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2013/03/24(日) 02:03:19.98 ID:7LnCOhGJ0
雪歩に促され、美希以外の者達は部屋を出た。
皆、部屋の中の張り詰めた空気から解放された気分になったのか、一様に大きくため息をついた。
「少し、一服してくるよ」
高木はそう言って、席を外した。
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2013/03/24(日) 02:05:04.61 ID:7LnCOhGJ0
雪歩は、その場から後ずさりしていた。
自分は、何という勘違いをしていたのだろう。
自分が頑張れば、事務所も明るさを取り戻せるとばかり考えていた。
救世主にでもなろうとしたのか?
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2013/03/24(日) 02:06:45.53 ID:7LnCOhGJ0
「―――そうか、分かった」
大手芸能事務所、961プロの社長である黒井祟男は、社長室にて受話器を握っていた。
「――素人めいた言葉を吐くな。嫌ならこの事を明るみに出してみるがいい。
その時、貴様らは今の仕事を続けられると思わんことだ」
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2013/03/24(日) 02:07:47.80 ID:7LnCOhGJ0
【7】
雪歩が事務所に来なくなって、もう一週間になる。
その夜、真はたるき亭ビルの屋上にいた。
143:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:09:39.73 ID:7LnCOhGJ0
「どうやら、軽度の脳梗塞だったようだ」
高木は、言葉を慎重に選びながら、ゆっくりと皆にプロデューサーの症状を説明していた。
「しばらくは手足に痺れが残るとのことだが、重篤の患者に見られるような精神障害は無い。
今日は、直接彼と話をすることができたが、話し方も落ち着いていて問題は無かった。
144:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:11:36.10 ID:7LnCOhGJ0
真は、屋上の手すりをギュッと握り締めた。
プロデューサーが倒れた原因は、一言で言えば過労だろうとのことだった。
律子は、彼が抱えていた業務の処理に追われたが、その量の多さに驚いていた。
なぜ自分に振ってくれなかったのか、とも言っていた。
145:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:12:22.35 ID:7LnCOhGJ0
「何泣いてんのよ」
驚いて真が振り返ると、伊織が立っていた。
月明かりに照らされた茶色の長髪を棚引かせ、腕にはウサギのぬいぐるみを抱きかかえている。
「見ないでよ」
146:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:14:16.18 ID:7LnCOhGJ0
「何で泣いてたか、って聞かないの?」
真は、伊織に聞いた。
「別にいいわ―――何となく分かるし」
伊織は、月明かりに照らされた遠くのビル郡を眺めながら答えた。
147:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:15:41.10 ID:7LnCOhGJ0
ある日の早朝、律子は欠伸をしながら事務所の階段を上っていた。
プロデューサーが倒れてからというもの、当然彼女の負担も増えた。
業務を処理する時間を捻出するには、今のところ睡眠時間を削るしかない。
営業をする必要さえ無ければ、ノーメイクで出社できるのに―――。
148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/24(日) 02:17:09.65 ID:7LnCOhGJ0
茶色のショートカットで、身長は自分と同じ――いや、少し高いくらいか。
不思議に思っていると、やがて少女もこちらの存在に気づき、向き直った。
「―――おはようございます、律子さん」
少女は、両手を体の前に置き、丁寧にお辞儀した。
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