139: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:07:29.34 ID:zpMoHYvIo
『ずっと、言おうと思っていたことがある。三年前から、ずっとだ』
手が、足が、体が震える。これが武者震いと言うやつだろうか。そう強がっても、体の震えが止まらない。
「ふふ。はい、何ですかー?」
140: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:07:55.68 ID:zpMoHYvIo
「一緒にいてくれるだけじゃ、駄目です、Pさん」
彼女も、一歩俺の方に近づいた。お互いの息遣いを感じる。もう、彼女の顔がすぐそこにあった。
「Pさんは」
141: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:08:23.77 ID:zpMoHYvIo
『茄子さん。……いや、茄子』
俺は、初めて彼女の名前を呼び捨てにした。彼女が少しびくりと身を震わせ、そして俺を見上げてくる。そのしなやかな髪に、ゆっくりと手を置いて、俺は慈しむように撫でる。
『俺はずっと、茄子の幸せを願っていたよ。それが間違いだったことが、今分かった』
142: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:09:09.77 ID:zpMoHYvIo
「……っ、はいっ♪」
彼女は、そう言った。そして俺の腕の中で、琥珀色の瞳から涙を零し、笑顔で俺に抱き着く。そのまま、ぎゅっと力を込めて抱きしめてくる。
「ずっと、ずっとその言葉を待ってたんですよ……っ? 三年も、待ったんですから……っ」
143: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:09:41.56 ID:zpMoHYvIo
『はは、また、だな。茄子からでいいよ』
「えっ、あっ、は、はいっ」
茄子は少しはにかみ、そして涙をぐしぐしとぬぐって、笑いながら俺を見上げてくる。その瞳が俺をじっと見据え、まるで誘っているような錯覚を覚える。
144: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:10:46.62 ID:zpMoHYvIo
「だったら、その、キス、とか……、いっ、いえっ、なんでもないですよっ!」
ぷっつん。自分の中で張りつめていた何かが、切れた気がした。駄目だ、抑えられない。彼女への愛しさが、止まらない。気付けば、俺は茄子に言っていた。
『目を閉じてくれ、茄子』
145: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:12:07.14 ID:zpMoHYvIo
「……んっ」
唇に感じる、温かく柔らかい感触と、茄子の甘い声。それが、俺の脳を貫き、揺さぶる。
気が付けば、顔を真っ赤にしてはにかむ、幸せそうな彼女の顔がそこにはあった。茄子は、物欲しそうな目で俺を見る。ああ、そんな目で見ないでくれ。
146: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/07/04(木) 03:19:05.56 ID:zpMoHYvIo
本日の更新で、この作品は終了です。
茄子さんの運は、鷲頭並みの剛運なんかじゃなくて、ささやかな幸運とささやかな偶然が積み重なっているだけ。
そんな感じの話を書きたいと思ったのがきっかけでしたが、上手く表現できなかったかもしれません。
中盤から終わりにかけては、やや駆け足のご都合主義になった気もしますが、これほどの長さの物を書いたのは久しぶりですので何卒ご寛恕を。
147:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/04(木) 03:40:43.74 ID:/dr+zHhno
i.imgur.com
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鷹富士茄子(20)
148:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/04(木) 06:48:00.70 ID:we6D+PlC0
乙乙乙
149:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/07/04(木) 08:16:44.10 ID:VbLa7dSvO
乙
良かった
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