過去ログ - 律「「復讐しよう」と唯は言った」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:15:05.60 ID:+38DJBxWo
律「――それは誰の為にだ?」
唯「復讐なんて、常に自分の為だよ。でも私としては、それがりっちゃんの為にもなってくれると嬉しい」
その言葉を聞いた時、私の心は九割が喜びで満たされていた。私こそが正しかった、あいつらは間違っていたんだ、という醜い喜びで。
残り一割はそのあいつらに対する罪悪感。申し訳なさ。復讐される側への同情、かもしれない。
そのようなものが心を掠めるということは、やはり私も普通の人。過去の思い出を捨てきれない、弱い人。
だが、その弱さを見抜いているかのように、唯は問うんだ。
唯「りっちゃんも手伝ってくれるよね?」
もちろん、断る理由はない。私はその為にここにいる。ずっとここにいた。唯のそばにいた。
だから、すぐに頷けないのはやはり弱さ。迷い。でもいずれは頷かないといけない。その為に私はずっと待ったのだから。
唯と共にあるために、ずっと唯の目覚めを待ったのだから。
唯「……出来ない?」
律「……いや、出来るさ」
そう、出来る。出来ないといけない。出来ないと、唯の目覚めを待ち続けた二年間が無駄になる。私の二年間が無意味なものとなる。
私も、唯と同じように、私のため、ついでに唯のため。そんな気持ちで動けばいいんだ。
――私の名前は田井中律。留年二年目が確定している、冴えない女だ。
2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:18:58.67 ID:+38DJBxWo
◆
――事の起こりは二年近く前。
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:23:29.17 ID:+38DJBxWo
その時は、澪と梓のほうが大人であり、現実を認めたくない私だけが子供だった。それだけのことで。そんな『大人』にムギは引っ張られていき、私は一人になった。
一人といっても、大学ですれ違ったりすれば会話はする。孤立しているわけじゃない。ただ、歩む道が違っただけ。
しかし道を違えた代償は大きく、私は唯が目覚めるまで完全な無気力状態。一年目から単位が足りず余裕で留年。というか単位も友達もなにもかも足りていなかった。
そんな私を憂ちゃんは毎日のように心配してくれた。実際毎日病院で会っていたから、毎日心配してくれていたのかもしれない。
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:25:16.77 ID:+38DJBxWo
ムギからそう言われた頃だったか。今更ながら、どうしてここまで私と澪、ムギと梓に差がついたのか考えてみた。
私と澪については、思い至れば簡単な事だった。高校一年の頃、澪は私が強引に誘うまでは軽音部に入るつもりなどなかったからだ。
お互いが楽器をやっていると知りつつも、澪は違う道を選ぼうとしていた。今でこそ澪は音楽というものに傾倒しているが、あの頃は音楽を捨ててでも『私と違う道を選びたかった』のだ。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:27:44.21 ID:+38DJBxWo
唯「――あ…れ、りっちゃん?」
律「!? ゆ、唯!?」
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:33:42.58 ID:+38DJBxWo
――そして、唯が目覚めた翌日。
約二年も経っているという事に愕然としつつも、唯は私達の事を案じ、「学校に行って」と言う。
梓や澪は「今日くらいは」と言い、渋る。きっとそれは本心だ。今まであまりお見舞いに来なかったことに対する罪悪感から来る醜い本心。
だから逆に私が、皆を引っ張って学校に行く。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/14(土) 11:36:11.52 ID:+38DJBxWo
プロローグ終了オヤスミ
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/05/14(土) 13:01:54.83 ID:MaLJDHovo
乙
続きが気になるね
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[sage]
2011/05/14(土) 13:38:30.57 ID:7iH222p0o
なんてひどい話なんだwwww乙
続きが気になるな
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府)[sage]
2011/05/15(日) 00:52:53.91 ID:t6iIbejO0
乙 なかなか心くすぐられる導入部分
なんというすれ違いの物語か
がんばって書き上げてね
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:24:12.64 ID:tndRPGhQo
【第一章】:病院にて
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:24:46.68 ID:tndRPGhQo
結局、私達が思っていたほど、唯は優しいやつではなかった。
毎日ニコニコしているわけではない。こうやって恐ろしい言葉を口にするほど怒る事もある、普通の女の子だ。
律「二年も置き去りにするような奴らのこと、やっぱ許せないか」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:26:06.58 ID:tndRPGhQo
改行ミスったorz
14:訂正[sage]
2011/05/15(日) 01:28:13.20 ID:tndRPGhQo
結局、私達が思っていたほど、唯は優しいやつではなかった。
毎日ニコニコしているわけではない。こうやって恐ろしい言葉を口にするほど怒る事もある、普通の女の子だ。
律「二年も置き去りにするような奴らのこと、やっぱ許せないか」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:30:37.37 ID:tndRPGhQo
唯「――そうそう、特に異常も見当たらないし、リハビリ済めば退院自体はすぐに出来るらしいよ。あとりっちゃん髪伸びた? 憂まだかなー」
点滴などの器具から開放され、普通にベッドに上半身をもたれさせる唯はいつになくハイテンション。
とはいえリハビリという言葉が示すとおり、普通に動くことはまだ難しい。さすがに二年近く寝たきりでは仕方ないだろう。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:31:56.29 ID:tndRPGhQo
唯「うわっ、私すごい痩せてる!?」
律「っておい、今更かよ!」
唯「いやぁ、太る事もない体質ですとつい自分のカラダに無頓着になってしまいまして」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:42:25.75 ID:tndRPGhQo
唯「――まぁそういうわけで、憂、何か食べ物ちょうだい?」
憂「あ、うん、一応お見舞いの定番、フルーツならあるけど…」
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:48:57.16 ID:tndRPGhQo
憂「とりあえず…水? お茶? ポカリ?」
唯「病人といえばポカリだよね!」フンス
紬「任せて! 買ってくるわ!」ダッ
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 01:53:42.63 ID:tndRPGhQo
――結局、食事もリハビリも病院と唯本人任せにするしか道はなく、当分は私達、さらに言うなら家族である憂ちゃんでさえも、してやれることは話し相手になることだけだった。
ただ、唯本人が非常に意欲的に取り組んでいる、とは医者のセンセイからも聞かされている。いいことだとは思うが、焦っているようにも見えない事も無い。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大分県)[sage]
2011/05/15(日) 02:02:56.71 ID:tndRPGhQo
――そうして時は流れ、新年度が近づく。
大学の状況はというと、私とムギは立派に留年確定。澪と梓は普通に進級しそう。そして驚いていいのかわからないが、憂ちゃんも留年確定。
これで来年度は私と唯と憂ちゃんが大学一年。ムギと梓が二年。澪が三年となる。ひとりぼっちの澪が泣けば面白かったのだが、澪は澪で唯が眠ってから驚くほどの精神的成長を遂げており、泣くことはなかった。
澪は今やバンドサークルの中心人物だ。有名人であり、プレッシャーも責任も大きい立場なのだが、それを撥ね退けるほどの強さ、逞しさを持っている。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/05/15(日) 02:10:59.82 ID:oKL4LzXSO
りっちゃん好きの俺にはつらいわー
でも面白いから最後まで読む
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