過去ログ - 澪「花は咲き、枯れてまた咲く」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:36:48.09 ID:yJ8J35aI0
おととい買って置きっぱなしだった文庫本を手に取って、ベッドに寝転がる。
秋晴れの風はベランダの洗濯物を揺らし、金木犀の香りを部屋に運び込む。

折角気持ちの良い午後だ、眠くなればそのまま寝てしまおう。
そう思いながら仰向けになって、頭上に掲げた本を両手で開いた。

タイトルに惹かれてなんとなく手に取った、女性作家の旅行記。
バックパッカースタイルでアジアを旅するそのエッセーはユーモアに溢れつつ
時々どきりとするような描写をみせる。


……そういえばアイツ、今頃どこ歩いてるんだろ。

つらつらと文字を追いながら、頭の隅で考える。
脳裏に浮かんだ幼馴染の笑顔は、今よりも少し幼く思えた。

彼女の笑顔はプールの底から水面を見上げた時のようにゆらゆら光りながら揺れて、
やがて私の意識をゆっくりと眠気の中に落としていった。


2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/10/06(木) 10:37:20.52 ID:yJ8J35aIo



***

以下略



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2011/10/06(木) 10:38:16.38 ID:yJ8J35aIo
澪「ありがと。そっちはもう寒い?」

紬「うん、朝晩は特に。街を歩いてると私だけ厚着してるみたいでちょっと恥ずかしいよ」

澪「あはは、そっか」
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:38:58.84 ID:yJ8J35aIo
注文を終え、厨房に向かうウェイターのすっきり伸びた背中を見送る。
スイーツも楽しみだね、と内緒話をするみたいに言ったムギに頷いて、
ふたりでくすくすと笑った。

紬「澪ちゃんも、元気にしてた?」
以下略



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2011/10/06(木) 10:39:24.64 ID:yJ8J35aIo
紬「うん? なあに?」

澪「例の雑誌。2冊とも入ってるから」

紬「あっ、唯ちゃんとりっちゃんの?」
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:40:02.79 ID:yJ8J35aIo
1冊は先月発行された、私たちの地元、桜が丘の出版社が出している情報誌。
インディーズレーベルで活動している唯の特集が4ページに渡って掲載されている。

紬「唯ちゃん、もうすっかりミュージシャンだね」

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2011/10/06(木) 10:41:10.53 ID:yJ8J35aIo
澪「私もびっくりしたよ。律がコラムなんて書けるのかって。……だけど」

紬「うん?」

澪「読んだら驚くと思うよ。ムギも」
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8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:42:24.60 ID:yJ8J35aIo


律は在学中から就職活動を一切せず、卒業後もアルバイトでお金を貯めては旅に出る
いわゆるバックパッカーを続けている。

以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:43:25.41 ID:yJ8J35aIo


紬「……でね、向こうの仕事が落ち着いたら、企画部への転属願いを出そうと思ってるの」

澪「へえ、企画部かぁ」
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10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:44:25.03 ID:yJ8J35aIo
紬「梓ちゃんが唯ちゃんのサポートやるって聞いてね、私も何かしたいって思ったの」

澪「そっか……。あー……、みんながそうやって、どこかでまた繋がって……」

紬「わくわくするよね、そういうの」
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:45:09.10 ID:yJ8J35aIo


紬「そういえば、りっちゃんのコラム」

澪「うん?」
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12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:46:00.73 ID:yJ8J35aIo
音楽の道を選んだ唯とバックパッカーになった律。
ともに経済的な余裕があるはずもなく、ふたりは卒業してすぐルームシェアを始めた。

唯の活動が軌道に乗り始めてからもふたりぐらしの部屋はそのままで、
不思議なバランスのシェア生活を続けているらしかった。
以下略



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:47:06.93 ID:yJ8J35aIo
紬「りっちゃんって誰とでもすぐ仲良くなれるでしょ」

澪「うん」

紬「りっちゃんのそばにいるとみんな笑顔になって、楽しい気持ちになって」
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:47:51.89 ID:yJ8J35aIo



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15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:48:34.26 ID:yJ8J35aIo
時間が時間なので残りは冷蔵庫に入れて、コーヒーカップを手にワークデスクへ向かう。
椅子に腰を下ろし、キーを叩いてノートパソコンのスリープを解除する。

澪「……うーん」

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16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:49:27.30 ID:yJ8J35aIo





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17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:50:18.00 ID:yJ8J35aIo
小さな頃から、何をするにも意識のどこかに律がいた。
それを人は依存と言うのかもしれないけれど、それとは違うと私は思っている。
なにか言葉にしなければいけないとしたら、そうだな、目安、ってところか。

性格がまるで正反対のふたりだからこそ、互いが互いの目安になった。
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18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:51:04.43 ID:yJ8J35aIo
澪「……やっぱり今夜はやめとくかな」

結局溜息を吐いて、ノートパソコンを静かに閉じた。明日の朝は少し早起きをしよう。


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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:52:14.67 ID:yJ8J35aIo



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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:53:08.30 ID:yJ8J35aIo
取り込もうと掴んだ長袖Tシャツはまだ陽の暖かさを残していて、
何気なく袖口を鼻先に寄せて、目を閉じてゆっくりと吸い込んでみる。

 「いい匂いする?」

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21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/10/06(木) 10:54:23.12 ID:yJ8J35aIo



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