1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:16:59.68 ID:9gYYSLduo
 
  アルバイトを終えた夜の九時。 
  昼に降っていた雨は夕方までにやんだようで、今はいくつか水たまりを残すのみだ。 
  僕はじっとり湿ったアスファルトの上を駅に向かって歩いていた。 
  
  メインストリートを外れた脇道で、道幅は車がすれ違うのに苦労する程度。 
  街灯はそれなりにあるが陰になった場所が多く実際よりも暗い印象を受ける。 
  道沿いの飲み屋スナックの汚れた看板が陰気さに拍車をかけている。 
  
  僕の他には人はいない。なんとなく確認した後深いため息をついた。 
  肩周りが重く、気分はそれよりさらに重い。 
  沈んで行くような錯覚とどろりと鈍い意識。 
  
  この憂鬱な気分の正体は知っていた。 
  先の見えない不安といえばいいのか。 
  自分はこれからどうなるんだろうという恐れと表現したほうが近いだろうか。 
 
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:17:57.04 ID:9gYYSLduo
  
  具体的に言えば目だ。アルバイト先で僕を見る目。そして見ない目。 
  容量いっぱいまで全力で働いて、返ってくるのが「あ、そう。お疲れ」という一瞥。 
  じゃあこれやっといて、と僕を見もせず次の仕事を割り当てる。 
  
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:18:45.13 ID:9gYYSLduo
  
  と、その時頬に冷たい何かが触れた。 
  僕は反射的に空を見上げる。 
  その額にまた小さなしずくが落ちた。雨だ。 
  
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:19:33.28 ID:9gYYSLduo
  
  線の細い少女だった。 
  整った顔立ちだが目つきは冷たく、そのせいで無愛想な印象を受ける。 
  黒い長髪が薄暗がりでもかすかに艶を放っていて、その光に思わず見とれる。 
  
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:20:14.06 ID:9gYYSLduo
  
 「部屋一つ」 
  狭いフロントに立つ男に彼女は告げた。 
  鍵を受け取りすぐ脇のエレベーターに向かう。 
  中に入る彼女をぼーっと見ていると、エレベータードアを開けたままこちらをじっと見返してきた。 
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:21:05.18 ID:9gYYSLduo
  
  三階にある部屋の鍵を開けると彼女は中に入っていった。 
  ドアはあけ放したままなので、やっぱり僕にも入れということだろう。 
  恐る恐る中に入ってドアを閉めた。 
  
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/08/24(土) 19:21:36.34 ID:9gYYSLduo
  
 …… 
  
  それが彼女との出会いだった。 
  
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/24(土) 19:23:07.13 ID:9gYYSLduo
 ふとホラーやコメディ以外の吸血鬼物を書こうと思ったので立てました 
 続きます 
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2013/08/24(土) 20:22:11.22 ID:sypK38Bho
 ほう、なかなかいい雰囲気 
 期待 
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