過去ログ - 魔法使い「勇者がどうして『雷』を使えるか、知ってる?」
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:45:14.51 ID:+j7WNh9Vo
嵐の夜、廃屋の中で風を避けて一枚のマントの内で暖め合いながら眠った夜がある。
ごうごうと吹きつける音の中でも彼女は物怖じする事が無かったが、雷だけは別だった。
身を竦ませる彼女の頭を抱き締め、落ち着けるための見せかけの悪態をついて眠った事もある。
一夜の寝床を得た宿屋で、彼女にベッドを渡して床で眠った夜がある。
以下略
176
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:46:54.18 ID:+j7WNh9Vo
――――旅を始めてちょうど六年が経つ。
騎士の国から離れた、小さいが活気のある町の宿屋に部屋を取っていた。
一階の酒場を覗く二階の吹き抜けで、眠る前の酒を彼女と酌み交わしていた。
やや甘みの強い、発泡する果実酒が夕食後の口を楽しませてくれる。
この地方の特産で、林檎を発酵させて作るのだと言う。
以下略
177
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:47:24.63 ID:+j7WNh9Vo
騎士「っ……おい!」
嫌な予感は、的中した。
階段の下に伸びるように倒れていたのは、淫魔だった。
以下略
178
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◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:48:06.21 ID:+j7WNh9Vo
やがて部屋に戻り、それぞれベッドで眠りについてから数時間。
月と太陽が役割を代わろうと顔を突き合わせるあたりの時刻、騎士が眼を覚ました。
騎士「ぐ、ぅ……げほっ……!」
以下略
179
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:49:31.91 ID:+j7WNh9Vo
数日後、貸しに出されていた小さな家を借りた。
行く先々の村で仕事を引き受けて溜めた賃金、道中の賊から奪った金品を合わせれば数年は暮らしていける。
この町で、一ヶ月か、あるいは数年、しばらく養生するつもりだ。
幸いにも近くに医者も錬金術師もいるし、暮らしていく分にも養生するにも不自由は無い。
まず、暮らしていくための家具を入れた。
以下略
180
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:50:37.34 ID:+j7WNh9Vo
その家に住んでから、罰が当たりそうなほどに穏やかな時を過ごした。
淫魔はパンを焼く事を覚えて、騎士も、市場での荷運びの仕事にありつけた。
朝に出て行き夕方に帰り、共に暖かい夕餉を食し、なんでもないような会話を楽しんだ。
仲睦まじい夫婦の姿をなぞって、ありきたりな幸福を、分かち合った。
以下略
181
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:51:12.28 ID:+j7WNh9Vo
数日して、彼女はベッドから起き上がれなくなった。
上体を起こすだけが精一杯で、歩く事さえできない。
医者を呼んで診せようにも、彼女の体の異変を、相談などできようはずもない。
『魔族』であると知れれば、どんな事になるか知れないからだ。
だが実のところ、その原因は、騎士には不思議な程はっきりと分かっていた。
以下略
182
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:52:03.02 ID:+j7WNh9Vo
淫魔「……ごめんなさい。騎士さんに、こんな事……させちゃいまして」
騎士「気に病むな。この程度、何の事も無い」
病床に臥せったままの彼女へ夕食を運び、共に自身も食事を摂る。
以下略
183
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:52:38.69 ID:+j7WNh9Vo
淫魔「楽しかったですよ〜。色々連れて行ってくれましたし。騎士さん面白いじゃないですかぁ」
騎士「…………?」
淫魔「覚えてます? 初めてお船に乗った時、酔って大変でしたよね〜、騎士さんってば」
以下略
184
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:53:37.94 ID:+j7WNh9Vo
一週間後の夜、騎士は、眠っている淫魔の部屋に忍び入った。
灯りは提げていない。
部屋着の上にゆったりとしたガウンを羽織っただけの姿で、彼女へ近づく。
淫魔「……騎士さん? どうしたん……です、か?」
以下略
185
:
◆1UOAiS.xYWtC
[saga]
2013/06/01(土) 23:54:36.23 ID:+j7WNh9Vo
彼女の身体を覆い隠していた毛布を取り去る。
一枚の薄衣の中で、彼女の体からは温もりが消えかけていた。
淫魔「覚えて、ます?」
以下略
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