過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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339:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:44:38.93 ID:3SORN3Q00
彼によってカランが助かっているのは、少なからずとも事実だ。自分自身もアンドロイドの手をつけてもらい、外見的には問題なく日常を送ることが出来る。
それに、金。
正規の方法ではないのだろうが、ドクはとにかく金を持っていた。
それが今の二人の生命線になっていると言っても、過言ではない。
これだって彼の心遣いだ。カランの体を切り刻んで縫っているところを、ゼマルディに見せたくなかったのだろう。
以下略



340:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:45:08.10 ID:3SORN3Q00
カランは静かに寝息を立てている。麻酔が効いているのだろうか……消毒薬の臭いがする。
龍の体は人間とは違う。それはつまり、この地上で市販されている薬は自分達に効果がないということを指し示していた。ある程度はドクの調合によって効き目はあるが、投薬を続けて治ったと思っている傷口がいきなり開いたり……カランの体はその繰り返しだった。いつまで経っても足が治らないのも、そのせいだ。
土台無理な話なのだ。二百キロ以上もまた旅をするのは。
毛布をそっと戻し、ベッドの脇に座り込む。
カランが狂ってしまったのは、ルケンから逃げ出して上空のドームに入り込んでから……別のドームに逃げ出すために密航したトレーラーの中でのことだった。
以下略



341:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:45:36.95 ID:3SORN3Q00
――額を押さえ、マスクの上から感覚がない顔の皮膚を触る。

人間なんて、脆いものだ。
こんなにも簡単に壊れる。
こんなにも簡単に、崩壊していく。
以下略



342:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:47:11.12 ID:3SORN3Q00
どれだけの間座り込んでいただろうか。
ぼんやりと床を見つめているゼマルディの後ろで、不意にカランがもぞもぞと体を動かした。その羽がリンリンと澄んだ音を発し、彼女は小さく欠伸をして目を開いた。
弾かれたように顔を挙げ、ゼマルディは彼女の脇に屈み込んだ。

「大丈夫か?」
以下略



343:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:47:40.31 ID:3SORN3Q00
「いや……俺がいない間にドクが色々したみたいだから……」

「ドクさん? 来てないよ」

どうやら今の彼女は、記憶が安定しているらしい。ゼマルディのことも夫だと認識できているようだ。
以下略



344:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:48:16.66 ID:3SORN3Q00
「私は元気だよ……」

「ああ、元気だな」

上の空、と言う感じでゼマルディが答える。彼は床に目を落としたまま、知らずの間に握り締めたカランの手に、潰さんばかりに力を込めていた。
以下略



345:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:48:45.69 ID:3SORN3Q00
少女の手を握っていた大きな手……そこから力が抜けていき、毛布から抜き取られると力なく床に落ちた。
大分長いこと、彼は沈黙していた。
カランはぼんやりとした目で俯いているゼマルディを見ていた。
また少しして、彼女は羽根を鳴らしながら言った。

以下略



346:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:49:19.51 ID:3SORN3Q00
「どこにもいかないんだよ……」

「……」

「ゼマルディ?」
以下略



347:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:49:54.60 ID:3SORN3Q00
カランは何かを言おうとしたが、それを寸でのところで押し留めた。しばらく間の悪い沈黙が続く。
やがてカランは、彼からそっと視線を外して天井を向いた。

「俺が悪ィ」

以下略



348:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:50:24.26 ID:3SORN3Q00
「死なないよ」

「……死なない?」

「私は、死なないよ」
以下略



349:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:50:58.16 ID:3SORN3Q00
「ああ……」

「……」

「嬉しいなぁ……」
以下略



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