真壁瑞希「恋するアセロラ・サイダー」【ミリマスSS】
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1
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◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:19:38.07 ID:NGPIxQq80
ミリマスSSです。
一応、地の文形式。
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2
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:24:14.90 ID:NGPIxQq80
「プロデューサー、好きです」
「......へっ?」
以下略
AAS
3
:
◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:25:44.49 ID:NGPIxQq80
「心臓に悪いから、今度からそんな冗談はよしてくれよ?」
彼は少し気の抜けたような笑みを浮かべた。驚きでさっきまで見開いた目が、見えなくなるほどに細くなる。彼の表情はコロコロと大きく変わるから、見ていて面白い。
以下略
AAS
4
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:26:42.75 ID:NGPIxQq80
「そうそう。ギクッとするようなものじゃなくて、もっとビックリするような感じで」
「分かりました。それじゃあ、今度はビックリさせるような冗談を見せます。......お楽しみに」
以下略
AAS
5
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:28:05.48 ID:NGPIxQq80
・・・・・・・・・・
以下略
AAS
6
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:29:00.92 ID:NGPIxQq80
一体、いつからだろう?
オーケストラの指揮をすることになり、どうすれば皆のハーモニーを紡ぐことができるか悩んでいた私を、彼が助けてくれたときだろうか? それとも、乙女ストームのお姉さん役として、何をすべきか考えていた私を導いてくれたときだろうか?
以下略
AAS
7
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:30:15.75 ID:NGPIxQq80
好きだという気持ちは本当なのに、冗談としてその言葉を言ってしまえば、私の気持ちに嘘をつくことになる。そう思うと胸がキンと冷えた感触するのだ。
じゃあ、本当の気持ちで好きだと伝えたらどうか、だって? それは一番伝えたい言葉だ。でも、伝えるにはとても勇気が必要だし、この気持ちをさらけ出すのは、何より怖い。
以下略
AAS
8
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:30:50.41 ID:NGPIxQq80
「瑞希?」
「わっ」
以下略
AAS
9
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:32:31.95 ID:NGPIxQq80
そうだ。いっそ今から、言えるかどうか試してみようか。昔は彼に言うことのできた冗談を、今なら何だか言えそうな気がする。
「プロデューサー」
以下略
AAS
10
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:33:20.40 ID:NGPIxQq80
突然の質問に彼はあっけにとられていたが、すぐに顔を緩めた。
「スキー? ああ、やったことあるぞ。昔はよく友達と滑りに行ってたなあ、最近はめっきり行ってないけど」
以下略
AAS
11
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:35:02.47 ID:NGPIxQq80
「ところで瑞希。さっきはスキーのことを、あんなに考えてたの?」
「いえ、あ、えっと。そうです」
以下略
AAS
12
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:35:55.18 ID:NGPIxQq80
私がとっさに出した誤魔化しから、スキーロケが決まってしまった。ちょっとワクワクするぞ。でもちゃんと滑ることができるのだろうか。練習をした方がいいのかな、いや、練習はできないか。
好きですと言おうと試みるも言えずに誤魔化すことは、これまで幾度も繰り返したことだった。この前は「すき焼きを最近食べてないです」と言ってしまった。おかげで急遽すき焼きを食べに行くことになったのだが。……あれは美味しかったな。プロデューサー、ごちでした。
以下略
AAS
13
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:36:58.95 ID:NGPIxQq80
結局、今回も言えず仕舞いであった。二音目、口蓋とそこに押し付けた舌が離れるときに生じる破裂音が細く流れようとした途端、胸が冷え、つかえるような気持ちになってしまい、言い出せなくなる。これは嘘を吐くことへのためらいからなのか、それとも、好きだと言うことへの恥ずかしさからなのか。
好きですと冗談で言わなければ死んでしまう病にかかっているわけでもないので、別に言う必要もないのだが、以前まで出来たことが出来なくなるのはモヤモヤする。
以下略
AAS
14
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:37:58.11 ID:NGPIxQq80
プロデューサーも先ほど出掛け、シアターの控え室は再び私だけだ。人の気配も全くなく、今なら禁止されている野球をしてもバレないだろう。
椅子を離れ窓際へ向かうと、天気が良いお蔭で風景がよく見えた。我が765プロのシアターは臨海地区に居を構えており、海がすぐそばに見える。海の向こう側には都心のビル群が林立し、晴れて空気が綺麗な日には、今日のように富士山が顔を覗かせてくれる。
真下を見るとシアター前の広場があり、私たちのライブを見に来たであろうファンも含め、たくさんの人々が往来していた。開場を待たんとする正面玄関の人垣は、蟻の這い出る隙もないかのように、ひしめき合っている。
以下略
AAS
15
:
◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:39:24.03 ID:NGPIxQq80
紅色の透き通った液体の中を、丸く玉のように煌めいた無数の泡粒がポコポコと浮かんでは弾けて消える。ストローで一口含めば炭酸のピリリとした刺激と爽やかな香りが広がり、その香りに負けない濃い酸味とほのかな甘みが心を躍らせる。夏場の厚い時期やレッスン終わりのカラカラな喉には打ってつけだ。......どうしよう、飲みたくなってきたぞ。
アセロラ・サイダーの味を思い出すと、下あごの内側がくすぐったくなる。甘さ以上に感じてしまう、淡く、爽やかで、それでいて心にジンと来るような酸っぱさを。その甘酸っぱさは、まさに初恋の味なのではないかと想像する。
以下略
AAS
16
:
◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:41:35.60 ID:NGPIxQq80
いよいよ我慢ができなくなって、アセロラ・サイダーを買いに行こうと目線を外の風景から戻すと、窓に私が映っていることに気が付いた。無表情で可愛げのない顔つきの私が、ガラスに映っている。試しに両手の人差し指で口角を上げてみると、口が目元とは不釣り合いに持ち上げられ、不器用な笑顔になった。
さっきのやり取りの中で、私のちょっとした表情の変化に彼が気付いてくれたというのは、嬉しかった。楽しみだ、と顔に出ている、そう言ってくれたことが。
以下略
AAS
17
:
◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:43:02.89 ID:NGPIxQq80
自覚していることだが、私はかなり不器用だ。私としてはちゃんと表現しているつもりなのだが、皆はあまり汲み取ってくれず、無表情だから何を考えているのか時々よく分からない、とよく言われる。そう言われるのは慣れているけど、それでも、自分が今楽しいとか、悲しいとか、心の中の気持ちに気付いてくれると、やっぱり嬉しいものだ。だって、無表情であっても、ちゃんと感情はあるのだから。
おかげで、私の言ったことを本当に理解しているかどうか、その人の表情を見ると、何となく分かるようになった。この人は私の言っていることをほとんど理解してないけど、話を合わせてくれているな、とか、何だか少し理解してくれてるな、というのを直感するのだ。
以下略
AAS
18
:
◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:44:56.84 ID:NGPIxQq80
ある日、どうして私の思惑が分かるようになったのか、尋ねた。
「よーく見るとさ、ちゃんと表情に出てるよ。楽しいとか、悲しいとか。だから、そんな不安にならなくていいし、遠慮なく俺に話してよ」
以下略
AAS
19
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◆kBqQfBrAQE
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2018/11/12(月) 22:45:48.65 ID:NGPIxQq80
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以下略
AAS
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◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:46:31.21 ID:NGPIxQq80
学校へ行くときはもちろんのことだが、遊びに出掛けるときでさえずっと制服を着ていた。スカートのウエストがへそ上に収まるように位置を合わせ、ネクタイを軽く締めると、不思議と落ち着くからだ。流石に寝るときには着ないけれど。
事務所にも制服で通っていたが、しばらくしてある日、プロデューサーが私服をもう少し積極的に着てみたらどうかと提案してきた。なかなかお節介な提案だと訝しんだけれど、「自分自身を表現する術を瑞希が知りたがってたからさ。私服でまず表現するっていうのも、一つの手じゃないかと思って」という彼の言葉も一理あった。
以下略
AAS
21
:
◆kBqQfBrAQE
[saga]
2018/11/12(月) 22:49:58.20 ID:NGPIxQq80
しかし、いざ私服を着ようと思っても、算段がない。親に買ってもらった私服はあるけれど、その当時はクローゼットの中で日の目を見ることなく眠らされており、それらの服もどのように着ればよいか分からない。悩んだ末、プロデューサーに相談すると、彼はファッションに明るそうなアイドルを数人呼んできた。みんな親身になって私の悩みに応じ、服の組み合わせ方を教えてくれた。街に出てアパレル・ショップに行くこともあったが、次第に皆のテンションが上がり、私は着せ替え人形のようにたくさんの服を着る羽目になった。
そうして皆で見繕った服を着て、私が事務所を訪れたときの記憶は、今も鮮やかに残っている。プロデューサーが私の姿を見るやいなや、呆然として私を眺めていた。それから表情を明るくして、
以下略
AAS
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