47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/30(火) 15:19:34.66 ID:qI3zpfXyo
◆
――恐れ。
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2011/08/30(火) 15:20:15.92 ID:qI3zpfXyo
ただ不安と恐怖だけが体を支配している。
何かを失ってしまった、と彼は思った。
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2011/08/30(火) 15:20:46.02 ID:qI3zpfXyo
とはいえ、その数え方は、あくまで集団を表現するものに過ぎない。
個人はどれだけのものを積み重ねようとイチであり、それ以上になることはない。
では――ゼロとはなんだろう。
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2011/08/30(火) 15:21:12.18 ID:qI3zpfXyo
気付けば、彼は夜の街を歩いていた。
本当にごく自然に、彼の意識は――あるいは存在と言い換えることもできるかもしれないが――唐突にこの場に現れた。
赤ら顔で大声を出すサラリーマンが夜の街を闊歩している。
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2011/08/30(火) 15:21:44.31 ID:qI3zpfXyo
吐き出した溜息が空気を染め上げ、白く立ち上って消えていく。
何かが失われている、と彼は感じた。
自らの溜息を追いかけて見上げた空から、白い粒が降りてきたのを視界に捉える。
52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:22:12.12 ID:qI3zpfXyo
息が詰まるような閉塞感に襲われている。
友人は多かった、と、彼は唐突に考えた。以前は何人も仲の良い人間がいたし、我ながら上手くやれていたと思う。
確執が起こることはあったけれど、それでも何とかやれていた。
53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:22:38.24 ID:qI3zpfXyo
街、町、マチ。さまざまな音が溢れた街。いろいろなものがある町。
にもかかわらず、何もないマチ。
何もない場所、何の音もない空間、何も響かないところ。そこに意味はあるだろうか?
54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:23:49.73 ID:qI3zpfXyo
◆
翌日、彼は朝早くに目を覚ました。
妙に頭がぼんやりとしていた。ひょっとしたら風邪かもしれないと思い熱を測ってみたが、熱はない。
55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:24:29.90 ID:qI3zpfXyo
会う場所はアキラの家に決まり、彼は一時過ぎに家を出て自転車を走らせた。
そう遠くはない距離だ。それでも、二十分弱はかかるのだが、中間地点に待ち合わせられるような場所がないので仕方ない。
自転車を漕いでいると、冬の空気の冷たさを久しぶりに感じた。そういえばこんなふうに出かけるのも久しぶりかもしれない。
56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:24:56.05 ID:qI3zpfXyo
会うのは久しぶりだったが、彼の目から見てもアキラの様子は以前とほとんど変わらなかった。
愛嬌のある表情も、親しみの沸く雰囲気も、中学時代と同じだ。体格はがっしりとしていたがそれでも彼には以前と同じように感じられた。
アキラの部屋に案内されてから、彼らは二人で話をした。
57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:25:31.40 ID:qI3zpfXyo
世間話を続けていると、アキラが不意にヤマトの名前を出した。
「ヤマトから、おまえのことを聞いたんだよ。最近会ったって」
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