345:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:48:45.69 ID:3SORN3Q00
少女の手を握っていた大きな手……そこから力が抜けていき、毛布から抜き取られると力なく床に落ちた。
大分長いこと、彼は沈黙していた。
カランはぼんやりとした目で俯いているゼマルディを見ていた。
また少しして、彼女は羽根を鳴らしながら言った。
346:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:49:19.51 ID:3SORN3Q00
「どこにもいかないんだよ……」
「……」
「ゼマルディ?」
347:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:49:54.60 ID:3SORN3Q00
カランは何かを言おうとしたが、それを寸でのところで押し留めた。しばらく間の悪い沈黙が続く。
やがてカランは、彼からそっと視線を外して天井を向いた。
「俺が悪ィ」
348:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:50:24.26 ID:3SORN3Q00
「死なないよ」
「……死なない?」
「私は、死なないよ」
349:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:50:58.16 ID:3SORN3Q00
「ああ……」
「……」
「嬉しいなぁ……」
350:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:51:29.74 ID:3SORN3Q00
その翼からは、リンリンと乾いた……しかしすんだ水のような音が鳴っていた。
「こんなに嬉しいのに……」
「……」
351:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:51:58.90 ID:3SORN3Q00
「…………」
「どうして嬉しいんだろうね……」
ゼマルディはしばらくの間、妻の顔を見ていた。だがやがて手を伸ばし、彼女の指に自分の指を絡めて毛布に押し込む。
352:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/13(月) 20:56:30.23 ID:3SORN3Q00
お疲れ様でした。第11話「龍対龍」に続かせていただきますm(_ _)m
記憶障害を持ってしまったカランを守ろうとするゼマルディでしたが、ルケンが彼らに追いついてしまい……。
前スレ:ex14.vip2ch.com
353:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/02/13(月) 22:07:30.49 ID:qlktQpFDO
そろそろ一番の見せ場、鬱ポイントですね…
354:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 19:56:32.85 ID:EmuY6hvN0
こんばんは。
お付き合いいただき、ありがとうございます。
まだまだ続いていきますので、これからもお願いいたします。
355:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/15(水) 19:59:38.22 ID:EmuY6hvN0
11 龍対龍
程なくして、サバルカンダドームの第一区画にその人間が降り立ったのは、それから三日も経たないでのことだった。
この世界の人間達は、氷という凶器のオブラートに覆われた世界から身を守るためにドームという建造物に身を寄せていた。それは魔法使いも同じことだった。生命体である限り、常温が零下三十度を下回る極寒の世界にそのまま身をおくことは出来ない。
ドームは、それ単体で生命維持機関を有する。つまり空調、浄水設備がある一つの巨大な核シェルターのようなものだ。
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