168: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/07(土) 00:51:53.08 ID:XIq8vfkGo
  私は多少申し訳ないと思いながらも、目を閉じ、耳をそばだてる。目を閉じたのは集中するためでもあったが、恥ずかしそうにしている千秋さんに少し配慮したからだ。 
  
  もっとも、こんなことで配慮とは言わないのかもしれないが……。 
  
  しばらくすると、すぅ、という深呼吸の音が私の耳に響く。それが、二度、三度と繰り返された。そして。 
169: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/07(土) 00:52:43.80 ID:XIq8vfkGo
 (……千秋さんは、どれほどのトレーニングを積んだのだろうか) 
  
  私が感じた”ガラス”の声は、決して悪い物ではなかった。今になってそう思う。あの声を手に入れるために、この世界では何千、何万の人々が苦心している。 
  
  彼女がトレーニングにトレーニングを重ねて手に入れた、鍛錬の証であるその声は、澄み渡った水晶と、方向性は違えど同じ尊さ、同じ美しさを身ごもった努力の結晶だ。 
170: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/07(土) 00:53:10.39 ID:XIq8vfkGo
 『……ああ』 
  
  私はゆっくりと目を開けた。そして、私は目に刻み付ける。 
  
  そこにいたのは、ただ一人の少女だ。苦しみ、励み、そして成し遂げた、どこにでもいる一人の少女なのだ。 
171: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/07(土) 00:53:56.76 ID:XIq8vfkGo
 「――、――ッ、――!」 
  
  彼女は歌う。伴奏はなくとも、曲が終わりに近づいているのはわかる。独唱でありながら、いや独唱だからこそか。彼女の歌声は聞く人の心を掴み、そして震わせる。 
  
  これが感動か。私は今、人生で初めてそれを痛感している。 
172: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/07(土) 00:55:04.29 ID:XIq8vfkGo
 「な、何かしら?」 
  
  少し怪訝な顔をしている千秋さんの一歩手前で、私は立ち止った。 
  
  本当に、たった今、思いついた。用意してきたわけでもなく、そんな考えがあったわけでもない。にもかかわらず、”気がする”とか、”かもしれない”とか、曖昧な自信ではない。 
173: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/07(土) 00:56:15.54 ID:XIq8vfkGo
 今回の更新は以上です。 
 次回は短いので、更新は早ければ明日明後日にでも行う予定です。 
 読んで下さり、ありがとうございました。 
174:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/07(土) 03:27:06.14 ID:6D9O4QLE0
 乙!楽しみ。 
175:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/07(土) 12:58:58.38 ID:KIYvNNiRo
 乙 
  
 ついにきたか……! 
 うまいこというなぁ 
176:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/07(土) 18:46:36.29 ID:P+nZE//jo
 面白い 
177:以下、新鯖からお送りいたします[sage]
2013/09/07(土) 21:58:21.22 ID:rIn++NPco
 おつ 
178: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/09/09(月) 21:32:39.53 ID:0nmeJ36Po
 「ほう、なかなか素晴らしい子を連れてきたね、Pくん?」 
  
  翌日、私はシンデレラガールズプロダクションの社屋、四階に位置する社長室へとやってきていた。 
  
  隣には、少し困惑と緊張の色を隠せない、千秋さんの姿がある。どうやら、思った以上にプロダクションの規模が大きいことに驚いているらしい。 
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