過去ログ - かがみ達は深い霧に囚われたようです
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210:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:31:19.89 ID:wGCdZCC0o


 オーブンがロールパンをじりじりと焼いている。
その音やただよう甘い香りに引かれながら、思考は宙を舞っていた。

以下略



211:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:32:18.14 ID:wGCdZCC0o

「……あのさ、これからどうする?」

 漠然とした、一人言のように呟いた質問の、その意味はしっかりと伝わっているようだった。
全員が、それぞれに体を強張らせる様子が感じられる。
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212:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:33:52.39 ID:wGCdZCC0o


「……私はね、柊ちゃん」

 意外にも、話の口火を切ったのは峰岸だった。
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213:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:34:49.42 ID:wGCdZCC0o

 ホテルに辿りついたときに、その窓から中を覗いたことを思い出す。
大通りに面した窓は、私の背丈の倍もある大きなはめ殺しのもので、
装飾過多なそれはショーウインドウのような印象を与えるものだった。

以下略



214:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:36:43.76 ID:wGCdZCC0o

「……とにかく、逃げるのは厳しいってわけね……」

 その結論に返事は返ってこない、それが何よりの答だった。
そこら中にあいつらがいる状況で、車まで辿りつくことは不可能だろう。
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215:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:37:47.48 ID:wGCdZCC0o


 きゃあああああぁぁぁぁぁぁ……


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216:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:38:48.93 ID:wGCdZCC0o

 その一瞬の余韻を、私はただ眺めていた。
日下部も峰岸も同様に、立ち上がろうともせずただ互いに顔を見合わせている。
まるで夢のような浮遊感だった。

以下略



217:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:39:59.43 ID:wGCdZCC0o

 開け放されたドアを抜けた正面には『WC』とプレートのついた茶木色のドア。
それを無視して右手へ走れば、そこにはまた同じようなドア、も開け放たれていた。
くぐって左手の洗面台の鏡に、立ち昇る湯気が映りこむ。
出しっぱなしになっているらしい、シャワーの音が耳障りだ。
以下略



218:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:40:55.63 ID:wGCdZCC0o

 掛ける言葉も見つからず、惰性で足を運ばせてバスルームを覗きこむ。
湯気と熱気にあてられて狭まる視界の中、異変はすぐ私の眼に飛び込んできた。


以下略



219:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:41:50.66 ID:wGCdZCC0o

 不意に、うっすらと鼻をつく臭いに気付く。
腐らせた生ゴミの何倍も質の悪い、そんな生臭さ。

 湯気が、白く立ち昇っている。
以下略



220:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/08/18(木) 01:42:37.71 ID:wGCdZCC0o

 水勢を最大まで引き上げると、刺すように冷たい水が激しく噴き出す。
虚しく蠢き続けるそれにシャワーを向けた。
それは潰れた半身を置き去りにして、ゆっくりと流れていく。

以下略



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