967:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:49:28.74 ID:nQ4y3AGI0
飯峯中3年A組の新担任を名のる榊原吾郎は、やっと全員が出発したので、分校内のメインコンピューターなどが設置されている教室に入り、そこに置かれたソファーにどかっと座り込んで休憩を取っていた。ただ体は休憩していても頭は働かせていた。
ソファーの前の机の上に何十枚も積み上げられた資料のコピーをじっと見つめ、時折何かを考えているように腕を組んだり、頭をかいたりしている。
この大東亜共和国には徴兵制がない。かわりに存在している制度がこのプログラムなのだ。目的は生徒同士を戦わせ、最後の一人になるまでかかった時間をはじめ、各種の統計を重ねることだ。だがこのプログラムにはそれ以外に、世間には表沙汰にはなっていない裏の目的もある。
「榊原上官」
兵士の一人が榊原に近寄ってきた。兵士達は榊原のことを普段から「榊原上官」と呼んでいるのだ。
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2013/03/10(日) 11:49:59.62 ID:nQ4y3AGI0
右手に持ったこのクラスのスポーツ診断テストのデータが書かれた紙を見ながら榊原が言った。
「女子では新城忍だろうな。男子の剣崎程ではないとはいえ、こいつもかなりの空手の実力者だ。あと穴を狙うとしたら椿美咲なんかも運動能力が高いからいいかもな」
「そうですね」
「まあだいだいこの辺りが票の多くを占めてるな。しかし男子の沼川や、女子の吉本とかもこの調子だとダークホースになりかねんな。このクラスのプログラムは久々に面白いことになりそうだぞ」
榊原は本当にわくわくしてきたようだ。
969:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:50:34.00 ID:nQ4y3AGI0
霧鮫美澪(女子4番)はひたすら林の中を歩き続けていた。彼女はこの林の中で獲物を探しているのだ。
このゲームで言う獲物とは、すなわち自分以外の生徒のことを指す。そう、雅史が予想していたとおり、美澪はこの殺人ゲームに乗ったのだ。彼女はとにかく誰かに出会ったら、誰だろうと問答無用で相手に襲いかかる気でいた。
美澪の手には当然武器が握られているのだが、この武器がどうにも彼女に似つかわしくない。
美澪のディパックに武器として入っていたのはエアウオーターガン。要するに水鉄砲のことだ。
このエアウオーターガンは、夏祭りの夜店にでも売っているようなちゃちな水鉄砲とは違う。本体の上部に取り付けられているタンクには400ミリリットルもの水を入れておくことができ、この水を空気の圧縮された力を利用して数十メートルも離れた的に向かって撃つこともできるのだ。だが、いくら普通の水鉄砲より優れているとはいえ、やはり水鉄砲は水鉄砲である。つまり、美澪のディパックに入っていた武器は、いわゆるハズレの武器であるのだ。だとしたらなぜ美澪はそんな役にも立たないような武器を持ち歩いているのか? それは美澪にしか分からない理由があったのだ。
970:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:53:44.71 ID:nQ4y3AGI0
「さあ覚悟しな。お前は今から俺に殺されるんだからな」
「いいえ! 死ぬのはアンタよ!」
美澪は再びエアウオーターガンを、ニ度三度と発射しながら、少し荒げた声で言い返した。須王はそれらすべてを、いとも簡単にかわしながら話す。
「お前も俺と同じように、このゲームが始まるよりも前に、人を殺した事があるんだろ?」
「そうよ! それがどうしたって言うのよ?」
971:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:54:43.06 ID:nQ4y3AGI0
雅史はすでに奥村秀夫に襲われ、そして殺されかけたのだ。雅史の頭にはそのときの恐怖がこびり付いてしまっていた。
また誰かに襲われる危険性があると思った雅史は、自己防衛のために銃を捨てることが出来なかった。だが、それでも誰かに銃を発砲するということを拒んだ結果が雅史に再び銃をディパックにしまわせたのだ。
銃など撃ちたくはないが、手放すのも怖い。そんな複雑な心境だ。
雅史は銃をデイパックの中に入れた。デイパックの口のファスナーを閉めようと手を伸ばしたが、いつでも銃を取り出せるように開けたままにしようと考えて手を引っ込めた。
いつでも銃を取り出せるように…。そう考えている自分にまたムカムカした。
972:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/03/10(日) 11:54:54.01 ID:jL6YsQ4b0
荒巻何時になったらこの馬鹿アク禁にしてくれるんだろ…
973:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 11:59:09.14 ID:nQ4y3AGI0
「なぁんでぇ!?」
それが合図だった。
パンっと音と同時に女生徒が倒れた。
「きゃあああ!!!」
「いやぁ!!」
974:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:01:11.63 ID:nQ4y3AGI0
パァン!
階段を登ってる途中、一人の男子が撃ち殺された。
「きゃあ!!」
「やだやだやだぁ!!」
975:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:01:50.71 ID:nQ4y3AGI0
林の中を一人歩く姿があった。彼の名前は柊靖治(男子19番)。そう、名城雅史の親友の一人だ。
分校を出発してから、かなりの時間が経っているのにもかかわらず、彼も雅史と同じく、仲間になれるような、話が分かるクラスメイトとは、いまだに出会えてはいなかった。と言うよりも、彼は分校を出発して以来、誰にも遭遇すらしていなかったのだ。つまりはこのゲームに乗ってしまった生徒にもまだ出くわしていない。そのせいか、彼はまだ冷静に思考を働かせ続けることが出来ていた。
彼の目的は、とにかく話の分かるクラスメイトに出会い、そして共に脱出する方法を見つけだすということだった。考えていたことは雅史とまったく同じである。
もちろん靖治が一番信用できる人物と言えば、雅史、それから杉山浩二(男子11番)、それに桜井稔(男子9番)であるのだが、話が分かるクラスメイトとなら誰とでも会えればいいと思っていた。
しかし先ほど、どこかから銃声らしき音が聴こえてきた。もちろんその銃声とは富岡憲太が銃を撃ったときのものだ。しかし当然、靖治には銃を撃った人物が誰であるのかなど知る由もなかった。ただこのゲームに乗ってしまったクラスメイトが存在することは分かった。
976:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:02:18.38 ID:nQ4y3AGI0
彩香の首には枝からまっすぐに延びたロープが巻き付いていた。首を吊っている状態だ。
くそっ!自殺か!
靖治は自分がよく知っているクラスメイトの一人が、自分の目の前で、こんな姿でいることに愕然とした。だが、もしかしたら彩香はまだ息があるかもしれない。靖治は荷物を全て木の根本に置き、幹によじ登って枝からロープをほどき、彩香の体を地面に寝かせた。そして彩香の息があるかどうかを確かめようとしたが、すでに彩香の体は冷たくなっており、死んでいることは明らかであった。
戸口さん…。
977:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/03/10(日) 12:03:14.73 ID:nQ4y3AGI0
蛹鈴%蛻縺九i繧
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