神谷奈緒「晴れは雨があってこそ」
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6:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:13:42.82 ID:KS3A+iW2O




シャワーを浴び、事務所に戻った奈緒はソファに座りながら雑誌を読んでいる加蓮を視界に捉える。普段なら後ろから声でもかけて驚かせてやろうという所だが、今はとてもそんな気分ではない。ソファには近づかず、冷蔵庫にまっすぐ進み、スポーツドリンクを取り出して一気に煽る。冷たい甘みと酸味が喉を走り、さっぱりとした後味は多少なりと奈緒の中のもやを取り払ったように思える。一口で半分ほど減ったスポーツドリンクの蓋を締めたところで、背後に気配を感じる。
以下略 AAS



7:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:14:35.62 ID:KS3A+iW2O
「なーおっ!」

「どわぁぁ!なんだ!?」

一人思案に耽り、まったく周りが見えていなかったようだ。いつの間にか目の前にいた加蓮にいきなり抱きつかれ、奈緒は混乱する。加蓮がソファから立っていたことも、自分の前まで来ていたことも全く気付かなかった。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:15:29.03 ID:KS3A+iW2O
どきりとする。加蓮やプロデューサーの前では普段通りの自分を演じられていると思っていたが、もしかすると想像以上に暗い雰囲気を垂れ流していたのかもしれない。

「ここ最近、なんだか奈緒、変だったから」

ポツリともらす加蓮をみて、奈緒はあぁと腑に落ちる。加蓮は何も奈緒のもやに気づいた訳では無いのだ。加蓮はずっと奈緒の目を見ていた。加蓮は他人の表情の変化にすごく敏感だ。幼少期の経験からであろうが、いつもなら気遣いとなりありがたいそれも今の奈緒には傍から見てもおかしいという事実を突きつけられているようで、とても気分が良くなかった。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:16:15.77 ID:KS3A+iW2O
どれだけ走っただろうか。気づけば息は乱れ、足はガクガクと震えている。辺りを見回すと、いつの間にか知らない土地に来てしまったようだ。戻らなければ、そう思うやいなや、今日起こった出来事がフラッシュバックする。不調の自分。トレーナーの言葉。プロデューサーの眼差し。そして横目でちらりと見た加蓮の驚きにも似た表情。全ての記憶が目まぐるしく暴れだし、感情の奔流はついに奈緒の自制心を少しずつ削り始め、声にならない声を上げながら奈緒はよろよろと並び立つビルの間の路地裏へ入り込み、ヒビの入ったセメントに背中を預けながら座り込んだ。

「あぁぁぁぁぁぁ!」

叫ぶ奈緒に周りの人間はこちらを見るが、丁度路地裏のパイプに阻まれ奈緒の姿は通りからは見えない。収まりのつかない感情は奈緒の中を暴れ回った挙句、とうとう口から強引に外に出たのであった。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:17:39.12 ID:KS3A+iW2O
「勝手に飛び出して、みんなに心配かけて本当に奈緒は最低だよ」

最低だ、という言葉とは裏腹に、その声には温もりがこもっていた。そして、怒りも。顔を上げると、やはりそこには彼女が居た。

「凛……」
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:18:14.63 ID:KS3A+iW2O
「Pさん、あたし……」

「分かってる。気づいてやれなくて済まなかった」

本当に済まなそうに言うプロデューサーに、今更ながら罪悪感を覚える。何もプロデューサーが悪いことをしたわけじゃない。奈緒が勝手に劣等感を抱いて、勝手に飛び出して来ただけだ。そう謝られると逆にこちらが申し訳無くなる。なんだかいたたまれなくなった奈緒は、ちょっとプロデューサーを見るのが恥ずかしくなってそっぽを向きながら言った。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:19:06.82 ID:KS3A+iW2O
……………………………………………

「────だから、あたしがふたりよりもずっと劣ってるって思って……」

事務所に戻り、凛も加蓮も帰った後、奈緒はプロデューサーに自身の心中を吐露していた。何だかこんなに自分ひとりで溜め込むのも馬鹿らしいと考えたのだ。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:20:00.89 ID:KS3A+iW2O
「当たり前だろ、そんなの!」

つい声が大きくなる。そんなもの考えるまでもない。自分がステージに立って目の前の光の海に手を振るのを想像しただけで高揚するし、自分の声が入ったCDがショップにおいてあるのを見ると心から嬉しく思う──まぁ、少しは恥ずかしいが──これを楽しいと言わずしてなんと言うのだろう?
奈緒の答えを聞いたプロデューサーは満足そうに笑うと、

以下略 AAS



14:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:22:24.44 ID:KS3A+iW2O
「だったらさ、Pさん」

「ん?」

「もっとあたしのいい所、一緒に見つけてくれよ!ふたりに負けないくらい、すっごい魅力をさ!」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:23:04.30 ID:KS3A+iW2O
ピピピピッ!ピピピピッ!

「うわぁあ!?」

いきなり鳴り始めた電子音に頬の暑さも忘れ驚く奈緒。奈緒が赤面しているのを見て笑っていたプロデューサーは自分のデスクへと歩み寄り、その音の発生源を止めた。
以下略 AAS



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