19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:20:10.39 ID:NZSihzP+o
憎んでいる。
そうだ、涼は私を憎んでいる。
私だけではなく、石川社長やまなみさんや……彼を女装アイドルという不本意な立場に追い込んだ全てを。
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:21:20.90 ID:NZSihzP+o
『ゆるひ、ゆるひぐぎゅぎゅぎゅぎゅ』
人の上げるものとはとても思えない、絞め殺される動物のような苦鳴が響く。画面の中では、見知った顔が歪んでいた。
まん丸に目を見開き、涙を流し、小刻みに震えるその姿は、岡本まなみ。
21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:22:51.18 ID:NZSihzP+o
「続き、見ないでいいの? まだまだだよ?」
そう言いながらも、涼は手に持っていたリモコンを操作して、モニターの電源を落とした。
「結局、この後、歯を全部折り取ってね。三日後に見に来たら死んでたよ。失血か窒息が原因かな」
22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:23:36.03 ID:NZSihzP+o
『律子姉ちゃん』
スピーカーから私を呼ぶ声がする。
腕を顔から外し、首だけを持ち上げる。すると、隣の部屋からこちらを見る涼と目があった。
23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:25:05.19 ID:NZSihzP+o
――10日目
この長方形の部屋には、本当にわずかなものしかない。
長辺の壁面は一方が涼の部屋につながる透明な壁で、もう一方にはモニターと拘束用の磔台。
24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:26:01.01 ID:NZSihzP+o
『律子姉ちゃんが僕を拒絶しようとするからだよ』
ぽちゃぽちゃとペットボトルを揺らしながら、彼は嘲弄する。だが、そこで、涼は小首を傾げた。
『このところは従順だったのに、どうしたの?』
25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:26:57.81 ID:NZSihzP+o
「ね、律子姉ちゃん」
涼はしばらく私を見つめていたが、額に浮かんだ汗を拭ってから、声をかけてきた。
「律子姉ちゃん、僕を説得したりしないよね。なんで?」
26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:27:54.44 ID:NZSihzP+o
「一つだけ訊かせてほしいの」
「ん?」
「きっかけはなんだったの? あなたを、決意させたのは」
27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:29:17.52 ID:NZSihzP+o
――18日目
ストックホルム症候群。あるいはその対となる、リマ症候群。
監禁状態にある人間が犯人に感化される。あるいは逆に犯人のほうが人質を思いやるようになる。
28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:30:07.44 ID:NZSihzP+o
思うに、涼の目的がわかってきた時が、一つの転機だったように思う。
涼は、私には執拗に繰り返した性的陵辱を、まなみさんや石川社長には加えていない。当人がそう私に語ったわけではないが、彼女たちに対する
復讐行為について聞く限り、その気配がない。
29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/08/24(金) 20:31:23.64 ID:NZSihzP+o
――24日目
『では、次のニュースです……』
時折、涼の気まぐれで、壁のモニターにテレビ番組が映されることがある。リアルタイムなのかどうかもよくわからないが、外の世界の刺激は私をわずかばかり慰めてくれた。
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