過去ログ - 勇者「王様が魔王との戦争の準備をしている?」 2スレ目
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1: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:39:42.14 ID:3mmpyc380
勇者「王様が魔王との戦争の準備をしている?」の2スレ目です。
彼らの物語にもう少しおつきあいください。

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2: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:41:00.94 ID:3mmpyc380
―――――――――――――――――――――――――

 アルプが死んだ。

 彼女の首を刎ねた兵士の視界は共有されている。それを通して、わしには光景が見える。
以下略



3: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:41:28.03 ID:3mmpyc380

クレイア「し、しょう」

 倒れ伏している弟子が呟いた。最早彼女の眼は見えていない。重力に逆らう体力もない。いつ死んでもおかしくないのに、依然として小康を保っているのは、ひとえに気力のおかげだろう。
 彼女が死ねばこの空間は解ける。この空間が解ければ、蘇生も意味をなさない。
以下略



4: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:42:11.65 ID:3mmpyc380

グローテ「ルニ。ゴダイ。無事か」

 魔術を介して通信する。精神を感応させるのは、流石に恐ろしかった。

以下略



5: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:42:37.29 ID:3mmpyc380
 なるほど、遠くでひときわ大きく炎のあがっている地点がある。光が走り、爆発が起こり、火炎が立ち上る。その繰り返し。
 全部で何度そうなったろうか。十回? 二十回? そうしている間にもカウントはどんどん減っていく。七五〇。七三〇。七〇〇!

 焦燥を感じた。このまま九尾が殺せないかもしれない――というのではない。
 仲間を強敵に突っ込ませたうえで、自らは後ろで見ているだけのこの立ち位置に、だ。
以下略



6: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:43:17.21 ID:3mmpyc380

九尾「ろう、ろぶあ、あああああぁっ! ろっ、ろうびゃ、老婆! 貴様!」

九尾「アルプを、アルプをアルプを、あいつを! よくもあいつを!」

以下略



7: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:43:51.53 ID:3mmpyc380

 くぐもった声。地上の兵士たちが頭蓋を撃ち抜かれて即死している。

 九尾の肌には、すでに傷すらない。

以下略



8: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:44:20.95 ID:3mmpyc380

 世界を救う。世界を救いたい。世界を救いたかった。
 でも、わしにはそんな力はなくて、だからアルスに夢を見た。希望を抱いた。
 彼のできなかったことが、こんな自分にできるだろうか? 答えは否。それでも、やらなければいけない。義務だ。

以下略



9: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:44:47.03 ID:3mmpyc380

 腕の一振りで、ついに二人が地面へと落下していく。
 カウントが二つ減った。

 じゃが、これでいいんだろう!? 二人とも!
以下略



10: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:45:13.48 ID:3mmpyc380

 九尾とは直線距離にして40メートルを切っている。二人との戦闘、そしてマダンテに意識を集中していた九尾は、そこまでの接敵を許してしまった。
 願わくばそれが敗因となることをっ!

ポルパ「ビュウッ!」
以下略



11: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:46:13.62 ID:3mmpyc380

 槍が投擲された。
 反射的に九尾はそちらを迎撃、空中で体勢を崩したところを火炎弾の驟雨が襲う。
 障壁で大したダメージは与えられなかったが、その隙をついてポルパとビュウは九尾の左手首を切り落とす。

以下略



12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:46:56.67 ID:3mmpyc380

九尾「くそ、人間のくせに、わらわらわらわらっ! 蟻なら蟻らしく地べたを這いつくばっていればいいものを!」

ハーバンマーン「狙えぇっ……撃てぇっ!」

以下略



13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:47:25.65 ID:3mmpyc380

ジャライバ「緊急術式起動――!」

 ジャライバ・ムチンの反応は早かった。号令とともに、幾度も繰り返された動きなのだろう、部隊の全員が懐から符を取り出して、それを一息に破る。
 防御障壁を閉じ込めた、詠唱破棄の符だ。
以下略



14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:47:53.87 ID:3mmpyc380

 つまり、最大であと四発のマダンテがやってくる。
 そして、それに耐えれば勝てる。

 ……勝てる?
以下略



15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:48:22.93 ID:3mmpyc380

 ……要は、わしとクレイアがくたばらなければいいだけの話。
 我慢の先にある勝利が、微かにだが、見えてきたではないか。

ハーバンマーン「ジャライバ、メラゾーマの連打だ! 少しでも削るぞ!」
以下略



16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:48:57.45 ID:3mmpyc380

 目の前で戦っていた兵士が顔面を焼かれて倒れた。その背後から二人は二手に分かれ、満足に動かない体を何とか動かしながら、九尾を背後から切りつける。
 九尾の反応はいまだ十分に早いが、当初の神速からは程遠かった。剣ごとビュウの右腕を切断し――ポルパのほうまでは文字通り手が回らない。体勢を逸らしてなんとか回避した。

 ビュウの呻き声。一瞬ポルパがそれに気を取られた隙に、一歩九尾は後ろへ跳んだ。
以下略



17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:49:44.44 ID:3mmpyc380

 九尾は上空へと逃げた。そこへ槍がまたも投擲され、九尾の脇腹を掠ってゆく。
 バランスを崩した九尾へと、またもメラゾーマの雨。仕方がなしに障壁を唱えながら、足元にいったん力場を生み出し、緊急回避的に集団から距離を取る。

九尾「行きつく暇も――」
以下略



18: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:50:16.16 ID:3mmpyc380

ビュウ「右手はなくても左手があるっ!」

 誰も彼もが倒れ伏した中で、唯一彼だけが走っていた。
 力場を大きく踏みしめて、左手で剣を持って。
以下略



19: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:50:46.89 ID:3mmpyc380

 肩口に剣が食い込んで、腕を切断することはなかったが、確かに乳房まで傷が達した。

 九尾がぐらつく――踏みとどまる。

以下略



20: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:51:14.79 ID:3mmpyc380

 しかし、今、なんて言った?

 アルス、と。
 この弟子は言ったのか?
以下略



21: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2013/03/20(水) 01:51:40.73 ID:3mmpyc380

 わかったものではない。あぁそうだ。わかったものではないからこそなお恐ろしいのだ。何がどうなるのかわかっていれば対処の仕様もあるものを。
 ……魔王と化したあやつ相手に、本当に対処の仕様があるかは、甚だ疑問であったが。

 九尾は力場に直立したまま、ふん、と鼻を鳴らした。
以下略



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