高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「お互いを待つカフェで」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 18:56:42.91 ID:i6ln0z2d0
何に不安を抱いているのか分からなくなっちゃった。
藍子のことが理解できているかどうか? 藍子の為に何かしてあげられるかどうか? ……思ったんだけど、どっちもなんていうか、馬鹿馬鹿しいよね。
藍子のことが分からないなら、今みたいに藍子から聞けばいい。藍子が何かしてほしいって言ってもないのに、余計なお節介を焼く必要もない。点数が足りないなら一緒に解答欄を直せばいいだけだよね。
藍子のことが好きだって胸を張って言えないのなら、たとえ真心じゃなくてもいい。「好き」って言い続ければいいだけのこと。点数の桁なんて私が勝手に増やしてしまえばいいんだ。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 18:57:42.78 ID:i6ln0z2d0
やがてカフェの出入り口が開く。早歩き気味でちょっと息を荒くした、私の大好きな子がやってくる。


藍子「お待たせしましたっ……ごめんなさい、加蓮ちゃんっ!」

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 18:58:16.06 ID:i6ln0z2d0
加蓮「はぁ? 怒りまくってるけど。目の前でポテトの最後の1本を取られた時の100倍くらいは怒ってるけど」

藍子「ぜんぜんそう見えないけれど……でも、はい。分かりました。お話しますねっ。私、お仕事の関係で雑貨屋さんに行っていたんですけれど――」


以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 18:58:43.03 ID:i6ln0z2d0

……。

…………。



14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 18:59:43.78 ID:i6ln0z2d0
――おしゃれなカフェ(別の日)――

加蓮『ごめん少し遅れる すぐ行くね』


以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 19:00:12.52 ID:i6ln0z2d0
学校で使っているものとは違う、最近、メモやお絵かきに使っているノートを取り出します。
白紙のページを開いて、かばんからシャープペンシルを探して。
それから、ちょっと気になったことがあったので、「加蓮」と書いてみました。むずかゆかったので、「ちゃん」と付け足しました。

最近、よく見るようになった2文字です。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 19:00:43.02 ID:i6ln0z2d0
藍子「……あっ、店員さん♪ こんにちは」


注文していたホットココアを、店員さんが持ってきてくださいました。受け取ると、店員さんは目だけを私の向かい側に向けます。

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 19:01:13.18 ID:i6ln0z2d0
店内に流れる音楽が途切れるのと同時に、店員さんは一礼して去っていきました。
去っていく店員さんの背中を、目で追います。テーブルの真ん中手前側に置かれたココアから、甘い香りが漂ってきました。

しばらくすると、流れる音楽の種類が変化します。自然の音によるヒーリングソングから、オルゴールのアレンジソングへ。
これ、どこかで聞いたことがある――なんて耳を澄ませて、曲名を思い浮かべるのと同時に、時計の針が大きな音を立てました。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 19:01:42.66 ID:i6ln0z2d0
左手でかき混ぜながら、右手で2通目のファンレターを取り出します。最近、よく握手会に来てくださる女性の方。アウトドアが趣味で、お散歩好きなところに共感して私を見つけてくださったそうです。
この方は1行目から加蓮ちゃんの名前を書いていました。ちょっと前に私と加蓮ちゃんで簡単な動画を撮った、私たちの日常のことについて綴られています。
藍子ちゃ――私の話す加蓮ちゃんのお話が楽しかったこと、もっと聞きたくなったこと。そして、次のLIVEにも絶対来てくださるそうです。楽しみっ。

あっ。加蓮ちゃんからのメッセージです。
以下略 AAS



19:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 19:02:13.03 ID:i6ln0z2d0
シャープペンシルを握ります。さっき「加蓮ちゃん」とだけ書いたノートに何かを書こうと思って、けれども何も思いつかなかったので、なんとなくぐるぐる線を描いてみました。
それから、ノートの隣に3通目のファンレター……これは知らない方からです。握手会でお話できるかな? まだ顔を見たことのない方のファンレターを、並べて置いてみます。
「加蓮ちゃん」という文字が隣に並びました。文字の形はぜんぜん違うけれど、同じ意味の2文字。

最近、よく見るようになった2文字です。
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[sage saga]
2019/11/17(日) 19:02:43.28 ID:i6ln0z2d0
できれば加蓮ちゃんを待ってあげたかったけれど、カップの湯気はもう見えなくなってしまいましたから。
半分くらいを一気に飲んでしまいます。甘くとろけた感触が全身に行き渡っていきます。少し内側に寄っていた両足を軽く伸ばして、そうしたら体がほかほかとしてきました。
弱暖房の風が首筋を流れていくので、ジャンパーを脱いでみました。途端に温かみがぜんぶ外へ逃げていってしまって、慌てて羽織り直します。ボタンを留めた後、手にほんの僅かに金属の感触が残ってしまいました。指先をこすり合わせて、静電気が少し怖いので、てのひらで長椅子に触れました。


以下略 AAS



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