過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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411:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:18:45.57 ID:Z6fjuYRs0
ゼマルディの足は、半ば地面に埋まってしまっていた。そのままの姿勢で、彼は瞳を鈍く光らせながら体をゆすった。露出しているウロコがハッチのようにガパッと開き、おびただしい量の水蒸気を噴出する。
足が埋まったコンクリートを拳で叩き壊し、ふらつきながらゼマルディはまた立ち上がった。そして地面を片手で引っかいて、その場から離れようとしているルケンを……異形の冷めた瞳で見下ろす。
何が、起こったのだろうか。
また先ほどと同じ、ノーガードの立ちポーズをとった相手を見て、ルケンの心が凍りついた。
そう、その時。
以下略



412:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:19:24.07 ID:Z6fjuYRs0
立ち上がったゼマルディのウロコからは、水蒸気以外のものも噴出していた。霧のように赤い血も、それに混じっている。
それに、ウロコが焼けていた。真っ赤に発熱しているものもある。段々と水蒸気と空気熱で冷やされ、元の深緑色に戻っていくのが見える。
ルケンは、戦闘体制になった瞬間に能力を全開にしていた。敵に向け、戦う気概を少なくとも整えてはいた。

彼は、反発することが出来た。
以下略



413:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:19:49.20 ID:Z6fjuYRs0
だからゼマルディが彼を焼却炉で殴りつけ、あまつさえ花を焼くことに成功したのは……心の底から、単なる偶然の――本当に、偶然の産物だとさえルケンは思っていた。
そう、思ってしまっていた。
悠長に。悠長に……。
彼は定められた最強に寄りかかってしまいすぎていたのだ。
地面に転がりながら、少年はただ目の前の圧倒的な力に震えていた。そこには善も悪も。正義も何もなかった。
以下略



414:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:20:15.79 ID:Z6fjuYRs0
一撃。
一撃だった。

また内臓の破片を吐き散らし、ルケンは動くことが出来ずに地面にうつ伏せのまま横たわった。
体が痙攣している。
以下略



415:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:20:49.06 ID:Z6fjuYRs0
それら全ての要素は。
ゼマルディはルケンが認識することも出来ない速さで動き、そして彼の腹をただ単純に『殴りつけた』という事実を示唆していた。
焦げは空気摩擦。地面の炸裂痕は、音速の衝撃波が発生したことによる破壊痕なのだ。
また一歩を踏み出そうとして、しかし怪物はその場に膝をついた。水蒸気は止まっていたが、体中から今度は、赤い血があふれ出す。噴水のように、霧状の血を流しながら……ゼマルディは裂けた口元からボダボダと涎を垂らしていた。
そのウロコが、一枚……また一枚、と段々剥がれていく。ウロコが生えていた部分の生身は、深い切り傷が開いて骨までが見えていた。血まみれになりながら、異形の怪物はしかし。
以下略



416:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:21:14.91 ID:Z6fjuYRs0
瞳から段々と光がなくなっていくルケンの前に立ち。
半分ほど生身に戻ったゼマルディは、血まみれの体中で彼を、覆いかぶさるように見つめた。
そしてまだ爪が残っていた左手を振りかぶる。

「や…………やめろ…………」
以下略



417:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:21:43.07 ID:Z6fjuYRs0
「ひきょう、だ…………ひきょうだ……」

「…………」

「こんなの…………ひきょう、だ…………」
以下略



418:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:22:13.06 ID:Z6fjuYRs0
「しにたく…………な………………」

「…………」

「いやだ………………いやだ…………」
以下略



419:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:22:40.39 ID:Z6fjuYRs0
ミキミキと鈍い嫌な音をさせながら、ゼマルディがルケンの胸に突き立った五本の爪を動かしていく。それらは少年の心臓を探し当てると、たちまち肉、皮と共に握りつぶさんばかりの力を発し。
その瞬間。
ゼマルディは横殴りに。
生身に戻っていた血まみれの側頭部を……風を切って飛来した鉄の塊に殴りつけられ。
もんどりうって何度か地面をバウンドしながら、数メートル先の道路を滑り。
以下略



420:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/16(木) 20:23:55.62 ID:Z6fjuYRs0
お疲れ様でした。

次回に続かせていただきます。

毎回お付き合いいただいている方々に感謝いたします。


421:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/02/17(金) 00:44:18.50 ID:xdvs2eeVo



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