過去ログ - 聖なる夜の小さな物語
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2: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:13:56.02 ID:Vy4ghrqIO
今日もまた会社帰りのサラリーマンやカップルや子供連れ、様々な人がこの街を行き交いその心地良い喧騒を奏でていた筈だ。

だが僕の耳にはそれが全く入っていなかった。

今日はみんなが待ちに待った聖夜。イエスキリストが生誕した日であり真っ赤な服に身を包み、立派な髭を蓄えた老人が子供達にプレゼントを配り世界を回る日。
以下略



3: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:15:35.95 ID:Vy4ghrqIO
「はぁ…はぁ…」

気温は零度に差し掛かろうとしている。寒さは耳や手に切れる様な痛みを与え、息を吐けば白く凝った塊が現れた。

身体も寒さで震え、慣れた動作さえ鈍らせていた。
以下略



4: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:17:09.89 ID:Vy4ghrqIO
早く、もっと早く走らなきゃ。

早くも疲労を溜め込み重くなっていく脚を無理矢理動かす。心臓の鼓動は高鳴り、呼吸が乱れる。

時に段差に躓きそうになるもそれでも構わずただ目的地を目指す。
以下略



5: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:19:54.55 ID:Vy4ghrqIO
その知らせを聞いた時僕はまだ会社で山の様な雑務に追われていた。

急いで片付けなければ定時で帰れないという所だったが、僕は半ば諦めて溜息を吐きながらパソコンの画面を睨みつけていた。

「あのー…電話が入ってますよ」
以下略



6: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:21:41.74 ID:Vy4ghrqIO
ありがとうと言って軽く微笑むと彼女も可愛い笑顔を見せて再び自分の業務に戻っていった。

「はい…なんでしょう?」

受話器の向こうからは聞き慣れた声が聞こえた。少し嗄れた声の持ち主は僕の父親だった。
以下略



7: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:22:37.08 ID:Vy4ghrqIO
「ったく…世の中はクリスマスだってのに残業とは……」

「部長!!」

ぶつぶつと独り言を言う上司に向かって僕は半ば怒鳴りつける様に言った。
以下略



8: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:23:26.39 ID:Vy4ghrqIO
「もしかして…ついにか!!」

上司は何かを察した様に鋭い眼差しを僕にぶつけた。

「はい!!今すぐ行かないと…」
以下略



9: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:24:09.21 ID:Vy4ghrqIO
激しい運動に慣れていないせいか、肺が激しく痛み動悸が僕を襲った。

しかし目的地まであと少しだ、立ち止まる訳にはいかなかった。

「おい痛えな!!」
以下略



10: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:25:01.14 ID:Vy4ghrqIO
「ゲホッ…ゲホゲホ……」

やっと辿り着いた。その建物、市立病院の前で僕はようやく足を止めた。

乱れた呼吸を落ち着かせる為にすぅーっと深呼吸をする。
以下略



11: ◆SOkleJ9WDA[sage]
2012/12/14(金) 00:25:53.87 ID:Vy4ghrqIO
病院の中は灯りこそ付いているものの人の姿はほとんど無く、受付のナースとごくわずかな患者のみだった。

「あの…301号室の……」

受付でなにやら真剣に資料を見つめているナースに声をかける。
以下略



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