小日向美穂「グッバイ、ネヴァーランド」
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11: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:24:35.87 ID:nY0iWbpOO
「うー、寒い」

「今日は今年一番の寒さって言われてるしな。よくジョギングしたもんだ」

 スタジオから出た加蓮はさっきから寒い寒いと同じワードを繰り返している。寒いと言っても暖かくなるわけでも夏が来るわけでもないので手のひらサイズの幸せをお裾分けしてやる。
以下略 AAS



12: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:25:26.98 ID:nY0iWbpOO
 インフルエンザと言っても1週間あれば熱は下がるだろうが、先輩は相当うなされていたらしく丸々2週間熱が下がらず寝込んでいたそうだ。当然その間事務所に来ることはできないし、年末年始の撮影も控えているアイドルに移そうものなら洒落にならないことになる。その間彼が担当していたアイドルを同僚のみんなで分担して面倒見ることになっていた。俺が加蓮の送り迎えをしているのもそういう事情があったのだ。

「それより明日だよ? 美穂へのプレゼント、決めた?」

「あー、まぁ、うん」
以下略 AAS



13: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:27:13.22 ID:nY0iWbpOO
「なぁ加蓮?」

「んー?」

「これ、違うんじゃないか?」
以下略 AAS



14: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:28:03.44 ID:nY0iWbpOO
「それともの使い方を間違えてるぞ。それはそうと聞きたいのだけど、なんで俺が荷物持ちしてるの?」

 一方で俺の両手には彼女の買った買い物袋が増えてゆく。その姿はクリスマス前にプレゼントをかき集めるサンタクロースにも見えただろう。いや、むしろ忖度苦労すというべきか。美穂の誕生日プレゼントを買いに来たはずなのにあれれおかしいぞぉ。ひょっとしたらこの子先輩にも荷物持ちさせてるのか。周囲の視線がやや気になるが帽子と眼鏡とマスクで変装している加蓮には気付いていないようだ。目元と口元を隠せば案外隠し通せるものだったりする。

「仕方ないよ、私マイクより重いもの持てないから」
以下略 AAS



15: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:29:00.45 ID:nY0iWbpOO
「ふんふんふーん」

 ショッピングを心ゆくまで楽しんだ加蓮は満足げにフライドポテトを頬張る。片手にポテト、もう片方の手には参考書を持って。

「テスト勉強?」
以下略 AAS



16: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:30:46.93 ID:nY0iWbpOO
「申し訳ありませんでした。心当たりがありませんが申し訳ありませんでした」

「いきなり謝られても困るんだが」

「申し訳ありません」
以下略 AAS



17: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:32:43.80 ID:nY0iWbpOO
「ハリウッド……」
 なんとなく目指していた憧れだった。だけどこう現実のものとして目の前に差し出されると嬉しさと戸惑いが入り混じった複雑な感情が生まれてしまう。おかげで仕事終わりに買おうと思っていた卵のことはすっかり頭から飛んでいってしまった。
研修期間が1週間程度なら俺は喜んでハリウッドの土産屋に置いてあるオスカー像を買って帰って来た事だろう。未来の主演女優賞小日向美穂、なんて粋なメッセージを送ったりして。それくらいで十分だったのに。
「さすがに長いよな」
 だけど1年となると途端に及び腰になってしまう。言葉の壁は怖くない。アメリカで待つであろう困難も恐れているわけじゃない。だけどどうしても俺の心に強く根付いた存在がいた。
以下略 AAS



18: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:33:24.18 ID:nY0iWbpOO
「んん……」

 ザザーン、ザザーン。アラームの音が部屋に響く。最近のアラームはすごいんだな、波の音と一緒に潮の匂いすらしてくる。というか……。

「暑っ!?」
以下略 AAS



19: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:35:47.45 ID:nY0iWbpOO
「な、なあこれどうなってるんだ?」

「わからないですっ。昨日は本番前にしては珍しく早寝しちゃって、その分早起きできたから少しジョギングしようと思ったら」

 両親の姿はなく悠貴1人だけ。しかも外はなぜか夏模様になっていたからアロハシャツに着替えたらしい。だが話を聞くと俺と違って家はあったみたいだ。
以下略 AAS



20: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:36:47.15 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサー殿! 悠貴殿! ご無事でしたか!」

「亜季!?」

 ジープの運転席から飛び出すように降りた亜季はこの異常事態でも変わらずパッと敬礼をする。あまりにシームレスにされるものだから俺と悠貴もつられて敬礼してしまう。
以下略 AAS



21: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 00:37:53.55 ID:nY0iWbpOO
「プロデューサーさん! 悠貴ちゃん!」

「美穂! 無事だったんだな」

「はいっ。朝起きたら外がすごいことになってて、寮の子もほとんどいなくなってたんです……私、もう何がなんだか分からなくなっちゃって」
以下略 AAS



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