過去ログ - ひたぎ「これも、また、戯言よね」
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:20:30.30 ID:ooW4dNWwo
「この場合、別に蟹じゃなくてもいい。兎だって話もあるし、それに――忍ちゃんじゃな
いけれど、美しい女の人だって話もある」
「へえ……月の模様みたいですね」
「まあ、お嬢ちゃんが行き遭ったのが蟹だっていうんなら、今回は蟹なんだろう。一般的
だしね。」
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:21:48.48 ID:ooW4dNWwo
「ま、お嬢ちゃんは、運の悪い中じゃあ運のいい部類だよ。そこの阿良々木くんなんて、
行き遭うどころか助けたんだから。それに比べればお嬢ちゃんは全然マシだ」
「どうしてですか」
「神様なんてのは、どこにでもいるからさ。どこにでもいるし、どこにもいない。お嬢ち
ゃんがそうなる前からお嬢ちゃんの周りにはそれはあったし――あるいはなかったとも言
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:22:56.80 ID:ooW4dNWwo
「どうして――そう思ったんですか」
「おもし蟹に遭うような人間は大抵そうだからだよ。遭おうと思って遭えるもんじゃない
し、通常、触るような神でもない。」
障らない――だって?
「襲うこともしないし、憑くのとも違う。ただ、そこにいるだけだ。お嬢ちゃんが何かを
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:23:50.85 ID:ooW4dNWwo
「……お礼は?」
「は?」
「とぼけないでください。ボランティアで助けてくれるというわけではないんでしょう?」
「ん。んん。」
忍野はそこで、僕を見る。
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2011/07/30(土) 10:24:57.34 ID:ooW4dNWwo
そして、二時間後――今現在。
ひたぎちゃんの家をもう一度――見回す。
意匠箪笥と卓袱台、小さな本棚のほかには何も無い。
まるで、本当に僕の部屋のようだ。
僕のような人間もどき(精神的にも肉体的にも)とひたぎちゃんの共通点はなんだという
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:25:40.33 ID:ooW4dNWwo
ひたぎちゃんはなんだかとてもご機嫌のようだった。まさか忍野を信頼しているわけで
もないだろうに……まあ、ただ単に、僕から会話の主導権を奪いたかっただけなのかもし
れない。
僕は這いずるように意匠箪笥の前から離れ、本棚の前に移動し、並んでいる本を熱心に
読んでいるかのように集中してみる。
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2011/07/30(土) 10:26:35.74 ID:ooW4dNWwo
「阿良々木くん。まさかあなた、私のヌードを見て欲情したのではないでしょうね。」
「……仮にそうだったとしても僕の責任じゃないと誰もが証言してくれるだろうよ……」
「私に指一本でも触れて御覧なさい。舌を噛み切ってやるんだから」
「どれどれ」
太ももの辺りを揉んでみた。
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2011/07/30(土) 10:27:41.46 ID:ooW4dNWwo
「もういいわよ。こっちを向いても」
僕は本棚から、ひたぎちゃんを振り向いた。
まだ下着姿だった。
やたら扇情的なポーズを取っていた。
「これ以上、ぼくを混乱させて、どうするんだ!何をたくらんでいるんだ!」
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2011/07/30(土) 10:28:48.47 ID:ooW4dNWwo
「羽川さんも――忍野さんの、お世話になったのよね?」
「うん。まあね」
ひたぎちゃんは、箪笥から白いシャツを取り出し、シャツのボタンを最後まで留めると、
その上から、白いカーディガンを着るようだった。どうやら、下半身より先に上半身のコ
ーディネートを済ませてしまうつもりらしい。なるほど、服には一人一人、別々な着衣順
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:29:42.57 ID:ooW4dNWwo
「この奇妙な世界には、決して、夢幻魔実也も九段九鬼子も、いてはくれない。峠弥勒くら
いなら、ひょっとしたらいてくれるのかもしれないけれどね」
ありったけの嫌味を込めて、ひたぎちゃんは言う。
「だから阿良々木くん。私は――だからね、たまたま階段で足を滑らせて、たまたまそれを
救ってくれたクラスメイトが、たまたま吸血鬼に襲われていて、たまたまそれを救ってくれ
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