過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:11:59.63 ID:h7sEMOtHo
地下牢へと続く暗い螺旋階段を下りながら、堕女神は思う。
「彼」は、どんな半生を送ったのだろう、と。
――「彼」は、優しい。
飢饉に喘ぐ隣国へ、打算の欠片もなく手を差し伸べた。
以下略
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:13:34.96 ID:h7sEMOtHo
壁に身を預けて座っているワルキューレの前に、いくつもの重厚な金属音が鳴り響いた。
虚空からいきなり現れたのは、彼女を包んでいた武具。
翼のついたサークレットに鎧、脚甲、篭手、そして黄金に輝く斧槍。
どれも、正真正銘、彼女が身につけていたものに違いなかった。
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◆1UOAiS.xYWtC
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2012/03/27(火) 03:15:02.04 ID:h7sEMOtHo
勇者が中庭に出ると、空は曇っていた。
一片すらも青はなく、陰鬱な灰色に空が覆われていた。
濃淡はあれど、空は見渡す限り薄暗い。
中庭の、特に広い一角に武具が置かれているのを見つける。
以下略
93
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:16:16.13 ID:h7sEMOtHo
物騒な仕掛けを内臓した盾を怒声とともに地面に叩きつけた時、テラスの方から何人かが近づいてきた。
肩で息をついてそちらを見ると、待望の「相手」がやってきた。
輝く武具をまとった、「戦乙女」そのもの。
目の前の毒々しい装備を見た後では、どこか心が洗われるような佇まいだ。
以下略
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:17:29.95 ID:h7sEMOtHo
無駄な言葉は一切無い。
互いが必殺の間合いを意識し、既に戦いは始まっていた。
2m半の斧槍と、1m強の長剣。
単純なリーチなら、比べるべくも無い。
リーチが長い、というのはそれだけで如何ともし難い差なのだ。
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95
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:18:26.30 ID:h7sEMOtHo
勇者「『ミス』だな」
ワルキューレ「……貴様、いったい何者だ」
勇者「さぁな。それより、次は俺の『ターン』だぞ」
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:19:05.71 ID:h7sEMOtHo
凍りついたように動かない脚に気合を入れ直し、振り返る。
彼女の後方、僅か2mほどの場所に勇者が立っていた。
心臓を狙い、「届かぬ距離」から剣を突き出したままの姿勢で。
晦ましの殺気を、背中から浴びせた。
以下略
97
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:19:54.24 ID:h7sEMOtHo
戦端を開いたのは、ワルキューレではなく、勇者。
向かって右側、ワルキューレの弱手側へと飛び込む。
未来位置を予測して突きが繰り出されるが、瞬時に減速、間一髪に回避する。
右脇腹をかすめた切っ先により、シャツの繊維が僅かに解れるが、皮膚にすら届いてはいない。
以下略
98
:
◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:21:24.84 ID:h7sEMOtHo
勇者はふと、空気の震えを感じる。
発生源はワルキューレ、その上方。
空中に黄金に輝く魔力の剣がいくつも生成され、勇者を指していた。
ワルキューレは脇に長柄を抱え、棍術にも似た構えを取り、相手を見据えている。
以下略
99
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:21:52.80 ID:h7sEMOtHo
刀身に左手を添えて兜割りを受け止めたものの、危険な膠着状態に陥ってしまった。
耐えている間にもワルキューレの手には力が込められ、捻じ伏せようとさらに重みを増す。
この状態で魔力の剣を繰り出されれば、剣を使っての防御も、雷による迎撃も行えない。
それが無かったとしても、真綿で首を絞めるように、じわじわと押し潰されるという末路もある。
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◆1UOAiS.xYWtC
[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:22:31.43 ID:h7sEMOtHo
雨粒が、へし合う二つの刃に落ちた。
堰を切ったように、徐々に勢いを増し――その姿勢のままの両者を、重く濡らしていく。
どちらも、微動だにしない。
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