5: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 15:10:06.36 ID:4yJ+Tv6jO
次に目が覚めた時、喉の痛みは悪化していた。
いつも時計のアラームを二個セットしていて、その二個目で起きる習慣があった。
しかし、アラームはならなかった。
部屋の置き時計は1個になっていて、今まで使っていたものと全く違う時計が枕元に置かれていた。
いや、でも見覚えがある。
6: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 15:18:22.77 ID:4yJ+Tv6jO
立ち上がって、ふらつく。
バランスが悪い。
背中の節々が痛いし、完全に風邪だ。
最悪。
7: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 15:25:13.57 ID:4yJ+Tv6jO
「はい、お茶椀。ご飯とお味噌汁は自分で注ぎなさい」
「あ、うん……」
母の顔がおかしい。
8: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 15:32:55.40 ID:4yJ+Tv6jO
「いってらっしゃい」
母が父を玄関まで見送っていた。
最近はめっきり見られなくなった光景だ。
私はもう一度茶碗をのぞく。
9: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 15:52:07.05 ID:4yJ+Tv6jO
今って。今は今だ。
今が今で。
母が玄関から出たのが分かった。
「ま、待って」
10: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 15:55:59.08 ID:4yJ+Tv6jO
なにもかもない。
会社に持っていく鞄もない。
代わりに、この間一掃した子供服があったり、玩具があったり。
捨てたはずなのに。
急に怖くなった。
11: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 16:05:19.79 ID:4yJ+Tv6jO
玄関の戸口の前に小さい影が映っていた。小学生くらいの女の子。
じっと直立していたけど、しばらくしてから玄関の新聞受けを開いて、こちらを覗き込んだ。
「あゆむ、起きてる?」
12: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 16:15:08.65 ID:4yJ+Tv6jO
「が、学校、何時までに行かないといけないんだっけ」
「はい?」
やすはは――やっちゃんは、耳を疑うように聞き返した。
13: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 16:33:37.53 ID:4yJ+Tv6jO
ふいに、玄関にかけてあったカレンダーが目に入る。
なんだ、あれ。何年前のなの。西暦おかしくない?
「待ってるから、早く。学校行きたくないのは分かったから」
14: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 16:43:13.58 ID:4yJ+Tv6jO
「……声変。声変り?」
だから、風邪だって。
「あゆむ、男っぽいって思ってたけど、ついに」
15: ◆/BueNLs5lw[saga]
2016/05/29(日) 16:50:48.25 ID:4yJ+Tv6jO
そうして、30分歩かされた。
小学生の歩幅は小さく、学校までの道のりがとても遠く感じられた。
この距離なら、絶対に車で行くのに。
とは言っても、肉体的に疲労したわけではなく、私の体は案外と元気だった。
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