過去ログ - 少女「ずっと、愛してる」
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443:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:32:19.94 ID:JYEl3aKe0
サバルカンダはスラム区画だ。それは統治が為されていないという事実に直結する。
が。
それはその反面、市民による無法規の自警団を容認するという一面も有していた。事件団といえば聞こえはいいが、ようはただのマフィアだ。しかしそのような悪党共でも、一致団結して身を守ろうとする時はある。
それは、全ての人間に均等に命の危険があるときだ。

以下略



444:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:32:51.81 ID:JYEl3aKe0
関係ないと思っていたので、よく聞いてはいなかった。事実関係はなかった。もし自警団にお抱えの魔法使いがいたとしても、どう考えてもルケンにかなうわけがないと思っていた。信用できるのは自分の力だけだ。その自分の力がかなわないなら、逃げるしかない。
そう、考えていた。
揺れる視界の奥に、スナイパーライフルのような、細身の狙撃銃を連想とさせるものを担いだ多数の兵士が見てとれた。フォルムは狙撃銃だが、違う。後部が大きくせり出していて、二人がかりで支えている。視界が回転しているために正確な数は分からないが、少なくとも道の前後で五十近いそれに狙われていた。

「救出急いで! 一般人をエリアの外!」
以下略



445:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:33:19.98 ID:JYEl3aKe0
彼女は背筋を伸ばし、震えながら立ち上がったゼマルディを見るとまた声を張り上げた。

「第三射撃用意! 一般人の救出が完了、私が止めを刺す!」

(…………ナンダ?)
以下略



446:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:33:52.58 ID:JYEl3aKe0
血まみれで、何とか両足を踏みしばって立つ。そこで兵士達が、タンカにルケンを乗せて運び去ろうとしているのが目に映った。

「キャラァァァァァァアアアアアアアア!」

反射的にゼマルディは絶叫していた。殆どウロコがはがれている状況だと言っても、皮が全て剥けたような血だらけに加え、彼の体は大き過ぎた。そしてその甲高い音は、周囲に彼を敵と認識させるに十分な威力を孕んでいた。
以下略



447:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:34:25.03 ID:JYEl3aKe0
――あいつだけは
――あいつだけは殺さねば
――カランのために
――俺の妻が、笑って暮らせるために
――殺す
以下略



448:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:34:53.25 ID:JYEl3aKe0
ゼマルディの視界が徐々にブラックアウトしていく。世界が揺れていて、ルケンが何処にいるのかも分からない。しかし彼は、視界の端に白い……タンカのようなものを捉え。
体中の力を込めて踏み潰そうと、足を振り上げた。
その途端だった。
何かが、振り上げた足を右から左へと通り過ぎた。
痛みも、何もなかった。
以下略



449:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:35:29.26 ID:JYEl3aKe0
「…………まさかここまで稼動されてる魔導生物が、まだでも現存しているなんて……」

奇妙な訛り……というのだろうか。妙におかしな共有語を喋りながら、赤髪の女は周囲を押し止め、ゆったりと両腕、そして右足をもがなくなって這い蹲るゼマルディに向かって歩き出した。

「けが人の救助、早く!」
以下略



450:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:36:01.95 ID:JYEl3aKe0
ルケンが、別の兵士に運ばれていく。それを庇うように女が立っている。
邪魔だった。
あの女が、邪魔だった。

「ヒィ、ラルケィ、ルケアァァ!」
以下略



451:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:36:31.51 ID:JYEl3aKe0


 妻の声が聞こえた。
 
――夢だと思った。
以下略



452:三毛猫 ◆E9ISW1p5PY[saga]
2012/02/17(金) 17:37:03.24 ID:JYEl3aKe0
だが、その時。
確かにゼマルディは妻の声を聞いた。
カランの声を、彼は聞いた。
建物の影から、白髪を振り乱しながら彼女が走ってくるのが見えた。その奥には、ドクもいたような気がする。彼は憔悴し、青白い顔で何事かを叫んでいた。
妻は、義足をつけていることにはいたが……殆ど外れてしまっていて、片足で走っているようなものだった。
以下略



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