1: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/03(月) 23:07:29.62 ID:5SO4u8Wm0
◇果てしなく見切り発車です。タイトルを思いついただけで書き始めております。
◇少なくともエタることはないと思います。
◇地の文がんがんと入れていきます。
◇前作が終わったばかり、かつ思いつきで申し訳ありませんが、お付き合いよろしくお願い致します。
前々作
男「誰よりも下手なピアニスト」
ex14.vip2ch.com
男「○○大学就職支援課」
ex14.vip2ch.com
では、相変わらずのんびりと始めてまいります。
しゃっくりが止まりませんが、書いていれば止まると信じたいです。
SSWiki : ss.vip2ch.com
2: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/03(月) 23:18:16.93 ID:5SO4u8Wm0
ラプソディーという楽曲の定義は恐ろしく適当だと僕は思う。ワルツのように三拍子である必要もなければ、ソナタのように楽章の必要もない。結局のところ必要なのは”叙情性”と”民族性。この二つだけだ、というのは決して僕の独断ではなく、世の中の一般的な解釈である。
そんな暴力的な解釈で定義されるラプソディーというジャンルは、とてつもなく便利だった。テンポも拍子も更には楽器も何一つ定めがない。世の中一般で言われるクラシック音楽の中では最も自由だと言っていいだろう。
しかし、残念ながら僕がこう主張するのは、僕自信がこの麗しき理屈を思いついたわけではなくて、あくまで僕の世界一残念な師匠の主張に僕が『確かに』と納得してしまったためなのだけれど。
3: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/03(月) 23:20:17.62 ID:5SO4u8Wm0
書いていれば止まると思っていたしゃっくりが一層激しさを増して
きやがりましたので、ちょっとすいません、中断いたします。
まあ割と短編の予定ですのでお付き合いのほどよろしくお願い致します。
4: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/04(火) 08:32:58.75 ID:6YY3INt+0
さて、朝起きたら何と無く曖昧な記憶でスレを建てたような気がしたので、履歴を辿るとやはり建てておりました。
全く構想もないまま建てましたが、朝うんうん唸っていたらいい感じの話が思いついたので、今晩から進めていこうと思います。
ただ、予定より長編かつ即興ではなく書き溜めでやっていきたいと思いますので過去作以上のまったり更新と思われます。
5: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:34:02.48 ID:bTme5qlW0
さてほとんど進んではいませんが、ちょこっと投稿したいと思います。
よろしくお願いします。
6: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:34:47.01 ID:bTme5qlW0
〜始まりのラプソディー 第一楽章 Op.1〜
ラプソディーという楽曲の定義は恐ろしく適当だと僕は思う。ワルツのように三拍子である必要もなければ、ソナタのように楽章の必要もない。結局のところ必要なのは”叙情性”と”民族性。この二つだけだ、というのは決して僕の独断ではなく、世の中の一般的な解釈である。
そんな暴力的な解釈で定義されるラプソディーというジャンルは、とてつもなく便利だった。テンポも拍子も更には楽器も何一つ定めがない。世の中一般で言われるクラシック音楽の中では最も自由だと言っていいだろう。
7: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:35:12.72 ID:bTme5qlW0
「きみはとてもピアノが上手だ。素晴らしいと思う。私よりよほど早くイスラメイを弾けるだろうし、ミスタッチも少ないだろう」
「唐突に何でしょう?」
「しかし、君の演奏は機械製だ。そこには何の想いもない」
8: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:35:58.26 ID:bTme5qlW0
そこで、私はちょっと旅に出ようと思う。うんと長い時間……そうだな、1年程」
「あてはあるんですか?」
「……君には1年間シンフォニーを任せよう。君の自由にしてくれていい」
9: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:42:09.25 ID:bTme5qlW0
>>6僕自信→僕自身
……そうして僕の世界一残念な師匠は旅立ってしまったのだった。僕に”喫茶店シンフォニー”を押し付けて……。
「はあ……」
10: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:51:10.59 ID:bTme5qlW0
しかし、自分自身で魅力と言っておきながらあくまでこの魅力は、演奏者にとってのもので、喫茶店を訪れるお客さんにとっては魅力どころか邪魔なオブジェでしか無いような気がする。それこそ、演奏する人間は師匠曰く、”機械”とのことだし。
「……思い出したら腹立ってきた」
師匠はいつもそうだ。僕にとって都合が悪いことをしたいときには、僕の欠点を指摘して強引に自分の主張を通してしまう。僕の欠点を直すために必要だとかご丁寧に言い訳まで付けて。
11: ◆ukweaVAfH6[saga]
2014/02/04(火) 21:52:24.03 ID:bTme5qlW0
さて、短くて申し訳ないですが、初回はこんな感じです。
時間が少々開くと思いますが、暇な時に見ていただけると喜びます。
では失礼します。
12: ◆ukweaVAfH6[sage]
2014/02/05(水) 08:21:11.68 ID:VKFFUCed0
おはようございます。
次回投下は週明けになる予定です。よろしくお願い致します。
13: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:27:43.42 ID:HH7rzBHw0
さて、週明けと言いましたが思いの外時間ができまして、それなりに書けましたので
投稿してまいります。よろしくお願いいたします。
14: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:28:36.71 ID:HH7rzBHw0
〜悪魔のラプソディー Op.2〜
僕が喫茶店シンフォニーを勝手に喫茶店ラプソディーへと改造してから早3日、いまだに僕はコーヒーを淹れていない。いくら素人の僕でもこの店が喫茶店として機能していないことは簡単に分かった。必須要素であるお客がいないのだから。
しかし、お客が来ないおかげで黙々とピアノの練習ができたのは、不幸中の幸いなのかもしれない。雑用を発注する師匠も居ないわけだし……。もしかしたら、師匠は『自分がいないほうが僕の練習時間が増えて、成長に繋がる!』なんて殊勝な考えに基づいて、旅に出たのかもしれない……。あの残念な師匠のことだから、万に一つもあり得ないけれど。
15: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:29:03.77 ID:HH7rzBHw0
「ふぅ……」
もはや開店後の日課となったハノンを弾きとおすと、時計の針は一回りとまではいかないものの、四分の三程度進んでいた。単調な練習曲だからつい飽きてしまいがちになるけれど、一日に一度は弾かないと腕がなまってしまうような気がしてならない。だからこそ僕は一日のルーティーンの中にこの練習曲を組み込むようにしている。
「……よし」
16: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:29:32.44 ID:HH7rzBHw0
2分を切るような短い曲だけれど、少し速いスピードで弾きこなした時の爽快感が好きで、演奏者としてはとても好きな楽曲だ。スピードを保ちながらも音の粒が潰れてしまわないように心掛ける。僕の弾いた一音一音を切り取っても、喫茶店の隅々まで響くように。
「……」
会心の出来とは言わないものの、今日の調子はそれなりのようだ。ミスタッチが無いのは当然としても、リズムのぶれも音のぶれも少なかったのではないだろうか……。
17: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:30:07.18 ID:HH7rzBHw0
「……つまんない」
声の方向に目を向けると、それこそグリム童話の主人公のような、デパートで売っている人形のような、金髪蒼眼の女の子が入口のドアに背をもたせて立っていた。
「……初対面なのに随分とご挨拶ですね」
18: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:30:38.22 ID:HH7rzBHw0
「つまんないものはつまんないんです。あなたの演奏は誰に向けているものでもない。完全に自分の満足のためのものです。そして、あなたはミスタッチがなく、楽譜のとおりに弾けるという些細なことだけで、満足してしまっています。だから、つまらない」
「……」
「少なからず図星と思う部分があるようですね。悔しそうに私を睨みつける元気があるのならば、まだ改善の余地はあるのではないかと思います。例えば、もっと感情を籠めるとか」
19: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:31:14.28 ID:HH7rzBHw0
そう言って少女が差し出す手を僕がすんなりと握ったのは、言われたことが図星だったからというわけでも、師匠が派遣した先生だからというわけでもない。僕は、どうしても抜け出したかったのだ。師匠から凡人と言われ続ける底なし沼のような状況から。そして、そのためなら藁だろうとすがる。そんな意思を持っていたからに過ぎない。決して、この少女を信頼したわけでも無ければ、仲良くなりたいと思っているわけでもない。丁重に扱っているのだって、機嫌を損ねなれて指導してもらえないといったリスクを考えているだけだ。
「とりあえず、コーヒーでも飲みましょうか」
そういって無垢に微笑む笑みは、僕に受け入れられた安堵に満ちているような気がして、心に僅かな罪悪感を覚える。しかし、そんな罪悪感で揺らぐような僕の意思ではない。仮に、この少女が指導に適さないと思えば、追い出してしまおうとさえ思っているのだから。
20: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:31:45.01 ID:HH7rzBHw0
「コーヒー、美味しいですね」
少女は口を付けてすぐに目を丸くして驚いている。僕も確かに、この喫茶店のコーヒーを初めて飲んだ時にはあまりの美味しさに驚いた。師匠曰く、『昔は世界中で演奏会を開いてたからさー、各地の農場のおっちゃんが私に惚れ込んで安く良い豆を送ってくれるんだよね』とのことだった。正直に言えば演奏旅行の最中に何しているんだこの人はと思ったけれど、あまりにも美味だったため、思わず師匠の不真面目さに感謝してしまった記憶がある。
「……んー、本当にこれならば何杯でも飲んでしまいそうです」
21: ◆ukweaVAfH6
2014/02/09(日) 12:32:12.77 ID:HH7rzBHw0
……僕はそこで唐突に魔がさしてしまった。キーシンの演奏をリクエストするぐらいなのだから、他の演奏者の演奏をかけたらすぐに違うと分かるはずだ。僕が手に取ったのは、ルガンスキーの演奏だった。どことなくキーシンに類似している部分があるような気がするし。僕はあまりピアニズムの違いというのはわからないのだけれど……。やはり、こういった部分が、機械だと言われてしまう理由なのかもしれない。
ショパンのバラードOp.47、所謂バラードの3番だ。演奏者としての観点で言えば、4つのバラードの中では最も簡単だと思うけれど、どうにも弾いた気がしない曲だ。僕に欠けているらしい、感情表現が大いに求められる曲だと言うことなのだろうか。
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