、願いがありそうなタイミングを見計らっているのだろう。

 その瞬間に願いがあれば大抵考える時間など置かずに願ってしまう。多くの人は二つ返事で契約すると前に聞いたが、そういうことなのだろう。

 ……私もそうだった。既に取り返しのつかなかなくなった今となっては、そこに後悔もないけれど。


なぎさ「……そうですね。なぎさはお母さんを治せなかったけど……」

なぎさ「最後までいっぱいいっしょにいることができた。美味しいチーズケーキも食べさせてあげられた。それだけでも奇跡なんですよね」

なぎさ「この前はありがとうでした」

あすみ「ん」


 久しぶりに感傷に浸った。こいつにもまだしばらく時間が必要だろう。

 けれど、もうこいつは時間をかけてでも立ち直れる。

 空虚の中に少しだけ光を取り戻した瞳を見て、そう思った。



―なぎさとあすみ『出会いと救い編』END―
493 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/15(月) 00:27:06.45 ID:MS4P1Dr90
-------------------
まずはここまでー
この二人(+QB)しかいない話終了。続きやるなら時間が飛ぶよ。
次回は多分17日(水)くらい。平日の開始時間は20時くらいになりそう。
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/15(月) 08:08:14.82 ID:BzzeD7Vv0
あすみは少しだけなぎさに自分を重ねたのか
これは続きが読みたい
495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/15(月) 21:49:29.57 ID:KgW+yp+l0
乙です

なぎさちゃん、救いの言葉を掛けてくれたのは神様ではなくあすみでしたね。
境遇が似たもの同士、どことなく通じるものがあった感じですね。
このまま続く場合、マミと杏子は仲間になりそうですがあすみとは相性が悪そうなのでどうなることやら・・・
あすみはあすみでどこかあか猫(キリカ)拾ってきたりしてw
496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/16(火) 03:25:05.28 ID:dI2nJhkF0
ギャルゲーと言うから期待して読み直してみたら
告白してエンドばっかりで萎えた
恋人になった後の話はみんな興味ないのか
497 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/17(水) 20:38:13.76 ID:MCldcWw00
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一区切りつきましたが、まだ続きやります…?


1続・なぎさとあすみの見滝原
2新しい話
3ほかの続編とか


 下3レス多数決
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498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/17(水) 20:44:23.15 ID:IIgba+vMO
続き見たいので1でお願いします
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/17(水) 20:48:26.39 ID:CDj4gtSN0
1で。
この2人のコンビがどうなるか期待!
なぎさちゃんが見滝原の管理者、あすみが裏番になりそうw
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/17(水) 21:17:44.00 ID:w09UZGaX0
念のため1
501 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/17(水) 22:03:43.87 ID:MCldcWw00
――――――――――
――――――


「う…………」


 身体中が痛い。何が起きたかわからなかった。

 いや、わかりたくなかった。

 自分のことも、ずっと一緒にいた人のことも、なんでこんなことになってしまったのか受け入れられないでいた。

 ついさっきまであったはずの日常があっさりと消えてしまった。


 さっきまで見ていた景色と同じ世界。なのに、自分たちだけがこんな目に……。


 ――――ここはどこ。


『――――』

「……ぁ……」


『……困ったね。喋れるかい?』


 大きなしっぽを揺らす、獣の影が見える。

 そこに手を伸ばしかける。


『まだ意識はあるみたいだから、急がないとね。間に合ってよかった』



 ――――あなたは、誰?



「――――叶えてほしい願いを言ってごらん」



―――――――――――――――


 続・なぎさとあすみの見滝原


―――――――――――――――
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/17(水) 22:09:51.44 ID:CDj4gtSN0
これは状況的にマミさんかな?
503 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/17(水) 22:16:19.61 ID:MCldcWw00
――――――
――――



なぎさ「…………」

あすみ「ありゃー、こりゃダメだよ。どう見ても死んでる。使い魔がいないと思ったらそういうことだったのね」

なぎさ「治せない、ですか」

あすみ「この世界じゃよくあることでしょ。今までが平和すぎたんだ」


 結界の中、奥地に足を踏み入れた途端になぎさの目は『ある一か所』に釘付けになった。

 人の死体。それだけなら見ることはある。こいつだって魔法少女としての活動は短くはない。

 いくら助けようとしたって間に合わないことなんていくらでもある。……私は助けようとしてるってわけでもないけれど。


 そして、これはなぎさにとって初めてだったらしい。結界の中で転がってるヤツは、少し前に見かけた魔法少女によく似ていた。

 数日前、初めて新人と会ったなぎさは後輩ができるって喜んでいたところだった。だが、それもほんの束の間で終わってしまった。


あすみ「……集中できなくなったんなら帰ってもイイんだよ? それよりやられ方から戦略でも考えたほうが建設的だと思うけど」

なぎさ「なぎさも戦えますよ! 魔法少女なのですからっ!」

あすみ「なら、足だけは引っ張んないでね」


 ようやく二人は魔女と戦う態勢に入う。

 なぎさは遠くから、私は距離を詰めていっての攻撃。一緒に戦ったことはいくらかあった。


 ――ほんの最初だけは自分の力を見られるのを警戒したけれど、こいつを見てればすぐに馬鹿らしい気分になった。

 今では魔女狩りの途中で会えば一緒に行くこともある。おかげで二人で戦うのも慣れたものになってきた。


 正直、私としてはいてもいなくてもどっちでもいいってとこだけど。

 今回みたいなことがあってツマンナイことで死なれても、それはそれでイヤな気はした。


あすみ(せっかく私のおかげで助かったんだもんね)

あすみ(……ま、本人は知らないだろうけど)

あすみ(しかし、『このこと』もいつまで隠しておけばいいのやら。こうしてその場を見たりしない限り、知らないままになるのかね?)

504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/17(水) 22:19:21.02 ID:IIgba+vMO
新人さん、魔女化したのか
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/17(水) 22:22:36.56 ID:CDj4gtSN0
使い魔がいない=羽化したての魔女結界ってことか
この新人さんがマミだったら活躍の場もなく終わるのか・・・

そして何だかんだ言ってもなぎさを気にかけてるな、あすみん
506 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/17(水) 22:53:58.96 ID:MCldcWw00


 なぎさはまだどうしようもなく平和ボケしたところにいるけれど、戦いの腕は悪くない。

 魔女との戦いはさほど長引かずに幕を閉じた。


なぎさ「ど、どうしよう! 消えてしまいました……!」

あすみ「何が?」

なぎさ「戦いが終わったら、せめて遺体だけでも帰してあげようと思ったのです! なのに!」

あすみ「あー……、一般人の犠牲者が取り込まれた時も死体って残んないじゃん? 生きた人しか帰れないってことじゃない?」


 言われてみれば、あんまり考えたことなかった。

 だとすれば魔女結界は不法投棄にもってこいの場所ってこと。


あすみ「それに、あんなやられ方した遺体なんて見つかったら絶対騒ぎになるよ?」

なぎさ「そ、それは……動物園から猛獣でも脱走したのかと思われちゃうかもですね……」

あすみ「そう。つまりどうしようもないってこと。死ぬな、としか言えない。もう遅いけど」

なぎさ「そ、そんなぁ……」

あすみ「…………」


 戦ってる時はまだ大丈夫だったけど、なぎさは結構マジな落ち込み方してるみたいだった。

 これは連れ回してても足引っ張るんじゃないかな?

 なにより、横でウジウジされるのはうざい。


なぎさ「……なぎさは運がよかったんですかね」

なぎさ「今なら負けない自信がありますが……契約したてで一人で魔女と戦っても、こうして生きています」

あすみ「あぁ、そうだね。結局運だよ運。生きるのも死ぬのも、どんな目に遭うかも」

なぎさ「なぎさが先輩としてついてあげてれば死ななかったのでしょうか」

あすみ「次に会う後輩にはそうしてやったら? 恩を売れば利用は出来るかもよ。まあ、あんたじゃ逆に利用されるかもしれないけど」

なぎさ「お、恩を売りたいわけじゃないのです!」


 この世界はこいつが思ってるより残酷で、強くないと生きていけない。

 でも、残酷なものを見ても心が動かなくなるのが強くなること? 私は少なくとも、そう思ってきたところはある。

 動揺しないから力を出し切れる。自分の強さを否定したくない。


 この先何度も見ていればいつかはなぎさも慣れてしまうのだろうか。……人の死も、絶望でさえも。


あすみ(そんな時が来るとしたら私が話すのはその時、か?)

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/17(水) 23:01:33.62 ID:CDj4gtSN0
あー、神様が助けてくれたわけじゃないから魔女化とかキュウベェの本性とか色々と知らないままなのか
508 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/17(水) 23:22:14.37 ID:MCldcWw00


あすみ「今日はもう帰ったら?」

なぎさ「はじめたばっかりです! まだ帰りません!」

あすみ「何ムキになっちゃってんのよ」

なぎさ「……それに、この時間じゃ帰ってもどうせ一人です。魔女退治が終わったら大きなケーキを出しますから、あすみも一緒に食べてください」


 母親が居なくなったこともあって、あれからなぎさはどうにもこっちに依存しているような節があった。

 同じ縄張りの魔法少女ってだけの関係の相手に、どうしてこんなにベタベタと懐けるのかわからない。もう少しマシな相手はいるだろうに。


あすみ「ん、まー……食欲があるんなら大丈夫そうね」

なぎさ「人をくいしんぼみたいにっ! でも、食べることは大事なのですよ。人生の楽しみになります!」


 どうせ一人……か。

 私も一人だけど、特に気にならない。むしろ解放された気分だったから。

 これも、強さに入るのだろうか。


なぎさ「そういえば、あすみはどこに住んでるのですか? 駅の方でよくおみかけするのですがっ」

あすみ「じゃあそこらへん」

なぎさ「じゃあとは!? ……うー、あすみにはお世話になっているので、ご家族やお友達がいればそのひとたちにもおすそわけしようと思ったのです」

あすみ「いや…………いないよ。家族も、友達も」


 そう言うと、なぎさはどう返したらいいものか悩んだような顔をした。

 どっちも当たり前にいるのが普通なのかと改めて思わされる。孤独に耐えらえるのは強さ? でも、これじゃその真逆だ。全然強そうじゃない。


なぎさ「そ、そうですか……」

あすみ「……惨めに思うのはやめて」

なぎさ「まあ友達はいますけどね」

あすみ「はあ? えーっとまさかそれ……」

なぎさ「なぎさたち、お友達ですよ! そう言ってくれなきゃ悲しいです!」


 言うと思った。でも、まるで漫画の中みたいな安っぽいセリフに思えてしっくりこなかった。

 ひねくれてる、とは思う。

 『友達』も『孤独じゃない』も、もう私にはわからなかった。


――――
――――
509 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 00:17:20.87 ID:55VJKCSg0


 お家に帰ったあと、最近――ひと月くらい前に新しくできたお友達とさっきまでなぎさはいっしょに居ました。

 魔女退治の後は、とびきり大きなケーキをたいらげて、今日はおひらきです。


 ケーキは作ったのでも買ったのでもありません。火はあぶないし、手作りなんてとてもできません。

 これが、なぎさの魔法。

 『ひとつきりのチーズケーキ』を願ったなぎさが得た、皮肉ともいえる魔法。



 ……一人じゃなくなるまでいてくれるようにあすみに頼んだのですが、お父さんが来る前に帰ってしまいました。

 でも、待っていたら夜になってしまうから、それが正解だったかも。お父さんも最近忙しいみたい。

 それに、あすみはあまり会いたくないって言ってた。



*「なぎさ、ご飯はちゃんと食べたか?」

なぎさ「それはもうたくさん! そうだ、お父さんの分もあるんだった。 ケーキ!」

*「ケーキか……ありがたいけど、お父さんも食べてきたしもう夜遅いから、余ったなら明日にでもとっといたらいいんじゃないか」

*「でも、なぎさを信頼してお金を渡してるけど、お菓子ばっかりじゃダメだぞ」

なぎさ「う、うん。お菓子だけ食べてるわけじゃないよ。お弁当とかも買ってるから」

*「そうか。ちゃんとお留守番出来てて偉いな。なぎさはもう小さくないもんな」

なぎさ「うん……」



 寂しい、とは言えない。

 あすみのことを聞いたらますます言えなくなった。

 家族も友達もいないなんて。……それを、あんなに平然と言うなんて。



なぎさ(今度、料理とか習ってみようかな? あすみはおねーちゃんだからできるかも)


――――――
510 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 00:42:52.16 ID:55VJKCSg0


あすみ「料理を習いたい?」

なぎさ「はい。なぎさは大体お弁当か魔法でつくったケーキですましちゃうので、これってあんまりよくないんじゃないかなあ……と」

なぎさ「あと、なぎさが料理できるようになればお父さんも安心しますし、早く帰ってきた日には食べさせてあげることもできるのです!」

あすみ「今はどのくらい出来んの?」

なぎさ「今……今は……この前学校できゅうりを切ってサラダをつくりました」

なぎさ「あと、ねるねるね○ねならつくれます……以上なのです」

あすみ「それ料理じゃないし。てか、金もあって魔法で腹も満たせるならよくない?」

なぎさ「うー、んー、ですから……」


 話がループしそうになったところで、ある可能性を思いつきました。


なぎさ「あっ! さてはあすみもできないんですね?」

あすみ「いや、できるし。今は必要ないからしないだけ」

なぎさ「またまたー、そんなこと言っちゃって」

あすみ「はぁぁぁぁぁああ?」


 かかってきた。目標が食いつきはじめているのがわかります!

 あすみはこう見えて負けず嫌いっていうことまで計算済みなのです。


あすみ「そこまで言うなら今日の夕飯だけ作ってやらんでもないけど? てか、食いたいだけでしょ?」

あすみ「市販の弁当なんて添加物まみれの贅沢品! 魔法で作るのは魔力の無駄!」

なぎさ「わーい!」


 ……ずいぶんと市販品をボロクソに貶しましたが、あすみはいつもどうしているのか気になります。

511 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 00:43:20.49 ID:55VJKCSg0
-------------------
ここまで
次回は18日(木)20時くらいからの予定です
512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/18(木) 02:50:12.57 ID:uc+eqb1VO
前の読み返したけどあすみって料理は得意ではなかったよね
まぁなぎさよりかは作れるっぽいか
513 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 20:49:12.17 ID:55VJKCSg0


 ――――今日の魔女退治をすませると、所変わってさっそくうちの台所へ。

 その冷蔵庫の前。


あすみ「……何もないんだけどー」


 中を開いたあすみが呆れた声で言いました。

 お母さんが入院してから、うちの冷蔵庫はガラガラです。


なぎさ「ありゃりゃ、普段料理なんてしないから。あってもなぎさのおやつくらい……」

あすみ「そういやこれ、昨日のケーキの残り?」

なぎさ「あ……そういえば忘れていました。お父さんにあげようと思ったのですが、食べる暇ないから食べていいって」

あすみ「ふーん。ちなみに魔法で出したケーキってどのくらい持つの?」

なぎさ「言われてみればわからないのです……そんなに日を置いたことはなかったので」

あすみ「自分の魔法くらい把握しなよー。まあ、この魔法じゃ戦いに役立ちそうもないけど」

あすみ「……ねえ、毒入りケーキでも出せれば攻撃になるんじゃない?」

なぎさ「それはパティシエールのプライドがゆるさないのですよ。それに魔女や使い魔に食べさせるよりフツーに攻撃したほうが早いのではないのですか?」

あすみ「魔女や使い魔が相手ならね」

なぎさ「……」


 あすみがなにかよからぬことを考えています。


なぎさ「だ、だめなのですよっ。あすみは魔法少女を敵視してますが、なぎさは仲良くしたほうがいいと思うのです!」

なぎさ「なぎさたちだって仲良くなれました。魔法少女とは言ってももとは人間なのです。ほかのひとたちと変わりなく……」

なぎさ「なぎさには、魔法少女だからってそんなに悪い人がいるとは思えません。むしろ、同じ使命を持った仲間なんじゃないのですか?」
514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/18(木) 21:02:48.73 ID:uc+eqb1VO
なぎさ、その考えは甘い
鹿児島名物のかるかん饅頭よりも甘いぞ
515 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 21:41:15.74 ID:55VJKCSg0

あすみ「変わりなく……ね」

なぎさ「はい。なぎさは昨日みたいなことはもう起きて欲しくありません。そのためにも、助け合わないといけないのですよ」

あすみ「あー、昨日のねえー……それで張り切っちゃってんのか」

あすみ「まあ、仲良くなれるかっつったら相手次第じゃない? まずは警戒するに越したことはない」

なぎさ「こっちから信じないと仲良くなれるものも仲良くなれません!」

なぎさ「それでもなぎさは仲良くしたいですが、そういう人ばっかりじゃないのはなぎさも知ってますから……」


 あすみはどうしてこう頑ななのでしょうか。

 あすみは寂しくないのでしょうか?

 なぎさはあすみのおかげで少し寂しくなくなりました。それに、はじめて後輩に会った時だって……。


あすみ「……別に敵意向けろって言ってんじゃないよ。アンタが今言ったのとは逆で、誰彼構わず敵意向けてたとしてもいつかやり返されるしそりゃアホだ」

あすみ「ま、よほど自分の実力に自信があればそれでもいいかもしんないけどね?」

なぎさ「だめですって!」

あすみ「でもさ、変わらないって言ったけどさ、そもそも人間だってクズくらいいるんだよ」


 あすみはリビングでついているテレビの画面に目を向けました。

 ……やってたのはちょうど殺人事件の報道でした。


あすみ「こうして見えてる範囲なんてほんの一握りだよ。世の中の人がみんないい人なら防犯なんて必要ないしいじめも起きない」

なぎさ「で、でも……魔女退治は人助けの活動なのです。悪い人が契約できますか!?」

なぎさ「それに、みんななぎさたちと変わらないくらいの普通の女の子なのです。悪い事しようとしてる人がいたとしたら、止めてあげるのが仲間ってものですよ!」

あすみ「…………」


 なぎさが熱弁すると、あすみはそれ以上言い返してきませんでした。

 しぶしぶって感じですが……。


あすみ「……買い物行くでしょ? 早くしないと夜になるよ」


 あすみに言われて思い出しました。すっかり忘れかけていたのです。

 出会ってもいない魔法少女のことなんて、今話しててもしょうがないのかもしれません。

 なにせ、なぎさが契約してから見滝原で出会った魔法少女なんて、まだ二人だけなのですから。次の出会いがいつになるかもわかりません。


なぎさ(……でも、あすみももっと仲良くしようとしてくれたらな)

516 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 21:53:58.64 ID:55VJKCSg0
――――
――――


なぎさ「お買い物、お買い物♪ そういえば、あすみの得意料理ってなんですか?」

あすみ「得意料理?」


 返事がなかなかかえってきません。


なぎさ「あのー、やっぱり料理できないのです……?」

あすみ「違う! ……まあ、何作るかは決めないとね。で、アンタは何食いたいの」

なぎさ「それはなんでも作れるってことで!?」



・リクエスト
 自由安価

 下2レス
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/18(木) 22:08:47.90 ID:tNAviXB10
あすみ、やっぱりこの時点では料理あまり出来ないのかw

ここは無難に野菜炒めカレーではない普通のカレーライス
518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/18(木) 22:09:40.82 ID:uc+eqb1VO
??
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/03/18(木) 22:10:41.23 ID:uc+eqb1VO
文字化けした
安価517
520 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 23:06:45.23 ID:55VJKCSg0


なぎさ「じゃあ、今晩はカレーがいいです」

あすみ「うん、そうだね」

なぎさ「だってちゃっかりルー持ってますし。なぎさが何と言ってもカレーにする気でしたよね?」

あすみ「一応聞いてやるつもりはあったけど、あんまりご大層なものを言われても無視する気だったよ」

あすみ「目的忘れた? ただ作ってやるんじゃないんだよ。アンタが作れるくらいのにしないと意味ない」

なぎさ「それもそうでした……」


 リンゴとハチミツのパッケージ。みんな大好きカレーライス。

 お手伝いではじゃがいもの皮剥いたくらいかな? なぎさからすれば十分すぎる難易度なのですが。


なぎさ「でも、甘口じゃなくていいですからっ! 子ども扱い、求めてません!」

あすみ「あー、そうだった?」

なぎさ「もしかして……なるほどなるほど、あすみが甘口しか食べられないのですね。それなら無理しなくていいのです!」

あすみ「そんなことないよ。じゃ、こっちにしよう」

なぎさ「あっ!? だからって急に辛口にしなくても!」

あすみ「ほらほら、強がるなよ」

なぎさ「極端なのです」


 ……他の材料も揃えてから帰りました。

521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/18(木) 23:13:40.27 ID:tNAviXB10
カレールーの箱に書かれてる作り方通りに作ると水っぽくなるんだよね・・・
522 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/18(木) 23:39:25.29 ID:55VJKCSg0


あすみ「――じゃあ肉と野菜を一口大に切って。一応包丁は使えるんでしょ」

なぎさ「らじゃー!」


 台所に立つと、野菜の皮を剥いて、あとは切るだけの状態になりました。

 お料理を作るとなると全体像がつかめませんが、ここまでひとつひとつは手伝ったことのある作業でした。

 お米はその間に炊いてくれました。


なぎさ「あの〜。玉ねぎが目に染みるのですが」

あすみ「……魔法。魔法で痛覚切れば」

なぎさ「魔法で? そんなことできるのです……?」

あすみ「出来ると思えば出来るよ、多分」

なぎさ「まあいいのです。せっかく魔法を使わないお料理なんですから、頼らないことにします」

あすみ「まあ、そんならそれで。それより、ヘタのまわり切りすぎ」

なぎさ「あすみって意外と所帯じみてますよね……倹約家というのでしょうか」

あすみ「貧乏魂って言いたきゃ言えば」


 ……とまあ、そういうところを見ると本当に料理が出来ないってことはないのかな―と思ったりしますが、

 豪勢な料理を作る感じイメージからも離れていきます。


あすみ「全部切れたねー。じゃああとはタイマーでもかけて待つか」

なぎさ「煮えたら終わりなのです?」

あすみ「ルーも溶かしてね。またちょっと煮たら」

なぎさ「たしかにこのままじゃ肉野菜スープですね」

あすみ「味つけ変えれば別の料理になるってことだよ。レパートリーが増えたね」

なぎさ「なるほど、これが応用ってやつなのですね。初めてすぐに応用編がわかるなんて、なぎさも料理の腕がランクアップした気がするのです」

あすみ「……まあ、野菜とかまだ残ってるしやってみたら」

523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/03/18(木) 23:46:34.93 ID:tNAviXB10
肉は何だろ?ここはチキンで
524 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/19(金) 00:14:46.15 ID:i4cDoZ5k0


 タイマーが鳴ったあと、鍋にルーを溶かしてさらに煮込むと良い匂いがしてきました。

 まさにこれはカレーのにおい! とろみ! よそってみても食べてみても、まさしくカレーなのです!


なぎさ「ちゃんとカレーですよ! 美味しいチキンカレーなのです! 二人で食べてもまだ鍋にありますね」

あすみ「四皿分だからね。残せるくらいがいいって言ってたでしょ」

なぎさ「はい。これを見せて、なぎさも料理できるんだよってお父さんに自慢して、安心してもらって……」

なぎさ「……できたら食べてもらいたいな。今日も遅いのかな」


 魔法で作ったお菓子はわかりませんが、これは普通のお料理です。

 きっとそんなに持つわけじゃありません。


なぎさ「あっ、そうだ、今度はお休みの日になら……!」

あすみ「……まあ、頑張れば」

なぎさ「それにしても、あすみは本当にお料理できたのですね。疑ってごめんなさいなのです」

あすみ「出来るって最初から言ってたでしょうが」

なぎさ「なぎさも火とか使っても大丈夫なのでしょうか? 今まで包丁もお母さんや先生が見てるとこでしか使ってないのです」

あすみ「危ないからって理由なら私達には理由にならないでしょ。最悪怪我したって治せるんだし」

なぎさ「ああ……魔法ですか。そういえば料理の最中にも言ってましたね」

なぎさ「あすみは料理しないって言ってましたが、普段はどうしてるのです?」

なぎさ「ボロクソ言ってましたが、結局出来合いや外食です?」

あすみ「いや…………食べてなかった。面倒くさくて」

なぎさ「ええ!?」

あすみ「アンタは魔力でお菓子を出せるでしょ。私は怪我を治す要領で魔力そのもので補うってだけ。同じようなものじゃない?」


 あすみは魔法の力をかなり身近に考えてるみたいです。

 なぎさもお菓子作りの魔法は普段の生活にも取り入れてました。

 でも、それ以外にはやっぱり魔法は戦うために使うものってイメージのほうが大きいのです。

525 : ◆xjSC8AOvWI [saga]:2021/03/19(金) 00:37:29.88 ID:i4cDoZ5k0


なぎさ「でも……それはやっぱり味気ないですよ。それに、『魔法のケーキは魔力の無駄だー』って言ってませんでしたっけ?」

あすみ「今いるとこキッチンもないし。てかあったとしても、空腹を満たして栄養補給するだけの行為って考えたら一人じゃ面倒になるよ」

あすみ「大体、飯買うための金得るのだって魔力使うのにさ」

なぎさ「そういえば、家族がいないって……。自分でお金を稼いでるのです? 魔法を使ってお仕事でもしてるのですか……?」

あすみ「……。まあ、そんなとこ」


 あすみはどこか影のある様子で言いました。まるで詳細は語りたくないというように。

 真実はわかりませんが、あまり良い雰囲気ではありませんでした。そもそもあすみもまだお仕事なんてできない年齢。

 なぎさも後ろめたい世界にある仕事の事情はろくに知りませんが、悪い方に想像は膨らみます。


なぎさ「まさか、けしからんことでもして稼いでるのでは……!?」

あすみ「何想像した? 魔力だよ? 身体は使ってないからねー?」

なぎさ「い、いえ……! とにかくまた一緒にお料理しましょう。あすみもまた新しいお料理教えてください!」

なぎさ「そして応用を身につけて、なぎさはいつかあすみを超えてみせるのです!」

あすみ「……また気が向いたらね」


 そう言うと、あすみもまんざらではなさそうでした。一人だから面倒くさくなってしまうのです。

 それに……なぎさも一人は嫌でした。


――――――
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