このスレッドは1000レスを超えています。もう書き込みはできません。次スレを建ててください
【安価でのわゆ】久遠陽乃は勇者である【3頁目】
- 613 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 21:59:06.13 ID:KVg2xD8TO
- 2
- 614 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:04:37.11 ID:F2TtaE+9O
- 1
- 615 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:15:11.89 ID:Zm1Daanno
-
陽乃「やっぱり、私が一人で担当するわ」
珠子「それは駄目だって」
陽乃「伊予島さんだって、合理的だって言ってるわよ」
陽乃は呆れたように言って、珠子を見る。
優しくない、鋭い視線に球子は目を見開いて睨み返す。
陽乃「言ったはずよ。どうしても止めたいなら、戦いましょうって」
歌野「みーちゃんの気持ち、わかってもらえない?」
陽乃「知らないわ」
歌野も、やや苛立ちを感じる声色で言うが、陽乃は態度を変えない
歌野「久遠さん一人に任せて、傷ついて欲しくないのよ」
陽乃「だから、何? 私以外の人が参加したら誰も傷つかないとでも?」
水都「でも、久遠さん一人よりは被害が少ないと思います」
陽乃「どうだか、ね。個別に傷を負う分、被害はむしろ多いと思うのだけど」
陽乃はもう話は終わったとでもいうかのような様子で、
小さく、ため息をつくようにしてみんなを見る
陽乃「向こうに戻るなら、無駄に戦力減らさずに最低限で対処するべきじゃないかしら?」
- 616 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:23:03.84 ID:Zm1Daanno
-
杏「……そうですね」
それは間違いない。
そして、陽乃なら単独で総攻撃をどうにかできるだけの力があるのも事実。
人数的には、それが最低限だ。
戦力としては過剰だが。
一般の人々を守りながらの道中となるのなら、
戦力重視ではなく、人数的な温存を目標にして総攻撃を乗り越えるのが一番だ。
陽乃のやろうとしていることは間違っていない。
感情的に受け入れがたくても、正しい。
水都「なら、せめてうたのんと協力するとか」
陽乃「いらない」
水都「っ……」
陽乃「とにかく、私一人でやるから。出てくるなとは言わないけど、貴女達の安全は保障しないわ。巻き込むからね」
- 617 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:27:09.62 ID:Zm1Daanno
-
珠子「本気なんだな」
陽乃「当たり前でしょう。冗談で言う必要あるの?」
珠子「ないけどさぁ……」
珠子は諦めたのか、首を振る。
陽乃はこうと決めたら実施する。
それは人を殺すこ都もあるし、単身で逃げ出して野宿することもあるし、
こうして、諏訪にまでくるようなこともある。
それを見てきたからこそ、珠子と杏は止められないと思わざるを得ない。
なにより、
それが実際問題一番いい結果が得られると……分かっているからだ。
反対理由なんて、感情以外の何物でもなかった。
陽乃「話は終わりね。止めたければ力づくでどうぞ」
自分より強い人がいるなら、
陽乃の言っていることは誤りだ。
素直に引き下がるしかない
だが、それを証明できないのなら、考えは変わらない
- 618 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:29:40.84 ID:Zm1Daanno
-
↓1コンマ判定 一桁
0,4,7 歌野「なら、私と戦いましょう」
※それ以外は交流終了
- 619 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:32:10.06 ID:RUHeMCfMO
- あ
- 620 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:36:05.18 ID:Zm1Daanno
-
√ 2018年 8月15日目 夜:諏訪
01〜10 杏
12〜21 球子
34〜43 九尾
56〜65 水都
89〜98 歌野
↓1のコンマ
※ぞろ目 全員(九尾を除く)
※それ以外は通常
- 621 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 22:37:07.43 ID:F2TtaE+9O
- あ
- 622 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:52:04.78 ID:Zm1Daanno
- √ 2018年 8月15日目 夜:諏訪
どこかで、虫が鳴いている。
夏の風物詩といえば、季語にでさえ選ばれる蝉だろうけれど、
夏の夜に聞こえる声はそれだけではない。
蚊取り線香の煙が漂う。
時々、風に流されていくのを横目に、陽乃は明かりのない夜の自然に目を向ける
陽乃「……なに?」
九尾「主様が力を本気で扱うなら、あんな娘ども死ぬぞ」
陽乃「もちろん、手は抜くわよ」
すぐ隣に腰掛ける、金色の長い髪をなびかせる和装の女性
赤い瞳は陽乃を見ずに、手元の小さな器に向いている
陽乃「なにそれ」
九尾「くふふっ、飲むかや?」
陽乃「……お酒は嫌いだわ」
近づけられた器に揺れる水面
感じた鼻をつくようなにおいに、陽乃はさっと顔を背けた
- 623 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 22:57:09.46 ID:Zm1Daanno
-
九尾「眠らぬのかや?」
陽乃「眠くないのよ」
夜だって言うのに、陽乃は全く眠くなかった。
体の中に有り余る力が、睡眠欲求をはじいてしまっているらしい。
その原因とも言える諏訪の神々のおかげで、力はほとんど自由に使える
だからと言って、全力行使などは行うつもりはない。
殺して、どうするのか。
陽乃の力は、代償がある分強力だった。
その代償の部分が取り除かれたのだから、
もはや、化け物という言葉が完全に否定できなくなった。
陽乃「挑んでくると思う?」
九尾「ふむ……」
九尾は手の中の器に口をつけて、小さくのどを鳴らす。
九尾「主様の判断は誤っておらぬ。きゃつらが愚か者でなければ、挑むこともあるまい」
陽乃「そう……」
1、貴女なら、ここに残る?
2、どうしたらいい?
3、お母さんは無事だと思う?
4、通信設備、どうにかできるかしら
5、できるだけ突き放してきたのに……
↓2
- 624 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:00:06.97 ID:RUHeMCfMO
- 2
- 625 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:00:09.95 ID:F2TtaE+9O
- 5
- 626 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/09(日) 23:02:26.56 ID:Zm1Daanno
-
ではここまでとさせていただきます
明日も可能であれば、通常時間から
- 627 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/09(日) 23:13:04.92 ID:RUHeMCfMO
- 乙
ちょっと心が痛むけどお互いに考えをぶつけ合えるようになっただけ一歩前進と見るべきか
ただあとで仲直りはしておきたいな
- 628 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 06:04:51.30 ID:jGUECwwcO
- 乙
九尾との交流が終わったらいよいよ総攻撃回になるの?
- 629 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:05:56.15 ID:bHUA9sIjo
- では、少しだけ
- 630 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:06:22.16 ID:bHUA9sIjo
-
陽乃「できるだけ突き放してきたのに……」
どうしてこうなったのか。と、
疲れたように吐き出す陽乃は、窓の縁に腕を敷いて、顔を伏せる。
九尾「むしろ、そうしてきたからじゃろう」
九尾は一口お酒を含んでから、静かに答える。
こくりと、のどをお酒が通っていく音が、はっきりと聞こえた。
九尾「真に拒むならば、突き放すことさえ不要じゃ。出方を待たずに己から手を出してもよかったやも知れぬ
主様の境遇を最初から告げて、関わるなというてもよかったやも知れぬ」
風が吹いて、九尾の不可思議な匂いを感じる。
あまり嗅いだことのない匂いだけれど、嫌ではなく
むしろ、好ましく感じられる匂い。
陽乃「なら、今からでも間に合うかしら」
九尾「無駄じゃろうな。あの小娘どもの様子を見たであろう? すっかり、入れ込んでおるな」
くつくつと、小ばかにしたように九尾は笑って
九尾「あの日、すぐにでもあの地を出て行くべきじゃったな。そうすれば、主様自身の考えそのものに違いがあったはずじゃ」
陽乃「他人を受け入れられるように?」
九尾「ふむ……そうじゃな」
- 631 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 22:25:24.04 ID:bHUA9sIjo
-
陽乃「私が望んでることじゃないわ」
九尾「その望みそのものが変わる」
陽乃「………」
例えば、3年間を諏訪で過ごしていたらどうだっただろうか。
きっと、陽乃にとってはとても穏やかで優しく、温かいものになっていたことだろう。
最初の内は大変だったかもしれないが、
次第に、楽になっていたことだろう。
歌野一人で3年間も生き抜けたのだ
陽乃が加わっていたらもっと楽で、確実だったはずだから。
陽乃「やめてよ。今更だわ」
久遠家を差し出した人々による悪意による、歪み
それさえなければ、向こうだってここまで生き辛くなかったはず。
陽乃のその考えを悟ってか、九尾は「主様」と呼ぶ
九尾「妾は、あ奴らはみな、殺してしまうべきじゃと思うておった。にもかかわらず、主様はそれを拒んだであろう」
陽乃「……なによ。私が悪いって言いたいの?」
九尾「邪魔ならば消せばよい。利用できるものは利用すればよい」
しかし……と、九尾は深く息を含む。
九尾「主様はあまりにも、生温い」
- 632 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 23:17:17.57 ID:bHUA9sIjo
-
九尾「そんな主様じゃからこそ、あの小娘どもがついて回るのじゃろう」
陽乃「なら、今から変わればいい?」
九尾「さて……それでどうにかなるものとは思えぬがのう」
陽乃は腕に伏せながら、九尾の方に顔を向ける。
九尾は、含みのある表情を浮かべていて、
いつ出したのかも分からない、お酒の入った瓢箪のようなものから、器に注ぐ。
九尾「主様は強く拒み、望んだ藤森水都からあんなにも詰め寄られたからのう」
陽乃「……ええ」
九尾「あの小娘にとって主様は放っておけぬ存在になっておる。おそらく、ほかの小娘どもにも」
九尾の赤い瞳がようやく、陽乃へと向けられる
人工的な、淡い光だけの室内にぽぅっと……金色の光が浮かぶ。
それに、意識が持っていかれそうになる
九尾「妾が手を打ってやってもよいぞ?」
九尾は、怪しい笑みを浮かべて
九尾「無論、主様が諦めるというのも手じゃが」
1、諦めるなんて無理よ
2、貴女、何するの?
3、貴女に任せたら、それこそ終わりよ
4、そうね、諦める方が、楽かも
5、何も言わない
↓2
- 633 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:21.31 ID:lRA+V7I+0
- 2
- 634 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:21.98 ID:Z9BazS/DO
- 3
- 635 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:25.46 ID:zjUy5x/I0
- 4
- 636 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:19:43.05 ID:5smNC3940
- 4
- 637 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/10(月) 23:20:09.92 ID:32EDvYvkO
- 4
- 638 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/10(月) 23:38:35.66 ID:bHUA9sIjo
-
陽乃「貴女に任せたら、それこそ終わりよ」
陽乃は睨むように言ったが、
九尾はまるで気にしていないのか、平然と笑う。
九尾「主様が望む、静寂を与えるだけじゃ。終わることは終わるが、なに、主様に害はない」
陽乃「本気で言ってるの?」
九尾「いかにも」
九尾は、本気だ。
他愛もないことを語っているみたいに、表情は柔らかい。
そうして、こくりと、お酒を口に含む
九尾「ふむ……やはり、ただ酒は口に合わぬな」
器が消え、瓢箪が消え、
そして、九尾の女性としての姿が狐へと変わる。
九つの尾をもつ、妖狐に。
九尾「主様は人間じゃな。あまりにも、人間じゃ。有象無象が主様を化け物と呼ぶ意味が解らぬ。愚者然とした、見事なまでに生易しい小娘でしかないというのに」
- 639 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 00:07:56.20 ID:tdD/zRTwo
-
金色の毛並みは、不自然なまでに輝いて見える。
それに隠れる、深紅のルビーのような瞳が陽乃へと向く
九尾「妾ならば排除できる。主様が望んでやまぬ、静寂を与えられる。だというのに、拒むのかや?」
陽乃「ろくなことにならなそうだし」
九尾「くふふっ、望むものを手に入れるためじゃぞ? 多少はよかろう」
九尾は笑っているが、冗談で笑っているわけではない。
九尾なら本当にろくでもないことをする。
しかも、九尾自身はそれを、当たり前で、必要なことだと思っている。
九尾「何もせずにいたおかげで、今、主様が逃げることになっておるのじゃろう?
本当に、現状を変えたいのであれば、行動すべきではないかや?」
陽乃「それはそうだけど……戦力を削られても困るのよ」
九尾「ふむ。それが言い訳かや」
陽乃「言い訳って」
九尾はぺろりと舌を出して、目を細める。
からかっているのだろうか。
陽乃「私は生きていきたいの。死にたくないのよ。そのために利用できるものは利用するの」
九尾「じゃが、総攻撃は主様が一人で対応するのじゃろう?」
くくっっと、九尾ののどが鳴る
九尾「主様は言い訳ばかりじゃな。素直に言えばよい。守ってやれぬと、死なれたくないと」
陽乃「そんなじゃないから」
九尾「じゃが、小娘どもは……妾と同じように考える。主様が何を言おうと、もう遅かろう」
- 640 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 00:11:23.57 ID:tdD/zRTwo
-
では途中ですがここまでとさせていただきます
明日は可能であれば少し早い時間から
- 641 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 00:18:10.57 ID:aV/H/nOMO
- 乙
総攻撃が近いのか
どういう風に転がって行くのか気になるな
- 642 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 00:20:13.16 ID:oqdCTzrLO
- 乙
陽乃さんもそろそろ心を開かないといけない時が来てるな
いっそ単独戦闘も撤回して協力を求めるか
- 643 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 21:10:45.16 ID:tdD/zRTwo
- では少しだけ
- 644 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 21:13:42.98 ID:RAPpnmjVO
- かもん
- 645 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 21:13:56.66 ID:tdD/zRTwo
-
陽乃「……もう遅いんだ」
九尾「さっきの反応を見れば、言うまでもなかろう」
陽乃が単身で対応するという話。
明らかに、それが合理的だとわかっているのに、
みんなは感情でそれを拒んでいた。
みんな、陽乃に寄り添うつもりなのだ。
陽乃は鬱屈な様子で、ため息をつく
陽乃「どうして、こうなっちゃったのよ……」
九尾「また繰り返すかや?」
陽乃「もういいわよ」
九尾は陽乃がそうしてきたからこそだといった。
突き放すような姿勢が、
むしろ、杏たちの気を惹いてしまった。
いいや、杏に関しては、助けてしまった時点で駄目だっただろうか。
かといって、見捨てられる陽乃でもない
- 646 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:01:30.05 ID:tdD/zRTwo
-
九尾「本当に突き放したいならば、生半可に付き合わぬほうが良い」
陽乃「解ってるわよ」
好きにしたら? とか、勝手にしてとか、
そういう態度をしていたのがダメだったらしい。
そういうのも含めて、初めから突き放しておくべきだったし、
諏訪に来るとき、何が何でも球子たちを置いてくるべきだった。
陽乃「……貴女のせいだわ」
陽乃は、おもむろにそう呟く。
陽乃「貴女が、向こうにたどり着けるかわからないなんて脅すから」
九尾「くふふっ、そうじゃったのう」
九尾はあくまで忠告をしただけだ。
そういわれたからって、気にしなければよかったのにと言われれば、それで終わってしまう。
陽乃「でも、それでも藤森さんたちはどうしようもなさそう」
諏訪の人々は、向こうでの陽乃を知らなかったから
説明したって、理由があった。なんて、言われる始末だし。
1、なるようになるしかないわね
2、九尾は諦めた方が良いって思う?
3、私が、死なせたくないからって言ったって、逆に言われるだけでしょう?
4、何も言わない
↓2
- 647 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 22:03:55.21 ID:RAPpnmjVO
- 1
- 648 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 22:04:14.33 ID:3YU3I4hZ0
- 3
- 649 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:44:36.43 ID:tdD/zRTwo
-
陽乃「私が、死なせたくないからって言ったって、逆に言われるだけでしょう?」
投げやり気味に、陽乃は漏らす。
九尾は死なせたくないと素直に言えばいいと言ったけれど、
陽乃はそうは思わなかった。
歌野達だって、同じように返してくる。
死なせたくないなんて、言わなくてもあれだったのだから。
九尾「そうじゃな。そうなるやもしれぬ」
九尾の尻尾がふぁさりと、風を巻き起こす。
九尾「じゃが、少しは思いとどまらせることもできるじゃろう」
陽乃「そうかしら」
九尾「小娘どもが、主様に抱いていることと同様のことを主様が述べることに意味がある」
- 650 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 22:56:19.38 ID:tdD/zRTwo
-
九尾はそういうと、九つの尾を陽乃の体を囲うように動かす。
金色の毛並みがきれいな九尾の尾
暗い部屋の中でも、それ自体が発光しているかのように、明るく見える。
それは、とても暖かい。
陽乃「なに? 何か、変じゃない?」
九尾「妾は何も変わらぬ」
陽乃「……そう?」
九尾の赤い瞳を見るが、九尾はその瞳を陽乃へとむけてはいない。
1度、2度、瞬きをして。
九尾「単身で対応しようと、主様が死ぬことはなかろう」
陽乃「ええ」
九尾「じゃが、問題は主様の影響を結界が受けていることじゃな」
陽乃「壊れる……わけではないんでしょう?」
九尾「うむ」
九尾は息を吐くように頷く。
九尾「主様のおかげで、十分に強固な結界となっておる。
それゆえに、ここには手を出せなくなるやもしれぬと、思うてな」
- 651 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:05:22.33 ID:tdD/zRTwo
-
九尾の赤い瞳は、外の暗闇を見つめている。
細く、鋭く、じっっと……見つめている。
その先に何かあるのかと陽乃は顔を顰めて目を向けたが、
光のないその場所には何も見えなかった。
九尾「四国の方に、きゃつらが手を出す可能性がある」
陽乃「諏訪を諦めて、四国を攻める可能性があるのね……」
バーテックスは総攻撃の準備を進めてきていた
だが、それは陽乃達がいなかった頃からの計画だろうし、
結界がだんだんと弱まりつつあったからこそ、実行できたことなのだろう。
諏訪の神々から陽乃へと力が移ったことで、
もしかしたら、総攻撃を諦めて、諏訪を諦めて、
戦力の削がれた四国を襲撃するのではないかと、九尾は考えているようだ。
九尾「バーテックス……じゃったか。きゃつらが、主様の力が四国から諏訪へと移動したことを察知しておるならば、
明らかに異質な力を帯びている場所に手を出すのは控える恐れがある」
もちろん、いろいろと考える知能があるなら。と、九尾は言うが、
その表情はいたって真剣だ。
やがて、赤い瞳が陽乃へと向けられる。
九尾「主様一人にせよ、小娘どもを連れるにせよ、もし、しばらく襲撃がなければ、先手を打つ方がよいやもしれぬ」
陽乃「……そう、ね」
九尾の忠告
それは、頭の片隅に置いておかなければならないものだ
- 652 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:12:02.03 ID:tdD/zRTwo
-
√ 2018年 9月1日目 朝:諏訪
01〜10 水都
34〜43 杏
56〜65 歌野
67〜76 襲撃
87〜98 球子
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
- 653 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 23:12:50.48 ID:RAPpnmjVO
- あ
- 654 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/11(火) 23:20:56.94 ID:tdD/zRTwo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
1日のまとめは再開時
9月突入
- 655 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/11(火) 23:31:29.54 ID:RAPpnmjVO
- 乙
長くて濃い8月がようやく終わったけどまさか総攻撃こないままだとは…
そして早く四国に戻らないと大変なことになりそう
- 656 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 01:44:44.36 ID:Cxoqs5vMO
- 乙
待つか仕掛けるか
それともいっそ一息に四国まで移動するか
- 657 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:06:06.03 ID:R1eDlF6/o
-
では少しだけ
- 658 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:08:25.02 ID:R1eDlF6/o
-
■2018/08/14 分
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(触らない、余計な事、単独行動、御柱倒壊)
・ 藤森水都 : 交流有(単独行動、神託、特殊1、3年間、時間があれば、放っておいて、御柱倒壊、特殊2)
・ 土居球子 : 交流有(単独行動、御柱倒壊)
・ 伊予島杏 : 交流有(単独行動、特殊1、諏訪の生活、そう、特殊2、説明する、どうしてそこまで、好きにしたら、御柱倒壊)
・ 九尾 : 交流無()
√ 2018/08/14 まとめ
白鳥歌野との絆 50→52(普通) ※特殊交流1
藤森水都との絆 65→68(良好) ※特殊交流5
土居球子との絆 59→59(普通)
伊予島杏との絆 70→75(良好) ※特殊交流2
九尾との絆 66→66(良好)
■2018/08/15 分
1日のまとめ(諏訪組)
・ 白鳥歌野 : 交流有(勇者としてすべきこと、今後、諏訪を出る、不満、単身突撃、合理的だから、特殊2、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 藤森水都 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊6、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 土居球子 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊1、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 伊予島杏 : 交流有(単身突撃、合理的だから、特殊3、戦う、母、やっぱり一人で)
・ 九尾 : 交流有(力の返却、祟り、突き放してきたのに、任せられない、死なせたくないといっても)
√ 2018/08/15 まとめ
白鳥歌野との絆 52→55(普通) ※特殊交流2
藤森水都との絆 68→70(良好) ※特殊交流6
土居球子との絆 59→60(普通) ※特殊交流1
伊予島杏との絆 75→76(良好) ※特殊交流3
九尾との絆 66→68(良好)
- 659 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:17:45.25 ID:yV9+MiRsO
- 絆値下がってなくて良かった…
- 660 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:20:37.66 ID:R1eDlF6/o
-
√ 2018年 9月1日目 朝:諏訪
陽乃は、一人、いつもの空き部屋の畳の上で寝転がる。
天井を見つめ続けて数分、ゆっくりと目を閉じる。
陽乃「……」
9月に入っても、バーテックスによる襲撃は一度もなかった。
水都はもちろん、諏訪の神々の代理となった陽乃にも、襲撃が行われるような兆候の一切も感じられず、
杏達が様子見で結界の外に出てみたこともあるが、無数のバーテックスの姿はあっても、
襲撃してくるような様子は見られなかった。
だが、その数は増えて行っている。
歌野と水都を加えて、勇者と巫女で移動するなら切り抜けることも可能かもしれない。
だが、一般人を連れてとなると、突破はまず間違いなく被害が出ることになるだろう。
日に日に、通信の状態も悪くなってきている。
陽乃が代理となったことで諏訪の力こそ強くなったが、
改善には至っていない。
陽乃が単独で攻めに転じる……という話は、
みんなから反対されてしまっている。
- 661 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 20:52:15.50 ID:R1eDlF6/o
-
九尾が言っていたように、諏訪の残された土地に対する恩恵は、通信状況の悪化に反して豊かになっている。
豊穣の神とされている宇迦之御魂神の力による影響だ。
陽乃は常に力を使うことになってしまっているが、
その分、諏訪の神々に対する信仰心が回復を促進させて、陽乃に影響は出ていない。
それどころか、力が有り余っている。
その余剰な力が、さらに結界を強めているのだろうか。
守りたいだなんて、これっぽっちも思っていないのに。
陽乃「……ん」
歌野と水都は畑仕事に出ていて、
珠子と杏は、襲撃が来ても平気なようにと、待機している。
待機は交代制だ。
だが、陽乃は基本的に参集殿の中にいる。一度、歌野と水都に無理矢理、畑に連れ出されたが、それくらい。
陽乃「……」
今の諏訪は、平穏そのものだ。
外の世界では白い異形が、手から離れた風船のようにうようよと漂っているけれど。
だけど、絶対に続かない。陽乃はなぜか、そう思う。
四国もまだ、襲撃を受けていないようだが、今日も何もないとは限らない。
1、杏、珠子と交流
2、歌野、水都と交流
3、九尾を呼ぶ
4、出かける
5、イベント判定
↓2
- 662 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:53:23.18 ID:rKTf7IU50
- 5
- 663 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 20:53:49.46 ID:yV9+MiRsO
- 1
- 664 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 21:34:52.29 ID:R1eDlF6/o
-
杏と球子は参集殿の中、みんなで共有している部屋で待機している。
陽乃がいる部屋から、少し離れた場所にあるその部屋からは微かに声が聞こえる。
陽乃「……」
陽乃は暇を持て余しているが、杏と球子も同じようだ。
部屋から出て、やや狭い廊下を進む。
通路の、ガラス張りのドアからまばゆい光が差し込んでいる。
9月になっても、まだ温かい。
球子「このままだといいんだけどなぁ」
杏「うん……でも、何もないのが逆に怖いよ」
部屋から聞こえてくる二人の声
気にせず、部屋のドアを開けると、二人が振り返った。
球子「またいたのか」
陽乃「行く場所もないし」
杏「なら、どこか散歩に出てもいいんですよ?」
行先なんて考えずに、ぶらぶらと。
そうしてもよかったという杏の困った表情に、陽乃は首を振った。
- 665 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 22:01:23.75 ID:R1eDlF6/o
-
陽乃「適当に歩くなんて、浪費もいいところだわ」
球子「元気が有り余ってるくせに、何が浪費だよ」
杏「たまっち先輩っ」
球子は悪びれた様子もなく、
畳の上に四肢を投げ出し、ごろんっと転がって
球子「昨日も、結構な時間まで起きてたろ」
陽乃「そんなことないわ」
球子「……2時は過ぎてたぞ」
陽乃「……」
じっと、球子は陽乃を見つめる。
陽乃はそれをまっすぐ見返して、見下ろして、息を吐く。
陽乃「だから?」
球子「浪費した方が良いんじゃないのかって話」
杏「久遠さん、そんな時間に寝てるんですか?」
陽乃「まぁ、そうね」
杏「それで、いつもわたし達より早く起きてるって……」
- 666 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 22:24:55.80 ID:R1eDlF6/o
-
陽乃「そこまで早くはないわよ」
早いといっても、歌野と水都が起きる時間とそんなに変わりがない。
畑の手入れをするために起きる二人と同じか、少し遅い程度。
少なくとも、二人が出て行くのを見送れるくらいの時間には目が覚めている。
睡眠時間は……口にすると、杏は怒るだろう。
陽乃「そうね……じゃぁ、一人で結界の外に出てもいい?」
球子「いいわけないだろっ」
陽乃「でしょ?」
球子「結界の中で散歩するとか、いろいろあるじゃんか」
陽乃「ないから、ここにいるのよ」
球子は言い返す代わりに、むっとする。
何か言っても、また何か言い返されるだけだ。
杏は、そんな球子を見てちいさく笑う。
諏訪に来てからも、何度か見た光景。
杏「久遠さんはやっぱり、一人で戦うつもりですか?」
陽乃「それが一番だって、貴女もわかってるでしょ?」
杏「被害が最小限なのは間違いないですけど、でもやっぱり、さすがに総攻撃すべてを委ねるのはないと思います」
1、心配ないわ
2、適材適所よ
3、それで、貴女達の誰かに死なれても困るわ
4、その総攻撃自体が、起こりそうにないのだけど
↓2
- 667 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:30:02.80 ID:pVgm5o/6O
- 3
- 668 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 22:31:11.13 ID:rKTf7IU50
- 3
- 669 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 23:05:18.06 ID:R1eDlF6/o
-
陽乃「それで、貴女達の誰かに死なれても困るわ」
球子「……死ぬと思うか?」
陽乃「最悪の場合は」
いくら勇者とはいえ、
バーテックスに殺されてしまう可能性があるのは、球子もわかっていることだろう。
陽乃は、冗談でもなくまじめに頷く。
諏訪に来る際に戦ったし、
陽乃が寝込んでいるときにも球子達はバーテックスと戦っている。
大したけがもなく、快勝だった。
だが、それが総攻撃ともなれば、余裕など持てるはずがない。
多勢に無勢、物量で押しつぶされることは間違いない。
それは陽乃にも言えることだが、
神々に対して、悪影響を与えられる陽乃の力なら、多勢に無勢な状況を打破できる。
素の状態でそれを頼れば、反動で陽乃が大変なことになるが、今はその心配はいらない。
陽乃「特に、二人なんて懐に潜り込まれたら終わりでしょう?」
球子「うぐっ」
杏「たまっち先輩は、投げてなければどうにかできるかもしれないけど……」
球子よりも杏が、辛い。
中遠距離な二人は後方支援が最適だが、総攻撃のような状況ではそんな余裕はないだろう
- 670 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/12(水) 23:19:17.27 ID:R1eDlF6/o
- では途中ですが、ここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 671 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/12(水) 23:34:35.82 ID:MBxvBnONO
- 乙
9月に入って数日たってるからか陽乃さんの反応が多少柔らかくなってる気がする
あとはこの平穏がいつまで持つかだな
- 672 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 00:07:39.77 ID:K8cx7zhK0
- 乙
もっと素直に私もみんなに傷ついて欲しくないってことを主張していこう
- 673 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 21:30:45.05 ID:FzNzQXWXo
- では少しだけ
- 674 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 21:33:47.56 ID:FzNzQXWXo
-
陽乃「言っておくけれど、近づかれても私は守ってあげる気はないわ」
総攻撃では、
勇者の人数に比べて、バーテックスの数は倍なんて話ではない。
一人当たり、とてつもない数を討伐する計算になる。
足手まといに構っている余裕はないと、陽乃は首を振る。
なにより、陽乃が単身で対処すると言っているのに、
それに反して、出てきたのならなおのこと。
自分から、死ぬことを選んだ人を守ってあげる義理はない。
陽乃「あっという間に囲まれてなぶり殺しにされるわよ」
気を抜いても抜かなくても、関係なく。
圧倒的な物量に、なすすべなく飲み込まれる。
上から押しつぶされ、頭を食われ、腕を食われ、足を食われる。
それも、生きたまま。
陽乃は、ふと、顔を顰める。
その光景は紛れもない、地獄だ。
陽乃「私は、生き残るために最善を尽くしたいと思ってる
貴女達は違うと言うけれど、私は死ぬ気はないし、今後も含めて確実な生存戦略を立てているだけよ」
陽乃一人で対処不可能だというなら、球子たちの参戦も致し方がない。
だが、そうではないのに、無理に参戦させて今後の生存率を低下させるのは好ましくない。
- 675 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 21:57:19.15 ID:FzNzQXWXo
-
陽乃「解っていると思うけど、貴女達が死ぬと完全に取り返しがつかなくなるの」
今でも取り返しがつくとは思っていないし、
大社や人々からの印象を少しでも良くしたい……なんて、甘い考えはもう、捨てたつもりだ。
だが、それでも。
陽乃は、2人に死なれては困るのだ。
ただでさえ少ない戦力が、より少なくなってしまうから。
球子「そりゃそうだけど」
球子にしては、小さな声。
球子は寝転がってだらしなかった姿勢を正して、顔を上げる
球子と杏は、大社からしても死なれては困る存在だ。
けれど、陽乃は。
陽乃が死んだ場合、悲しむ人は少ない。
むしろ、ようやくかと、祝杯が挙げられるのではないかとさえ、思える。
今の、壊れてしまった世界はそうなってしまっている。
3年前、陽乃が見逃した人々の流布した悪意はもはや絶つことができないほどに広がってしまったから。
- 676 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 22:43:49.25 ID:FzNzQXWXo
-
杏「もし、私たちのどちらかが命を落とせば、久遠さんは勇者殺しの汚名を着せられることになるかもしれません」
陽乃の体面……は、もう、どうにもならない可能性はある。
歌野達を四国に連れ帰ったとしても
その功績は……杏と球子、そして歌野と水都のものになるかもしれない。
杏「でも……正直、戦力的には久遠さんを失うのが、最も大きな損失です。それこそ、取り消しがつかないことになります」
球子「諏訪の神様の力さえ、貰えるような勇者だもんな」
陽乃「欲しければあげるわよ。あげられればね」
ため息をつく陽乃を、球子は心配そうに見つめる。
冗談めかした声色ではあるが、本当に、理不尽に授けられた力だ。
選べるなら、受け取らなかったと言うくらいに。
陽乃「で、だから、なに? 私を温存して貴女達が死ぬって?」
杏「っ……」
球子「死ぬとは、言わない」
悔やむ表情を浮かべた杏を一瞥し、球子が代わりに答える。
もちろん、死ぬ気なんて微塵もない。
だが、総攻撃で無事で居られる保証はない。
だから、悔しいのだ。
陽乃に及ばずとも……優れてさえいれば、陽乃に死ぬと言われなかったかもしれないから。
球子「……模擬戦、タマ達とやってくれないか?」
1、嫌よ
2、私に殺されたいの?
3、白鳥さんに頼みなさいよ
4、どうして?
↓2
- 677 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 22:46:22.89 ID:esc1Ha4l0
- 4
- 678 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 22:47:16.12 ID:AXbj0kvAO
- 4
- 679 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 23:06:21.63 ID:FzNzQXWXo
-
陽乃「どうして?」
球子「どうしてって、そりゃ……少しでも長生きしたいからだよ」
陽乃「嘘ね」
陽乃は、球子の目をまっすぐ見つめて断言する。
見透かすような瞳と、力強い言葉
球子は少し物怖じして、目を逸らすまいと歯を食いしばった。
球子「嘘なんてついてないぞ」
陽乃「……そう」
陽乃は、再度否定することなくため息交じりに目を閉じる。
否定はしていない。だが、信じていない。
陽乃は、死にたくないと思っている。生きていたいと思っている。
だが、そんな雰囲気が、球子からは感じられなかったのだ。
生き延びたいというよりも、死に急いでいるような。
陽乃「少しでも長生きしたいなら、勇者なんて肩書を捨てて一般人として生きる方が良いわ。
特に、今回の総攻撃に関しては私に一任するべきよ」
- 680 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 23:36:13.71 ID:FzNzQXWXo
-
球子「それとこれとは、別だ」
陽乃「一緒よ」
杏「少しでも、生存率を上げるため……久遠さんが言った、生存戦略です。私たちなりの」
答えに迷う球子の代わりに、杏が答える。
杏は顔を上げている。
陽乃の視線を避けることはせずに、堂々と見つめ返していた。
杏「久遠さんの負担を少しでも軽減し、力を温存させるのが、私たちの生存につながると思います。そのために、強くなりたいんです」
球子「歌野も強いけど、タマたちにとっての脅威になる陽乃に手を借りた方が、経験が積める」
杏の言葉に、球子が乗る。
下手したら、バーテックス以上に陽乃の力は勇者にとっての脅威である。
その力に、しっかりと対抗できるようになれば、
杏達は、バーテックス相手にも優位に立てることだろう
陽乃「……なるほどね」
1、嫌よ
2、白鳥さんに合格を貰ってからにしなさい
3、一理は、あるわね
4、死ぬ覚悟もあるのね?
↓2
- 681 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 23:38:25.71 ID:4i7YwAB3O
- 4
- 682 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/13(木) 23:39:08.90 ID:esc1Ha4l0
- 3
- 683 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/13(木) 23:56:15.31 ID:FzNzQXWXo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば通常時間から
- 684 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 00:05:45.81 ID:JH0lVdQcO
- 乙
陽乃さん無意識に死に場所を探してるかもしれないのか…
死なせない程度に杏たちも戦闘に出さないと陽乃さんが危なそう
- 685 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 04:09:16.06 ID:/xz8G4bM0
- 乙
死に急いでる疑惑は球子では?
- 686 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 20:53:02.50 ID:rkGFjp/2o
- では少しだけ
- 687 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 20:53:39.34 ID:rkGFjp/2o
-
陽乃「一理は、あるわね」
今後も、杏達が勇者として戦っていくつもりなら、
経験を積んで貰って足手まといにならないようになって貰う方が好ましい。
そうして、戦い続けられるようになれば、
結果的に陽乃の生存率が高まる。
当然、負担も減る。
陽乃「正直、手間だから私じゃなくてほかの人でやってもらいたいけれど……」
杏「水都さんの巫女教育もあるんですよね?」
陽乃「……ええ」
球子「水都には優しいのに、タマ達には優しくしてくれないのか?」
陽乃「別に、優しくしてるわけじゃないんだけど」
どうしてもというから、暇なときに付き合ってあげているだけだ。
水都が神託を受けるべき諏訪の神々は、もう、その仕事を陽乃に委ねているため、
水都の巫女としての仕事は、ないといえばない。
陽乃「巫女はともかく、模擬戦なんて疲れるもの」
球子「暇なんだろ?」
球子の突くような視線を、陽乃は睨み返す。
- 688 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 21:10:27.46 ID:rkGFjp/2o
-
陽乃「暇であることと、疲れることをするかは別問題だわ」
杏「ですが、少しは力を使った方が体にいいと思います」
危険なことはして欲しくないけれど、
遅く寝て早く起きる今のような生活は、いずれ体を壊してしまうのではないかと、杏は気にしていた。
諏訪の神々の恩恵によって、体が壊れる心配は、実際にはないのかもしれないが。
杏「わたし達と、久遠さんそれぞれのためになることだと思いませんか?」
陽乃「……」
なることは、なる。
だが、
水都の巫女の件もそうだが、
あれもこれもと引き受けていたら、逆に暇なしになるかもしれない。
最も、生き抜くことを優先するなら、暇なんていらないだろうけれども。
素直に応じて、距離が縮まっただなんて二人が勘違いしてしまうのが、気に入らない。
とはいえ、メリットはある。
1、暇があるときだけよ
2、連日やるのは嫌よ
3、じゃぁ、まずは白鳥さんを倒してからね
4、わかったわ。仕方がないから受けてあげる
↓2
- 689 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 21:12:09.79 ID:HjsuW4s70
- 1
- 690 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 21:13:27.17 ID:AoeLRTNeO
- 1
- 691 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 21:38:49.44 ID:rkGFjp/2o
-
陽乃「暇があるときだけよ。それ以上は譲歩しないわ」
球子「……それって、毎日?」
陽乃「あら、毎日サンドバッグになってくれるなんて、貴女ってばとっても優しいのね」
球子「ひぇっ」
陽乃は、笑顔を浮かべている。
もちろん、作り物のような笑顔でしかなくて。
それを肌に感じてか、球子は少し青ざめた表情で仰け反る
球子「は、陽乃が暇でも、タマ達はほら、暇じゃないこともあるし?」
杏「久遠さん、模擬戦では本気は出さないで貰えますか?」
陽乃「そこは出してもらえますか? って、言葉が聞きたいわね」
陽乃は、神々に対しての、切り札とも言える力を持っている。
本気を出せば、杏達が所持している神樹様の加護を打ち破って直接的にダメージを与えることが可能だ。
とはいえ、それをしたら、軽傷では済まない。
陽乃「伊予島さんはともかく、土居さんは手加減いらないわよね? 前回、私に勝ってるんだもの」
球子「それはそうだけど……殺す気か?」
陽乃「貴女が頑張れば、死にはしないでしょ?」
球子「いやいやいやいや!」
絶対に無理だ! と、球子が叫んだ
- 692 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 22:15:21.62 ID:rkGFjp/2o
-
球子「まず、タマ達が待機の日は駄目だな。いざって時に動けなきゃまずい」
杏「それを言うと、総攻撃がいつ来るかわからないから、できなくなっちゃうけど」
杏は、神妙な面持ちで呟く。
杏「久遠さんも、総攻撃がいつ来るかは、わからないんですよね?」
陽乃「そこまで万能じゃないもの」
神様ではなく、
神様の代理でしかない。だから、いつ襲撃されるかなんて未来予知は、たぶん不可能だ。
陽乃は首を横に振った。
陽乃「このまま、総攻撃がない可能性だってあると思うけど」
球子「だったらいいんだけどな」
陽乃「代わりに、四国が襲撃を受けることになるかもしれないけどね」
球子「だよなぁ……」
どちらにも手を出さないなんてことが、あるのだろうか?
あったらあったで、それは逆に怖い。
何か企み、準備している可能性があるからだ。
陽乃「とりあえず。待機じゃない日に、声をかけてくれればいいわ。場合によっては、私が断るけど」
球子「毎回断るのは駄目だからなっ?」
陽乃「解ってるわよ」
一応は、命にかかわることだ。
適当な対応をする気はなかった。
- 693 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 22:20:25.92 ID:rkGFjp/2o
-
↓1コンマ判定 一桁
0,3,8 杏「久遠さんって、藤森さん都は親しいですよね」
ぞろ目 特殊
※他は交流終了
- 694 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 22:21:21.74 ID:e5QcdhFLO
- あ
- 695 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 22:28:24.91 ID:rkGFjp/2o
-
√ 2018年 9月1日目 昼:諏訪
01〜10 歌野
34〜43 襲撃
67〜76 九尾
87〜98 水都
↓1のコンマ
※ぞろ目 襲撃
※それ以外は通常
- 696 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 22:28:52.52 ID:Or6mh3+s0
- あ
- 697 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 23:06:29.04 ID:rkGFjp/2o
-
√ 2018年 9月1日目 昼:諏訪
陽も登ったお昼時、陽乃は部屋でまた一人になっていた。
杏や球子は一緒にと言っていたが、断った。
水都のこともそうだが、
厄介なことを頼まれすぎている気がする。と、陽乃はため息をついた。
水都からの、巫女教育のお願い
諏訪の神々からの力の譲渡
杏や球子との模擬戦
九尾は何も言ってきていないけれど、
嫌なら嫌といえばよかろう。なんて、影で呆れているに違いない。
陽乃「……ぐうの音も出ないけど」
暇があれば、なんて、意味もない言葉を返し、
そうやって関わり合いを持っている。
陽乃「……」
水都は、毎日のように頼みにきたりはしない。
いつならいいかと聞いてきたりして、ほとんど決まったスケジュールになっている。
球子と杏は、どうだろうか。
陽乃は考えそうな頭を振って、振り払う。
- 698 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/14(金) 23:41:10.52 ID:rkGFjp/2o
-
いつあるのかもわからない総攻撃
諏訪ではなく四国が襲撃される可能性さえある。
しかし、現状は諏訪の周囲にはおびただしい数のバーテックスが集結してきており、
一般人を守りながらの突破はほとんど不可能だと言えるわけで。
かといって、陽乃一人で出て行くのは、みんなが許さない。
陽乃「……」
猶予はきっと、もうない。
後手に回るのは、悪い予感しかしない。
けれど……どうすべきか。
諏訪に籠れるなら、それが一番なのは陽乃もわかっている。
だが、母親が向こうにいる以上はその選択はない。
1、通信の様子を見に行く
2、外出
3、九尾を呼ぶ
4、こっそり、結界の外に出る
5、イベント判定
↓2
- 699 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 23:43:19.08 ID:e5QcdhFLO
- 4
- 700 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/14(金) 23:47:42.34 ID:HjsuW4s70
- 2
- 701 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 00:00:09.68 ID:KsGmZGnIo
- ↓1コンマ判定 一桁
1,7 杏
4,8 水都
※ぞろ目特殊
※他はなし
- 702 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:00:43.19 ID:N8N2snAv0
- あ
- 703 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 00:05:51.62 ID:KsGmZGnIo
-
では本日はここまでとさせていただきます
明日も可能であれば少し早い時間から
- 704 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:07:07.56 ID:N8N2snAv0
- 乙
- 705 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:09:21.77 ID:6vSLx9Li0
- 乙
猶予があるのかもわからん状況だから悩むよな
- 706 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 00:17:03.62 ID:w3arOD92O
- 乙
なんだかんだ言ってやっぱりお人好しなところが見え隠れしてる陽乃さん
そろそろ誰か一人くらい仲良くなって欲しいけど
- 707 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 21:20:16.38 ID:KsGmZGnIo
- では少しだけ
- 708 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:25:47.61 ID:YnAKmBn4O
- よっしゃ
- 709 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 21:29:05.55 ID:KsGmZGnIo
-
廊下に出ると、虫の声がより騒がしくなる。
朝は聞こえた球子たちの声も聞こえないので、
歌野と水都の定期通信に同行しているのだろう。
日々悪化していく通信状態に、まだ、向こうに杏たちの状況は伝えられていない
いや、もう、すでに伝わっていて、この状況なのかもしれないが。
陽乃「……」
みんながいるのは、参集殿の一室
そこから、一番離れた出入り口の方に回って、音を立てないように出て行く。
『盗人のようじゃな』
陽乃「……気づかれたら面倒だから」
球子や歌野は解らないが、
杏と水都は間違いなく、ついていきたいと言ってくる
断っても、ついてくる可能性があるから
見つかるのは避けたかった。
- 710 : ◆QhFDI08WfRWv [saga]:2021/05/15(土) 21:46:51.25 ID:KsGmZGnIo
-
社務所側の出入り口から出て、北側の参道の方に向かう
大鳥居をくぐって、敷地の外へ
住む人のいなくなってしまって、雑草が生い茂る住宅
閉まって開くことのない、土産屋
狭い結界の中でも、かなりの土地が、住人を失ったままなのだろう。
陽乃「……体は、平気そうね」
神社から離れても、体調には問題がなく、
地縛霊のように、神社から離れられないなんてことはないようだ。
もし、万が一そうだったら、大変なことになるけれど。
『主様、目的はあるのかや?』
陽乃「別に、何もない」
『小娘らに、絆されたのかのう』
陽乃「そういうわけじゃないけど」
じっとしていても仕方がない。という点については、陽乃もそう思っていた。
少しくらいの散歩では、体は疲れそうにもないが。
1、諏訪湖の方へ
2、諏訪大社 上社前宮へ
3、学校を覗く
4、適当に歩く
↓2
- 711 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:49:13.78 ID:YnAKmBn4O
- 1
- 712 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2021/05/15(土) 21:50:03.57 ID:eTMKo6760
- 2
474.24 KB Speed:0.8
↑
VIP Service
SS速報R
更新
専用ブラウザ
検索
全部
前100
次100
最新50
続きを読む
スポンサードリンク
Check
荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service)
read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)