過去ログ - 後輩「わたしは、待ってるんですからね」
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402:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:22:48.32 ID:zhZHaN9Ho

 母が出ていった後、俺は父を手ひどく責めたのだ。
 
 母が出ていったのは父のせいだと。
 覚えているかぎりの、母が父に向けていた罵詈雑言を使って。
以下略



403:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:23:29.13 ID:zhZHaN9Ho

 人は自分自身が抱える本質的な部分からは、決して逃れられないものなんです、とどこかで聞いた。

 そうだ。中学時代の担任だった男。バスケ部の顧問だった。
 部活を辞めたあとから、落伍者でも見るような目で俺を見るようになった。
以下略



404:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:24:03.97 ID:zhZHaN9Ho

 そいつはそれだけ言うと、子供を見るとき特有の微笑ましそうな顔で笑い、体育館へと向かった。
 本当に腹立たしいときというのは、怒りよりも先に呆れがくるせいで、まともに反論もできないのだと、俺はそのとき知った。

 母さんは俺を捨てたんだぞ、と俺は思った。
以下略



405:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:24:39.11 ID:zhZHaN9Ho

 母がいなくなった日、街には深い霧が立ち込めていた。
 
 夕方過ぎに妹が目を覚ましたとき、母の姿はなかった。
 痛む喉を鳴らして、妹は母のことを呼んだ。でも返事はなかった。
以下略



406:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:25:18.47 ID:zhZHaN9Ho

 
 今にして思えば、父はよく当たり前のような顔で俺と妹を育てられたものだ、と他人事のように感じる。
 
 そして俺も、よくここに居続けることができたものだ。
以下略



407:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:26:08.70 ID:zhZHaN9Ho

 そう思ったことが分かったわけでもないだろうが、じっと見られていることに気付いたのか、父は俺の顔を見た。

「どうした?」

以下略



408:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:26:47.30 ID:zhZHaN9Ho

「飲みたいのか?」

「飲んでいいの?」

以下略



409:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:27:15.11 ID:zhZHaN9Ho

「何か、言いにくいことか?」

「……いや」

以下略



410:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:27:44.43 ID:zhZHaN9Ho

「今、何に対して謝った?」

「……いや、だから、父さんに」

以下略



411:以下、新鯖からお送りいたします[saga]
2013/09/16(月) 20:28:27.84 ID:zhZHaN9Ho

 そうか、と。
 それだけだった。

 据わりの悪い、落ち着かない気持ちが、胸の底の方からずるずると這いあがってくる。
以下略



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