127:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:55:59.36 ID:vAi26PND0
 「生娘だったって知らんかった。俺はこう、てっきり……その……もう……羽くらい生えてるもんだとばかり……」 
 ぐす、と鼻をすすってカランは体を起こすと、人指し指を立てて彼の口の前で止めた。言葉を中断させられ、ゼマルディははだけられたその寝巻きから、片方の胸があらわになっているのを目に留めてまた耳まで赤くなった。 
  
 「拭いて……」 
  
128:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:56:40.84 ID:vAi26PND0
 * 
  
  二人は、寄り添って座っていた。 
 あの羽生やしの儀式から一時間ほど。大方のカランの体調は安定し、普通に話せる程に回復していた。 
 眼下の空調施設……地下に作られた広大な巨大フィルター。ゴゥン、ゴゥンと回転の音を立てながら回っている錆び付いたプロペラ。一キロほど伸びている金網の下の、羽一つが数十メートルはあるそれらを見下ろす。 
129:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:59:09.44 ID:vAi26PND0
 その地下施設は、鉄骨に電線が渡してあり、所々にほのかに赤い蛍光灯が取り付けられていた。そのせいで夕焼けのような淡い光景になっている。 
 ピタリと柔らかく、小さな彼女の体に寄り添われ。ゼマルディはガチガチに緊張してしまっていた。背筋を伸ばして、まるで柱のように彼女の体を支えている。 
  
 「な……なぁ」 
  
130:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 19:59:37.31 ID:vAi26PND0
 その地下施設は、鉄骨に電線が渡してあり、所々にほのかに赤い蛍光灯が取り付けられていた。そのせいで夕焼けのような淡い光景になっている。 
 ピタリと柔らかく、小さな彼女の体に寄り添われ。ゼマルディはガチガチに緊張してしまっていた。背筋を伸ばして、まるで柱のように彼女の体を支えている。 
  
 「な……なぁ」 
  
131:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:00:10.02 ID:vAi26PND0
 「だめ?」 
  
 「いやダメじゃなくて……むしろ俺は嬉しいけどさぁ……もうちょっとこう、慎みって奴をだな……いきなり羽生やしの儀式されるとは夢にも思わねぇだろ……」 
  
 「ゼマルディは、女の子とお話するのは初めてさん?」 
132:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:00:41.58 ID:vAi26PND0
 「ルケンとは全然違うねぇ」 
  
 「ルケン? あんな野郎と一緒にすんな。鍛え方が違うんだ」 
  
 「何を鍛えてるの?」 
133:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:01:14.60 ID:vAi26PND0
 腕を正拳でヒュッ、と風を切りながら突き出す。 
  
 「屁でもねーよ」 
  
 「ゼマルディはルケンよりも強いの?」 
134:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:01:50.77 ID:vAi26PND0
 「なぁ、戻ったほうがいいって。ここは空気がわりーんだ。里からの砂が全部ここに飛ばされてくるからさ。その……髪とかにも染み付いちまうぞ」 
  
 「いいの別に」 
  
 「ダメだろ」 
135:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:02:25.61 ID:vAi26PND0
 「外に出るのは初めてだよ。こんなところがあったんだねぇ」 
  
 「何だ、姫巫女ってのはずっとあそこに閉じ込められてんのか?」 
  
 「うん。出ようとするとぶたれるよ。酷いと縛られたりする」 
136:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/09(木) 20:03:00.99 ID:vAi26PND0
 「ま……まぁ、何だ。いきなり夜這いに行っちまって悪かった。待ちきれなくてなぁ。な、どうよ? 俺の花」 
  
 それを聞いて、カランはポケットに手を入れて小さな造花を取り出した。 
  
 「素敵。どのくらいかかったの?」 
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