【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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28:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:55:04.84 ID:+eTeNEs7O

夕闇どきに作業を終え、帰っていく朝からの勤務だった面子を見送った。夜勤のために来た社員に引き継ぎを済ませて簡単な指示を残す。

プレハブからバッグを持って出ると、彼女は引き戸の横の壁にもたれ掛かりながら山あいに沈みかけの太陽を眺めていた。
黄昏の柔らかなオレンジが、揺れる金髪に照り返っていた。幻想的だった。
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:55:40.52 ID:+eTeNEs7O

ああ、やめる云々ではなかったか、とほっとしかけて、やっぱり一息はつけなかった。
反射的に、誰に、と返していた。

「やっ、誰かは言わないってば! 言っちゃ、ダメっしょー? こーゆーの……」
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:56:50.51 ID:+eTeNEs7O

さて、どう言ったものか。
彼女がその誰かの想いを受け入れるにせよ拒むにせよ、なんらかの遺恨は残りそうだ。

ともかく是か非か。どうするつもりなのかと聞いた。
以下略 AAS



31:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:57:53.65 ID:+eTeNEs7O

結局はお前の気持ち次第だ。
良いなら良い、駄目なら駄目。それを真摯に応えるのが正しい在り方なんじゃないか。

お人好しな子だ。
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:58:26.87 ID:+eTeNEs7O

後日、勤務時間中にわかりやすく沈んでいる男を見つけた。事情を知らない周りは腹でも壊したのかと心配していたが、知っている身としてはなんて露骨な、とまた少し呆れる。

仕事上がりにひっ捕まえて、そのまま近場の呑み屋へと拉致した。幸いその彼は二十歳を超えていた。

以下略 AAS



33:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:13:35.66 ID:+eTeNEs7O
7.

色んなことがあった。
彼女と出会ってから。一年はあっという間に過ぎ、二年めはそれよりもさらに早く過ぎていった。

以下略 AAS



34:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:14:13.34 ID:+eTeNEs7O

周りには聞こえない方がよかろうと、途中の自販機で飲み物を買って人気のない近くの市民公園に向かった。
ブランコになんて乗ったのは小学生ぶりだ。
キコ、キコ、という鎖の軋む音が、木々の葉が掠れる音と混ざって静かな夜に溶けていく。

以下略 AAS



35:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:15:38.20 ID:+eTeNEs7O

「これ……どーしたらいいと思う?」

相談は、漠然としていた。そんな丸投げの問い。
どうしたいのか、と聞き返そうとして、やっぱり飲み込んだ。聞かずともわかる。
以下略 AAS



36:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:16:29.45 ID:+eTeNEs7O
着ている服にせよ、携帯のマスコットにせよ、髪型にせよ、メイクにせよ。一般の大衆ウケからは外れているかもしれないが、それらは彼女が可愛いものを求めた結果だ。
アイドルなんて可愛らしいものの象徴に、なれる、ならないかと手を差し出されれば、それは掴みたくもなろう。

好きなようにするといい。子どものワガママぐらい笑って許す。大人だからな、と見栄を張った。

以下略 AAS



37:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:17:31.38 ID:+eTeNEs7O
ほかに心配事は、と問いかける。

彼女の手の、ブランコの鎖を握る力が強くなった気がした。

「……アタシさ、こんな見た目だけど。アイドルになんて、なれるんかな?」
以下略 AAS



38:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 21:18:16.44 ID:+eTeNEs7O

夜は更け、話している間に十一時前になっていた。こんな時間に一人で帰らせるのは憚られる。家までの道を付き添った。
彼女から、いつものような話題の提供はまるでなかった。けれど、ゆるい沈黙を辛いとは思わなかった。

彼女の家のそばまでゆるりと歩き、何事もなく送り届けた。
以下略 AAS



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