218:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:10:31.82 ID:R3N8s+H6o
「あなたはそこに居ていいんだよ。だってそこ以外にあなたに居場所なんてないから」
声はわたしの頭の中で直接響いていた。空気の振動を伴わない声。
意味が先立ち、音が追いかけるような声。
219:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:11:08.31 ID:R3N8s+H6o
「ねえ、聞いて。あなたはもう自由なの。何にも縛られる必要はない。
本当は縛られてすらいなかったの。最初から自由なの。
誰もあなたを縛り付けないし、誰もあなたを必要としない。何もあなたに求めない。
だからもう苦しまなくていいの。あなたはそこに居るだけでいいの。そうすればすべて終わるから」
220:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:11:42.68 ID:R3N8s+H6o
声はそれ以上何も言わなかった。
けれど、声の主の気配だけが、辺りに散らばったままだった。
わたしの足元の絨毯にも、壁にも、窓にも、扉にも、階段にも、中庭の木々にも、雨の雫の一粒にさえ。
221:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:12:09.14 ID:R3N8s+H6o
◇
階段を途中まで降りたとき、話し声がするのに聞こえた。
声だけで分かる。シラユキとツキが、玄関ホールで話をしていた。
222:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:15:02.73 ID:R3N8s+H6o
ツキの、その奇妙な質問に、シラユキは少し間を置いて、
「……はい」
223:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:15:30.67 ID:R3N8s+H6o
すっかりと混乱した様子のツキに対して、シラユキは落ち着いた口調で答えた。
「わたしにもわかりません。どうにかしたいとは思いますけど、でも、わたしにはどうすることもできない。
それはもう、わたしたちがどうこうできる次元にはないんです。
224:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:16:16.86 ID:R3N8s+H6o
「シラユキ、俺はもう駄目かも知れないよ」
震えた声でツキは言う。
225:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/31(金) 07:16:47.05 ID:R3N8s+H6o
つづく
185-11 増えただけこと → 増えただけのこと
226:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 07:50:02.06 ID:pjZQbDuT0
乙
急に話が動いたからこのまま一気に終わるんじゃないかと途中心配になったがまだまだ続きそうで一安心
ここ見るのが毎朝の楽しみになってます。頑張ってください
227:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 07:56:58.80 ID:16BxksOAO
乙
目が離せない。
228:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/05/31(金) 16:49:15.62 ID:5ZBl4b0DO
アヤメの未来に幸福はあるのだろうか…
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