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2013/03/23(土) 22:56:38.54 ID:sFFUNv8Z0
「いいえ、その必要はありません」
ゆっくりと、しかし極めて冷徹な声がレッスン室に響いた。
誰もが皆、今の声が貴音のものであると、すぐに理解することができなかった。
「美希、今日はもう帰りなさい。
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2013/03/23(土) 22:59:27.28 ID:sFFUNv8Z0
「皆のためになることができて嬉しいと、本当にそう思うのなら、普段の練習も真摯な姿勢で望んで然るべきです」
美希は貴音の言葉に何を言い返して良いのか分からず、キッとその目を睨んでいるが、貴音は全く動じる様子は無い。
「ジュピターとの合同練習以後、私達は心を新たにし、真剣な姿勢で精進を重ねることを約束したはずですね」
「貴女は嘘つきです、美希」
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2013/03/23(土) 23:01:25.14 ID:sFFUNv8Z0
「まだ練習していくのか?」
響の問いかけに、雪歩はいつも通り笑顔で応えた。
「あまり無理しない方が良いよ」
「うん。ありがとう、真ちゃん」
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2013/03/23(土) 23:03:38.50 ID:sFFUNv8Z0
その甲斐もあってか、最近はレッスンのコーチや、自身を担当するプロデューサーに褒められることが多くなった。
「真達から聞いたぞ。まだ居残り練習を続けてるんだってな」
マンツーマンでのレッスン後、プロデューサーから唐突に指摘され、雪歩は顔が赤くなった。
本当は、それ以外にもトレーニングはしているのだが、恥ずかしくて言えない。
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2013/03/23(土) 23:05:30.73 ID:sFFUNv8Z0
「自分から四面楚歌になるような状況を作って、何がしたいんだか――」
プロデューサーは、ハァと大きくため息をついた。
「み、美希ちゃんは大丈夫です。私なんかと違って、すごいですから――」
雪歩は、震える声でプロデューサーに言った。
68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 23:08:20.44 ID:sFFUNv8Z0
美希がエントリーしたオーディションの当日がやってきた。
前評判通り、ジュピターもエントリーしている。
会場となるテレビ局はお台場にある。
環八通りから羽田出入口で首都高に乗り、昭和島ジャンクションで湾岸線に乗り換える。
69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 23:09:19.60 ID:sFFUNv8Z0
そろそろ3分前になろうかという時、律子の携帯が鳴った。
携帯を握り締めていた律子は、驚いた拍子に通話ボタンを押していた。
「もしもし、律子? ――さん」
「もしもし? あんた今どこにいるのよ!」
70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 23:11:32.39 ID:sFFUNv8Z0
「全員、集まりましたか? では、今日の参加者の確認を行います」
審査員が、参加者の名前を読み上げる。
ジュピターの名前が呼ばれると、会場に「おぉ〜」という歓声が沸いた。
「まだ始まってもいないのに――」
71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/23(土) 23:13:51.48 ID:sFFUNv8Z0
オーディションが始まり、各アイドルが銘々に磨き上げた実力を披露する。
今日の流行はダンスであり、特にダンスアピールに重きを置くアイドル達が多いようだった。
あまりのレベルの高さに圧倒されたが、やがて雪歩は、いつの間にか美希の体が震えているに気づいた。
さらに、今まで見たことも無いほど真っ青な顔をしている。
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2013/03/23(土) 23:16:21.17 ID:sFFUNv8Z0
「呼ばれなかった方はお帰り頂いて結構です。お疲れ様でした」
審査員はジュピターのエントリー番号を告げると、最後にそう付け加えた。
合格者発表よりも前に、美希は歌い終わった後、逃げるように会場から既に去っていた。
後を追おうとする雪歩を、律子が制した。
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