過去ログ - 眠り姫をおぶって山登りはキツい。
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2: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:23:43.42 ID:ImpwMRpT0
 額の汗が目に染み込んで足を止める。 
 途端にぼうっと意識が揺らいだ。 
  
 男「体力ないな、僕は」 
  
3: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:24:11.12 ID:ImpwMRpT0
 それが切欠か次々に思い出が蘇る。 
 例えば、彼女との出会い。 
  
 ある日の日直は僕と彼女だった。 
 放課後に軽い掃除をするために残っていた僕らの間は沈黙だ。 
4: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:24:53.36 ID:ImpwMRpT0
 『にゃん、にゃん、にゃーご』 
  
 よほど仲良くなりたいのか猫真似を始める彼女。 
 丸めた右手で空を引っ掻く。 
  
5: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:25:37.00 ID:ImpwMRpT0
 「小屋だ……少し休もうか」 
  
 休憩所だろうか、古びた木の小屋があった。 
 中は片付いていたが埃が被っていた。 
  
6: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:26:09.39 ID:ImpwMRpT0
 『お、男くんはさ、好きな人とか、とか、いるの?』 
  
 学校の帰りに近くの喫茶店へ寄った時のことだ。 
 どう答えるのが適切かな、と考えて。 
  
7: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:26:48.85 ID:ImpwMRpT0
 「よし、行こうか」 
  
 充分とはいえない休息を終えて再び山頂を目指して登る。 
 背負った女さんは死体のようにぐったり力が抜けていた。 
  
8: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:27:32.43 ID:ImpwMRpT0
 『男くんは夢ってある?』 
  
 女さんと幸せな家庭を築くことかな。 
  
 『男くんってそういうの照れずに言うよね……こっちは照れるけど//』 
9: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:28:00.17 ID:ImpwMRpT0
 「そうだ、女さんはいつも突然な人だから」 
  
 踏みしめた拍子に小枝がぽきっと折れた。 
 バランスを崩しかけたのを必死に踏ん張る。 
  
10: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:28:46.34 ID:ImpwMRpT0
 朝に登り始めたのにも関わらず山頂についたのは真夜中だった。 
 十八時間は歩いたのか。 
 休みながらとはいえ自分を褒めてやりたい。 
  
 女さんが居たからできたことだ。 
11: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:29:31.97 ID:ImpwMRpT0
 目が覚めると昼過ぎだった。 
 雨が降ることもなく、霧もなく。 
  
 女さんが興奮していた壮大が目に移る。 
 なるほど、壮大だ。 
12: ◆QkRJTXcpFI[saga]
2013/01/17(木) 02:30:08.02 ID:ImpwMRpT0
 彼女に告白された時、彼女の周りだけが色づいて見えた。 
 彼女だけが僕にとっての色だった。 
  
 世界は灰色。 
 物心ついた時からずっとそう。 
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