76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:15:54.54 ID:IsVcDC9H0
その一室
四角いスペースの真ん中
円筒形の透明な容器に満たされた赤い液体の中で
逆さまに浮かぶ男がいる。
この空間に照明具の類は存在しない。
77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:16:53.58 ID:IsVcDC9H0
「死んだはずの弟子が訪ねて来るとは。これだから人生はやめられない。」
容器の中の男の声色にはあらゆる喜怒哀楽が含まれている。
この言葉からも
喜んでいるような
78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:17:44.32 ID:IsVcDC9H0
「…こんなに精巧な監視カメラをこの街の隅々に流せるもんなのか?」
「カメラだけではない。…が、君が知る必要もない。西東。」
「おっと、その名で俺を呼ぶな。俺はもう因果から追放された身だ。」
79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:19:07.28 ID:IsVcDC9H0
「こっちとしても驚きなんだぜ、師匠――ヒューレット助教授。まさかこんなところでこんなバカやってるとはな。」
「バカとは失礼な。これは因果を超克するに必要な『プラン』の管理をしているんだ。」
「『プラン』ふん。それこそ、因果律に対する挑戦だな。侮辱だな。俺も明楽も…純哉でさえ指摘していたことだ。」
80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:19:51.88 ID:IsVcDC9H0
「しかし――『プラン』なんてものはな、自分で書いた物語を自分で読んでるようなもんなんだよ。
自分で設定した因果律を追って何が楽しい?
物語には終わりがある。
だから物語を加速させる。
その過程を愛でる。
81:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:21:04.92 ID:IsVcDC9H0
モニタの向こうでは赤ん坊が生まれた。
お腹を痛めた母親の嬉しそうな顔。
同じく興奮する父親の嬉しそうな顔。
まだ学生といっても通用しそうな、若い夫婦。
前途は幸せに満ちているようだった。
82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:21:57.35 ID:IsVcDC9H0
「確かに私も、面白いものには価値を感じるし、興味もある。」
狐面の男の背後から声がした。
大して驚きもせずに振り返ると
金髪の――人間の形をしたものが立っていた。
83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:23:07.34 ID:IsVcDC9H0
「エイワス…。どういうつもりだ?」
唸るような声で尋ねる容器の中の男。
呪うようにつぶやく容器の中の男。
声色からは――
84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:24:17.61 ID:IsVcDC9H0
「そうか。良かったんじゃないか?自分の最初の研究に幕が下ろせて。」
容器の中の男は苛立ちとともにそう答える。
これは明確に読み取れた。
狐面の男も
85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:25:17.71 ID:IsVcDC9H0
「ふん。俺が面白かろうがつまらなかろうが、そんなことは同じことだ。なあ、ヒューレット。こいつは何だ?」
自分のことを「君」呼ばわりする者には当面は会ったことがなく
そして、とても人間とも思えなかったので
かつての「師匠」にその存在を尋ねる。
86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2011/03/08(火) 00:26:21.86 ID:IsVcDC9H0
「『エイワス』…そろそろ自重していただきたい。」
「何故だ?私は今や、あなたの『プラン』よりもこの男の因果律の話のほうに価値と興味を感じている。」
これはもはや挑発だな、と狐面の男は思った。
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