90: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:40:14.69 ID:4Y+/Hkh9o
 「君は、平凡と無能の違いを理解したほうがいい。君は君の言うとおり、きっと平凡なのだろうけどね、無能じゃない。それは忘れてはいけないよ」 
  
  私はわけがわからないまま、その言葉をとりあえず頭に刻む。昔、劇団に所属した時の名残だ。意味は分からなくとも、とにかくセリフを覚える必要があったが故の産物である。 
  
  なんにでも手を出した、中途半端がゆえの副産物が、こんなところで生きるとは思わなかったが……。 
91: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:40:48.28 ID:4Y+/Hkh9o
 (……まあ、考えるのは後。今は先に仕事をしないと) 
  
  そう、内心で呟き、私はデスクへと着く。かたかた、と二番手のプロデューサーが叩くキーボードの音が響く。 
  
  それを聞きながら、私はコーヒーをすする。熱いその黒い液体は、私の口を駆け巡り、一気に胃袋へと落ちていく。 
92: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:41:17.55 ID:4Y+/Hkh9o
 「はい、どうしました、Pさん?」 
  
 『本日の営業なのですが……』 
  
  そう切り出すと、二番手プロデューサーは少し苦笑し、 
93: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:41:43.73 ID:4Y+/Hkh9o
 「へ、お仕事、取ってこれたんですか? 凄いですね、Pさん」 
  
  彼はそういって、少しばかり嬉しそうに封筒を受け取るのだ。私は少し不思議に思い、尋ねる。 
  
 『……凄い、とはどういうことですか?』 
94: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:42:15.28 ID:4Y+/Hkh9o
  となると、三人のプロデューサーたちがこのところ忙しいのは、産休に入った彼女の仕事を一部、引き継いだからなのだろう。 
  
 「ですから、もっと自信を持っていいですよ……って、なんだかまるで、担当アイドルを励ましているようですね。いやはや、お恥ずかしい」 
  
  彼はそう言って笑った。そういえば、こうやって同僚と話したのは久しぶりかもしれない。 
95: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:42:45.99 ID:4Y+/Hkh9o
  ただ、仮にだ。もし、もしもあのプロデューサーの言うとおり、私に営業の才能があるとするのならば――。 
  
 (やってやろうじゃあ、ないか) 
  
  少し気合を入れると、パソコンの電源を立ち上げる。また、営業で使う宣材を整理し、制作する作業に没頭するためだ。 
96: ◆m03zzdT6fs[saga]
2013/08/17(土) 05:45:31.28 ID:4Y+/Hkh9o
 今回の更新は以上です。 
 遅筆をどうにかしたいものですね。 
  
 >>83 
 前作と世界観、登場人物の一部は共有していますが、読んでいなくても問題のないストーリー立てにする予定です。 
97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/17(土) 12:38:40.36 ID:ntEDcWcTo
 乙 
98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/17(土) 19:37:49.12 ID:qNHYBC8go
 乙乙 
 大人の男をちゃんと書いてるな、と思う 
 面白いよ、ゆっくりでもいいさ 
99:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/22(木) 03:12:56.04 ID:Ha95X2t8o
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 黒川千秋(20) 
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