過去ログ - 世界が終わる前に考えた、いくつかのこと
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1: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:17:54.57 ID:p/27QdiH0

「先輩。もうすぐ、世界が終わっちゃうらしいですよ」

終わっちゃうんだよな、と僕は紫煙を吐き出して言った。
僕の後輩にあたる彼女は、空を見上げながら笑っている。

「終わっちゃうんだっけ。何でだっけ。あの穴だっけ」

「え。色々あって、色々を経て世界終焉らしいですよ」

「そっか。奇跡って、こういう時に起きてほしいよな」

ニュースでは、都心部の方でパニックが起きてるらしい。
この田舎からは、各自が家族に会いに行って消えてった。
僕の両親は「日帰り旅行に行ってくる」なんて言ってた。

「僕の両親、旅行の行き先は三途の川だ。どうしよう」

「先輩も、ですよ。私とてそうですし。気にしない。
 未練を残さず死にましょうそうしましょうよ、先輩」



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2: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:19:47.82 ID:p/27QdiH0

「でも、これから何する? 今日一日で世界終了だよ」

「どうしましょ。右も左も分かりません。ええ全く。
 過去は振り返れないので、後ろも振り返れません。
以下略



3: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:21:25.65 ID:p/27QdiH0

「これから幸せになる為の方法でも探すとするかな。
 僕って、いまいち人と比べてついてないと思うから」

と、家までの道を彼女と手を繋ぎながら何気なく呟いた。
以下略



4: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:22:32.52 ID:p/27QdiH0

ところどころ、というか玄関に入ってすぐ穴が開いていた。

穴と言っても、手のひらサイズのものがぽつぽつとだ。
そして付け加えると、全く人工的なものではなかった。
以下略



5: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:23:32.15 ID:p/27QdiH0

「チャンスを探すからですよ。今やればいいんですよ。
 今の先輩ができる範囲で、少しずつ。ちょっとずつ。
 そうすれば、大きくじゃなくとも変われると思います」

以下略



6: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:24:37.94 ID:p/27QdiH0

「店員さんが居ません。焼きそばパンが買えません先輩」

「こんな事態でいらっしゃいませって言われたら驚くよ」

以下略



7: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:25:49.89 ID:p/27QdiH0

「私やりたいことをやります。食べたいものを食べます」

家に戻った時には十一時過ぎで、玄関はもう塞がっていた。
少し高いお金を出して買った靴も、全て吸い込まれている。
以下略



8: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:26:52.07 ID:p/27QdiH0

「君は会いに行きたい人って居ないの? 家族だとかさ」

「居ました。もちろん。家族にも、もう連絡しましたし」

以下略



9: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:27:57.75 ID:p/27QdiH0

「日差しも弱くなってきたみたいだし、少し外行こうか」

「はい。そろそろ、裸足で歩くのは止めることにします」

以下略



10: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:28:55.18 ID:p/27QdiH0

小さな庭で彼女と靴を履き替えながら、軽く庭を見渡した。

蝉が唯一、僕らの静かな街を賑わせてくれているようだ。
さて、行く宛なんて考えてないけれど、どこに行こうか。
以下略



11: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:29:50.50 ID:p/27QdiH0

「先輩。喉が乾きました。コーラを買って下さいコーラ」

「君さっき、思いっきりコンビニで財布出してたじゃん」

以下略



12: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:31:04.29 ID:p/27QdiH0

「大きくなると、背が伸びて目線だって高くなります。
 でも、それは少し嬉しくて、悲しいことだと思います」

「遠くが見えるようになって、世界が狭く見えるよな。
以下略



13: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:32:03.36 ID:p/27QdiH0

「僕に都合のいい人間だけを周りに集めていたんだよ。
 自分を肯定してくれる人。合わせてくれる人だとか。
 そうしないと、僕は僕に自信が持てなかったからだな」

以下略



14: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:32:55.97 ID:p/27QdiH0

「実際、何もないと思ってたけど、色々あるもんだよな」

正確に言えば、見えるという意味合いでは何も見えない。
けれどそこには、見えない僕の幼少期の思い出があった。
以下略



15: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:33:41.54 ID:p/27QdiH0

不法侵入も今さら何もないが、内心できちんと謝っていた。

彼女は百葉箱をこじ開けていた。何をしてるんだろう。
そして、僕は竹馬に乗りつつも彼女に近づいて行った。
以下略



16: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:34:14.95 ID:p/27QdiH0

僕らは「あの頃なりたかった僕ら」になれたんだろうか?

学校の先生は神様みたいで、絶対で、とにかくすごい。
誰からも好かれる先生。大人ってすごい。かっこいい。
以下略



17: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:35:55.27 ID:p/27QdiH0

「ねえ。君は。君の小さな頃の夢って、何だったのかな」

「私は、何でしたっけ。お菓子屋さん、とか書きました」

以下略



18: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:36:52.89 ID:p/27QdiH0

僕はぜえぜえと息を切らしているのに、彼女は涼しい顔だ。

もう、家の半分以上が消滅している。かなり危険だった。
止めようとしても、彼女は戻る様子もなく、後を追った。
以下略



19: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:37:52.92 ID:p/27QdiH0

「えー、では、読み上げますよ。先輩の黒歴史をどうぞ」

感情を込めて読み上げる彼女の声で、僕は少し思い出した。
前置きが長いし、読書感想文みたいだ。話が飛んでるよ僕。
以下略



20: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:38:53.96 ID:p/27QdiH0

僕って、昔から言葉にするってことが苦手だったっけな。

幸せにすることって何だよ。これじゃ、減点されちゃうよ。
ああでも、これだよ。全然定まってない、これが僕の夢だ。
以下略



21: ◆DmLHJ6FzMs[saga]
2013/08/02(金) 15:39:42.47 ID:p/27QdiH0

今からでも間に合うだろうか。僕の夢は叶うのだろうか?

もう十年近く前の僕の夢を、今十年越しに叶えるんだ。
あの時の僕と同じように、思ったことをそのままする。
以下略



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