902:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:45:27.78 ID:868/ISGe0
今はその騒がしさも軽さもなりを潜めており、顔を膝に埋め、時折嗚咽や鼻を啜る音が聞こえる。
軽い男は嫌いだが、うじうじしているのも見ていて腹が立つ。
「内藤くん。
いつまでもうじうじ泣くのはやめてくれない?
903:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:46:42.68 ID:868/ISGe0
不意に恒祐が梨杏から離れた――いや、恒祐は大きく目を見開いた状態で自分の意思に反して梨杏との距離を取らされた、という言い方が正しい。
恒祐は襟を後ろから引っ張られ、バランスを崩して仰向けに倒れていた。
「何すんだよ…林崎ッ!!」
904:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:47:18.82 ID:868/ISGe0
日比野迅(男子十五番)と水田早稀(女子十七番)が休息を取っている民家から見ると北西に位置するE=06エリアに、迅と早稀が探し回っている対象である芥川雅哉(男子二番)と奈良橋智子(女子十一番)はいた。
「…トモー、ここは神社?」
「…みたいだね、鳥居があるし。
905:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:47:56.74 ID:868/ISGe0
そして、戦場において頼りない智子を支えて励ましてくれる優しさ。
星崎かれん(女子十六番)から、『雅哉に騙されてはいけない』と忠告を受けたこともあったが、今智子の隣にいる雅哉の言動に嘘があるとは思えない。
きっとかれんは、派手な外見や気だるそうな態度の中にある雅哉の本当の心を見ていなかっただけに違いない。
智子が惹かれているその心こそが、雅哉の本質だと信じている。
906:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:48:29.87 ID:868/ISGe0
伊達に、頭脳レベルが全国平均を大きく上回る帝東学院において、真壁瑠衣斗(男子十六番)・芳野利央(男子十九番)に次ぐ、クラス・学年共に第三位の成績を修め続けてはいない。
少ない情報の中、智子が最も警戒しているのは、榊原賢吾(男子七番)・松栄錬(男子九番)・鷹城雪美(女子九番)・湯浅季莉(女子二十番)という一見バラバラに見えるが個別に見れば関係性のある6班だ。
その根拠は、プログラム開始直後に響いた銃声だ。
最初に出発した木戸健太(男子五番)・城ヶ崎麗(男子十番)・朝比奈紗羅(女子一番)・鳴神もみじ(女子十二番)という麗とその取り巻きで構成された5班と、6班のみが教室を出た時点で銃声が響いた。
907:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:50:05.92 ID:868/ISGe0
小石川葉瑠(女子五番)といえば、遼子や未久と仲が良く、教室でいつも大きな声で騒いでいるムードメーカーの一人で、頭の回転が速い女の子だったが、先程の放送で名前を呼ばれた。
ライド(担当教官)曰く、リーダーの相葉優人(男子一番)の死亡により、首輪が爆発したことが死因となった。
その場に居合わせたということは、智子たちの首にも巻き付いている首輪が爆発するところを目の当たりにしてしまったのだろう。
想像しただけで胃の中の物が逆流してきそうだった。
908:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:50:42.54 ID:868/ISGe0
プログラム本部である小中学校から見て真東に位置するE=05エリア、茂みの下からひょっこり顔を覗かせた暗がりの中で光る2つの瞳に、広瀬邑子(女子十五番)はたたっと駆け寄ってしゃがみ、小さな手を差し伸べた。
警戒しているのだろうか、猫は近寄らずに耳をピクピクと動かしていた。
「…誰かの飼い猫だったのかもね、首輪が付いてる」
909:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:51:08.75 ID:868/ISGe0
邑子を挟んで永佳と反対側にしゃがんでいた望月卓也(男子十七番)に訊くと、元気は足りないけれど人懐こい笑みを返してくれた。
「おう、チワワの“いぬ丸”と、最近拾って飼い始めた“ワン太”!
すっげー可愛いの!」
910:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:52:09.04 ID:868/ISGe0
背丈は邑子と似ているのに邑子と違ってしっかりしていて気の強い阪本遼子(女子八番)の、「アンタ、永佳とか春川とかに甘えてばっかじゃ駄目なんじゃないの?」という声が聞こえてきそうだが。
いつまでも猫を相手にしているわけにもいかないので、邑子たちは猫に別れを告げ、再び歩き出した。
はっきりとした目的地はないのだが、クラスメイトを探すために。
クラスメイトを探し、殺めるために。
911:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/08/05(月) 09:54:10.31 ID:868/ISGe0
身体に痛みを憶え、湯浅季莉(女子二十番)はゆっくりと瞼を持ち上げた。
顔の下敷きになっていた右手がじんじんと痺れているし、首が痛む。
まるで授業中によく眠った後のよう――そこまで考え、季莉は眉を顰めた。
おかしい。
季莉は上半身を持ち上げたのだが周りは暗くてよく見えないので、自分が体を預けていた板を触り、そこから手を滑らせてその全体像を把握した。
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