過去ログ - 少女「雨が止んだなら」
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281:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 07:44:10.38 ID:10ecUgk1o

「あなたにとって、家は安らげる空間ではありませんでした。
 学校に行くことだって、家から離れられる安堵を除けば、楽しいことでもなかったでしょう。
 苦しいばかりだったでしょうね。唯一の友だちだったツキと、その家族。それからシラユキという子猫。
 もし苦しみではないところがあるとしたら、そうした人々との交流くらいでしょう」
以下略



282:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 07:45:25.19 ID:10ecUgk1o

「そうして、あなたは死にました」とシラユキは言った。

 他人事のようなニュアンス。そのことが、むしろ事実を際立たせていた。
 
以下略



283:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 07:46:21.18 ID:10ecUgk1o

 父親はいつも仕事で帰りが遅かったし、義母は父の前では良き妻を演じていた。
 ……いや、良き妻だったのだろう。きっと良き母にもなれたはずだ。
 でも彼女はそれを拒んだのだと思う。きっと、そうだと思う。

以下略



284:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 07:47:00.49 ID:10ecUgk1o

「ひとつだけ、聞いておきたいことがあります」

 シラユキは真剣な瞳でわたしを見つめた。 
 鳶色の、まんまるの瞳。あの猫ではない、と彼女は言った。でも、よく似ている。
以下略



285:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 07:47:50.93 ID:10ecUgk1o

「では、まだ生きて帰る術があると聞いても、あなたは嫌がるだけなのでしょうね」

 その言葉に、彼女の言う通り、嫌な気持ちになる。
 選択の余地がないこと、選択が終わったあとだからこそ、解放されたと言えるのだ。
以下略



286:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/04(火) 07:48:17.79 ID:10ecUgk1o
つづく


287:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/04(火) 17:20:02.31 ID:W62/vLQLo



288:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/06/04(火) 22:52:14.16 ID:UKZVlNWAO
明日が楽しみだ。


289:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:34:30.97 ID:YX4Y62yro



 風が吹いた気がした。冷たく湿った風だ。少しだけ雨を揺さぶって、すぐに消えた。
 生き物の気配のしない森の中に、わたしたちは立ち尽くしている。
以下略



290:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:35:04.05 ID:YX4Y62yro

「つまり、全部が全部、わたしの自作自演ってこと?」

 そう思うと、なんだかこんな会話すら無意味だという気がしてきた。 
 人形遊びのようなものだ。自分の頭の中での会話。
以下略



291:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/05(水) 05:36:11.30 ID:YX4Y62yro

 彼女なりに、噛み砕いて説明したつもりなのかもしれないけれど、わたしにはさっぱり分からなかった。
 シラユキは少し黙った。それから気を取り直すように深呼吸をする。
 長い睫毛が、かすかに揺れた。

以下略



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