過去ログ - 勇者「淫魔の国の王になったわけだが」
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96: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:19:05.71 ID:h7sEMOtHo
凍りついたように動かない脚に気合を入れ直し、振り返る。
彼女の後方、僅か2mほどの場所に勇者が立っていた。
心臓を狙い、「届かぬ距離」から剣を突き出したままの姿勢で。

晦ましの殺気を、背中から浴びせた。
以下略



97: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:19:54.24 ID:h7sEMOtHo
戦端を開いたのは、ワルキューレではなく、勇者。
向かって右側、ワルキューレの弱手側へと飛び込む。
未来位置を予測して突きが繰り出されるが、瞬時に減速、間一髪に回避する。
右脇腹をかすめた切っ先により、シャツの繊維が僅かに解れるが、皮膚にすら届いてはいない。

以下略



98: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:21:24.84 ID:h7sEMOtHo
勇者はふと、空気の震えを感じる。
発生源はワルキューレ、その上方。
空中に黄金に輝く魔力の剣がいくつも生成され、勇者を指していた。
ワルキューレは脇に長柄を抱え、棍術にも似た構えを取り、相手を見据えている。

以下略



99: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:21:52.80 ID:h7sEMOtHo
刀身に左手を添えて兜割りを受け止めたものの、危険な膠着状態に陥ってしまった。
耐えている間にもワルキューレの手には力が込められ、捻じ伏せようとさらに重みを増す。
この状態で魔力の剣を繰り出されれば、剣を使っての防御も、雷による迎撃も行えない。
それが無かったとしても、真綿で首を絞めるように、じわじわと押し潰されるという末路もある。

以下略



100: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:22:31.43 ID:h7sEMOtHo
雨粒が、へし合う二つの刃に落ちた。

堰を切ったように、徐々に勢いを増し――その姿勢のままの両者を、重く濡らしていく。

どちらも、微動だにしない。
以下略



101: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:23:02.54 ID:h7sEMOtHo
問いかけに、彼女は答えない。
答える事が、できない。

眼前の男の全てを把握できた訳ではない。
相手は、強い。
以下略



102: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:23:37.30 ID:h7sEMOtHo
ばしゃぁ、という盛大な水音を合図に、「決闘」は再開された。
降りしきる雨の中を、黄金の武具纏う「戦乙女」と、暗黒の剣を握る「勇者」が切り結ぶ。

雨粒を裂いて、ワルキューレの斧槍が左から右へ、横薙ぎに襲い来る。
首元を狙って放たれた初撃を大きく身を反らせて空振りさせると、
以下略



103: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:24:58.37 ID:h7sEMOtHo
呼吸さえ忘れて、切り結ぶ中で。
遂に、勇者の剣がワルキューレの防御を跳ね除けた。

大きく後方に弾かれた斧槍に引っ張られて、ワルキューレは体勢を崩し、無防備な姿をさらけ出す。
がら空きの胴へ向かい、左下段から引き起こすような軌道で切り上げる。
以下略



104: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:25:58.78 ID:h7sEMOtHo
身を二つに折って吐き気を押さえ込んでいる彼女の眼に、「赤」が飛び込んでくる。
下を向いた視界に、濡れた芝生に落ちる赤い雫が見えた。

勇者「やる、のか?」

以下略



105: ◆1UOAiS.xYWtC[sagesaga]
2012/03/27(火) 03:26:37.87 ID:h7sEMOtHo
晴れ間の下、重い残響音が広がる。
どさりと何かが落ちる音が、二人からやや離れた地点から聞こえた。

空から降り注ぐ光の中、彼女は斧槍を失い、膝を折っていた。
勇者は切り払った姿勢のまま、彼女を見下ろす。
以下略



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