33: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/15(土) 22:18:07.80 ID:MBAzp3vzo
全然長くならなかったのでせめてこれだけ投下です……。
次はきっと長くなります、たぶん。
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/06/16(日) 02:30:31.80 ID:/SV04BwIo
乙
続きが気になるな
35: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:51:34.54 ID:gq9TOo4jo
一週間後のことだった。
『……よし』
俺は小さく呟き、そして手に持っていた携帯端末をデスクに置く。この一週間、ひたすら奔走し続けた甲斐があった。ようやくそれが成果を結んだのだ。
36: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:52:02.89 ID:gq9TOo4jo
『あー、実は重大なお知らせがあってな』
「お知らせ、ですかー? 楽しみです♪」
ふふ、と笑う彼女の表情は、本当に楽しそうで、嬉しそうだった。傍にいるだけで幸せになれる様な、そんな表情。可能なら、ずっとその顔を見て居たかった。
37: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:52:30.11 ID:gq9TOo4jo
『先方にはすでに話が伝わってる。移籍予定は来週の頭になりそうだ』
「……本当、なんですね、Pさん」
『……ああ』
38: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:52:57.18 ID:gq9TOo4jo
扉を閉める。ばたん、と錆びた鉄扉が閉じる寸前、微かにすすり泣きが聞こえた気がした。
俺はそれを聞かなかったことにして――シンデレラガールズ・プロダクションへと向かう。最後の契約を、書面でまとめるためだ。俺は大通りへと出ると、適当なタクシーを捕まえる。
『シンデレラガールズ・プロダクションへ。ええと、この大通りをずっと行って、中央環状の交差点を曲がって……、ああ、はい、それです』
39: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:53:53.88 ID:gq9TOo4jo
『……うわっ』
手鏡で確認すると、まるで亡者みたいな顔がそこにあった。これではいけない。今から契約をまとめるのに、こんな顔で行くわけにはいかない。
少し気を引き締め、そして手鏡をカバンに仕舞うと、俺は社屋の中へと入っていく。
40: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:54:22.85 ID:gq9TOo4jo
俺は、安心しきっていた。だから社長の放った、唐突な言葉の矢を、避ける事も、防ぐこともできなかった。
「やはり君は、いいプロデューサーなのだね」
頭を横合いに殴りつけられたような気分だった。一瞬言葉に詰まる。ただの社交辞令に、ここまでの反応を示すことは訝しまれる。
41: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:54:49.96 ID:gq9TOo4jo
「――手塩にかけたアイドルを売り払う、というのは、どういう気分だね」
一瞬、絶句した。何も言葉が出てこない。本日二度目の、頭を横合いに殴りつけられたような衝撃が、体中を駆け巡る。
『え、と。それは、どういう意味ですか』
42: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:55:20.82 ID:gq9TOo4jo
「Pくん。君と私は、立場こそ同じ社長だから、あまり偉そうなことを言うつもりはないが――」
サインを書き終えると、社長は厳しい顔で言う。
「今の君には、あまり魅力を感じないね。分かるかな。ティンと来ないんだよ」
43: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/06/18(火) 17:56:02.28 ID:gq9TOo4jo
『はは、これは手厳しい。確かに、私の手で連れて行ってやれれば一番だったでしょう。ただ、私は彼女の為に、移籍と言う手段で、トップアイドルへの道を切り開いて見せましたよ』
四年前と同じことを、繰り返すつもりなんて、俺は微塵もなかった。”あの時”とは違う。その為に、俺は耐えて、忍んで、抑えこんできた。激怒しながらでも、冗談が言える程度には。
だから、ぽっと出の、こんな男に俺の艱難辛苦は理解できないし、理解されたくもない。だから、俺はいつも通りの業務スマイルを浮かべて言う。
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