289:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:16:50.38 ID:z5UY+Nzb0
認めてしまってはいけなかった。
それを現実だと認識してはいけなかった。
しかしカランは。
耳をその両手で強く塞ぎ。
290:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:17:22.03 ID:z5UY+Nzb0
「見るな!」
その声を掻き消さんばかりに怒鳴り声を出したのは、歯を食いしばって立ち上がったゼマルディだった。彼はよろめきながら彼女の脇に転がり込むと、カランを床に押し倒した。そして潰さんばかりにその目を手で押さえる。
「見るな、目を閉じろ! 閉じろ!」
291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2012/02/12(日) 20:17:55.93 ID:z5UY+Nzb0
「ダメだろカラン。折角の……俺からのプレゼントだ。ちゃんと見て、楽しい反応をしてくれなきゃ……」
「いや……いやいやいやいやあああ!」
「嫌、じゃあないだろ? 女の分際で生意気なんだよお前。中々に粋のいい獲物で、捌くのに苦労したんだぁ……あぁ、そういえば」
292:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:18:22.93 ID:z5UY+Nzb0
「さて、カラン」
「いや……」
「今日は男女鍋だ。俺の刀工は滅多に見れるもんじゃあないぜ? お前はラッキーだよ」
293:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:18:56.25 ID:z5UY+Nzb0
涙と鼻水でずるずるになった顔で、痛みと恐怖と訳の分からなさで泣いているカランの骨羽が揺れ、割れた風鈴のようなガラガラした音色が聞こえていた。
それを目を細めて聞いて、ルケンは何度か頷いてみせた。
「いい音出せるじゃないか、お前」
294:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:19:23.33 ID:z5UY+Nzb0
「そして体の各部分を少しずつ落としていって、最後は首だ」
「……」
「ふふ……それを煮るとな、美味いんだ。お前にはいの一番に食わせてやるよ」
295:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:20:17.27 ID:z5UY+Nzb0
どうして動いたのか。
それは、カランにも分からなかった。
叫び声を上げ続けていて破れ、血が出ている喉から。
……どこか重い、気が狂ったのではないかというくらい濁った絶叫がほとばしった。
296:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:20:42.56 ID:z5UY+Nzb0
まさか反抗されるとは思っていなかったのだろう。
ルケンは反応が出来ずに、呆然と……自分に向けて包丁を振り上げたカランを見上げていた。
おとなしく、鈍く。
そしてどうしようもなく弱かった女性の姿ではなかった。
297:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:21:12.52 ID:z5UY+Nzb0
カランの目は血走っていた。
彼女は思わず包丁を肩に刺したまま後ろ向きに倒れこんだルケンに向かって、拳を振り上げていた。
泣きながら、震えながら。
それを振り下ろそうとした時、止めたのはゼマルディだった。血を口の端から垂れ流しながら瞳をカランに向け、何とか立ち上がり……そして彼女の髪を鷲掴みにして引き寄せたのだ。
ルケンが包丁を抜き取り、噴き出る自分の血を何とか押さえようとする。ゼマルディはそれを一瞥し、何かを喚いているカランを片手で羽交い絞めにしたまま、背後の壁に唾を吐きかけた。それを何度も繰り返し、一部に向かって頭から飛び込む。
298:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/12(日) 20:22:45.01 ID:z5UY+Nzb0
お疲れ様でした。第10話に続かせていただきますm(_ _)m
詳しいご案内は>>173でさせていただいています。
お時間がありましたら、ご一読いただけますと嬉しいです。
299:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/02/13(月) 00:28:23.42 ID:y2fnBOi2o
乙
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