【ミリマス】さかしまの欠片
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9: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:34:46.69 ID:RvB9VQpu0
「エミリーさん」

白くて細い、綺麗な指が伸びて、膝の上で固く握られた、私の拳に触れる。

「信じて貰えないかもしれませんが、本当に、見えていないわけではないのです」
以下略 AAS



10: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:36:22.99 ID:RvB9VQpu0
「風が、呼吸によって折り畳まれるさまを見ることができます」

「え?」

「光の指や、水滴に潜む昏い秤が見えます。
以下略 AAS



11: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:37:14.74 ID:RvB9VQpu0
「できません」

仕掛け人さまは平坦な声で言った。

「次の公演に、白石さんを出すことはできません」
以下略 AAS



12: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:38:46.33 ID:RvB9VQpu0
「それは……まだ、慣れていないだけです」

「僕が白石さんと、白石さんのご両親に伺うことがあるとすれば」

仕掛け人さまの視線は、紬さんの『目』に真っ直ぐ衝突した。
以下略 AAS



13: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:43:11.30 ID:RvB9VQpu0
「嫌な方向に吹っ切れましたね。
 僕には、白石さんが今回の公演にそこまで拘る理由が分かりません」

紬さんは口をつぐんで、ただ立っている。

以下略 AAS



14: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:44:02.07 ID:RvB9VQpu0
「スチュアートさん」

仕掛け人さまが、突然私の方を向いた。

「あなたの目から見て、白石さんはステージに立てる状態だと思いますか」
以下略 AAS



15: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:44:59.56 ID:RvB9VQpu0
「エミリーさん、ありがとうございます」

紬さんは練習着に着替えて、軽く喉を鳴らしながら微笑んだ。

「エミリーさんからいただいた、このチャンスを無駄にはしません」
以下略 AAS



16: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:46:02.83 ID:RvB9VQpu0
それから紬さんは、鏡面が奥行きを映し出す部屋の、ほぼ中心の座標に立って、ひとつ大きく息を吐いた。

「では、いきます」

スピーカーから音楽が流れる。
以下略 AAS



17: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:46:59.63 ID:RvB9VQpu0
26秒の間、紬さんの表現は完璧だった。

もしかすると、過去最高の地点を跨いだかもしれなかった。けれど。

私にとって、その瞬間は驚くほどゆっくりと訪れた。
以下略 AAS



18: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:48:10.93 ID:RvB9VQpu0
紬さんは、まるで目の前に足場が存在すること自体が、
信じ難い異常であるかのような顔をしていた。

床に横たわるような状態になってようやく、自分が転倒したことに気付いたのだ。

以下略 AAS



19: ◆u/54BSBlPw[sage saga]
2020/02/08(土) 19:49:04.69 ID:RvB9VQpu0
無責任な私は、ただ紬さんの手を握るしかなかった。

「紬さん。紬さん、私はここです」

強く、強く、握って、願う。
以下略 AAS



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